2026年10月05日

忘年会や年末の飲み会が増えてくるこの時期、「飲みすぎた翌朝、胃がムカムカして気持ちが悪い」という経験のある方は多いのではないでしょうか。たいていは時間とともに落ち着いていきますが、吐いたものに血が混じったときは話が別になります。この記事では、翌朝の胃の不快感が起こる理由と過ごし方、見過ごさずに受診を考えたいサインを整理します。
翌朝に胃がムカムカ・吐き気が出るのはなぜ
アルコールは胃の粘膜を直接刺激し、胃酸の分泌を増やします。これが吐き気や胃の不快感につながるとされています[1]。胃の粘膜が荒れた状態という点では急性胃炎に近く、急性胃炎について解説した記事でも扱っています。加えて、アルコールには抗利尿ホルモン(バソプレシン)の働きを抑える作用があり、体から水分が失われやすくなることで、のどの渇きやだるさ、頭痛も重なります[1]。症状は血中のアルコール濃度がほぼゼロに戻るころにピークを迎え、人によっては24時間以上続くこともあります[1]。
水分を少しずつ、時間が治すのを待つ
つらい症状をすぐに消す薬は今のところなく、時間が経つのを待つのが基本とされています[1]。吐き気があるうちは、水分を少しずつ口にするところから始め、食事は無理をしなくてかまいません。「迎え酒」で一時的に楽になったように感じても、結果的に不調が長引きやすいとされているため、おすすめできません[1]。
頭痛や胃の不快感を鎮痛薬で抑えたくなることもありますが、アルコールが残っている状態での使い方には注意が必要です。アセトアミノフェンをお酒と一緒に使うと肝臓への負担が大きくなることがあるとされ[1]、アスピリンやイブプロフェンはアルコールと同じく胃酸の分泌を増やし胃の粘膜を刺激しうるため、胃の不調があるときはむしろ悪化させる可能性があります[1]。もともと胃潰瘍などの既往がある方は、消化性潰瘍について解説した記事も参考にしてください。みぞおちのあたりが特に痛むときは、みぞおちの痛みを解説した記事もあわせてご覧ください。
吐いたものに血が混じったとき
吐いたものに血が混じったときは、別の対応が必要です。考えられるものの一つに、マロリー・ワイス症候群があります。繰り返す嘔吐や強いえずきで腹部に急な圧がかかり、食道と胃のつなぎ目の粘膜に縦の浅い裂け目ができる状態です[2]。昔から大量飲酒との関連が指摘されてきました[2]。透明な液や胃液・胆汁を吐いたあとに血が混じる、という経過をたどることが多いとされています[2]。
報告によっては、内視鏡的な処置をしなくても最大9割程度が自然に治まるとされています[2]。ただしこれは「様子を見てよい」という意味ではありません。実際に何が起きているかは胃カメラで食道と胃のつなぎ目を見なければ分かりません[2]。また、血を吐くことは、総務省消防庁の案内でも救急車を呼んでほしい症状に挙げられています[4]。量が少なく、今は止まっているように見えても、自己判断で様子を見ないでください。
マロリー・ワイス症候群のイメージ
※ 裂け目の大きさ・出血量などの具体的な数値は示されていません。出典:StatPearls「Mallory-Weiss Syndrome」[2]
すぐに救急車を考えたいサイン
次のサインがあれば様子を見ずに救急車を呼んでください。総務省消防庁の案内では、おなかの症状として次が挙げられています[4]。
- 血を吐く
- 便に血が混ざる、または真っ黒い便が出る
- 激しい腹痛が続く
- 冷や汗を伴うような強い吐き気がある
- 意識がおかしい、またはぐったりしている
これらに当てはまる場合は、当院への来院ではなく救急(119番)への連絡を考えてください。当院は夜間・休日の緊急内視鏡に対応できる体制ではありません。痛みの部位によって考えられる病気は異なるため、腹痛の原因を部位別に解説したガイドも参考にしてください。
お酒を飲んだ後に短時間で意識が悪くなる場合は、急性アルコール中毒の可能性もあります[3]。一度の飲酒機会で純アルコール60g以上(ビール500ml缶3本程度)を摂取する一時多量飲酒は、そのリスクを高めるとされています[3]。背中まで突き抜けるような強い上腹部痛が続く場合は急性膵炎の可能性もあり、こちらは急性膵炎についての記事で説明しています。
出典:総務省消防庁「救急車利用マニュアル」[4]、StatPearls[2]、NIAAA[1]の記述をもとに整理
毎年この時期に胃がつらい方へ
「毎年この時期になると胃の調子が悪くなる」「飲み会がなくても胃もたれや胸焼けが続いている」という方もいると思います。そうした不調を飲みすぎのせいだと決めつけると、ほかの原因を見逃すことがあります。胸焼けが続く場合は胸焼けについて解説した記事、慢性的な胃もたれの背景には萎縮性胃炎について解説した記事で触れているような状態が隠れていることもあります。実際に何が起きているかは胃カメラで直接確認するのが確実です。経口・経鼻を選べ鎮静剤にも対応しているため、検査が不安な方は内視鏡検査のご案内もご覧ください。当日の胃カメラをご希望の場合はご相談ください。
年末は忘年会が重なり検査のタイミングを逃しやすい時期でもあります。年内に済ませたい方向けに、年末までに検査を受けるタイミングについての記事も用意しています。お酒を飲むと顔が赤くなりやすい体質の方は、食道への影響という観点でも注意が必要とされており、顔が赤くなる人と食道の記事で詳しく解説しています。
よくある質問
二日酔いの日に胃薬を飲んでも大丈夫?
胃酸を抑える薬や消化を助ける薬など、市販の胃薬にはいくつか種類があり、含まれる成分や持病によって向き不向きが変わります。ただ、アスピリンやイブプロフェンなど一部の鎮痛薬は胃酸の分泌を増やし胃の粘膜を刺激しうるため、頭痛と胃のむかつきを同時に抑えようとしてこうした鎮痛薬を選ぶのは避けたほうがよいでしょう[1]。吐き気が強くつらい場合は、吐き気・嘔吐について解説した記事も参考にしてください。どの薬が自分に合うか迷う場合は、薬剤師に相談するか、持病がある方は医療機関で確認してください。
吐いたものに少し血が混じっていたけれど、今は落ち着いています。それでも受診したほうがいいの?
血を吐くことは、総務省消防庁の案内で救急車を呼んでほしい症状に挙げられています[4]。マロリー・ワイス症候群のように出血の多くが自然に治まる状態もありますが[2]、何が起きているかは胃カメラで確認しなければ判断できません。今は止まっているように見えても、自己判断で様子を見ず、救急への連絡を考えてください。
二日酔いの不調は何日続いたら受診したほうがいいの?
二日酔いの症状がどのくらいで治まるかは人によって差があり、血中のアルコール濃度がほぼゼロに戻るころに症状がピークになったあと落ち着いていくとされています。24時間以上続くこともあるとされており[1]、「何日で落ち着く」という明確な目安はありません。翌日を過ぎても良くならない場合や、同じような不調を繰り返す場合は、飲みすぎ以外の原因が隠れている可能性もあるため、相談を考えてみてください。
当院へのアクセス(横浜駅から徒歩3分)
横浜駅前ながしまクリニックは、横浜駅から300m・徒歩3分(横浜モアーズから徒歩2分)の場所にあります。診療は月曜〜土曜で、日曜・祝日は休診です。横浜駅からの道順はアクセスページで写真つきでご案内しています。胃カメラのご予約・ご相談は胃カメラ検査のページからどうぞ。
参考文献
- National Institute on Alcohol Abuse and Alcoholism (NIAAA). Hangovers. Updated: December 2025. https://www.niaaa.nih.gov/publications/brochures-and-fact-sheets/hangovers(確認日:2026年10月5日)
- Kassama Z, Goosenberg E. Mallory-Weiss Syndrome. StatPearls [Internet]. Last Update: December 13, 2025. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK538190/(確認日:2026年10月5日)
- 厚生労働省. 健康に配慮した飲酒に関するガイドライン(令和6年2月). https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_38541.html(確認日:2026年10月5日)
- 総務省消防庁. 救急車利用マニュアル. https://www.fdma.go.jp/publication/portal/items/portal002_japanese2511.pdf(確認日:2026年10月5日)
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監修
横浜駅前ながしまクリニック 院長 長島周平(内科・消化器内科/日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医、日本消化器病学会認定 消化器病専門医、日本肝臓学会認定 肝臓専門医、日本内科学会 認定医)
