2026年10月21日

胃カメラの結果に「食道乳頭腫(にゅうとうしゅ)」とあり、白いイボと聞いて不安になった方は多いと思います。多くは症状がなく、別の目的の胃カメラで偶然見つかります[1]。ただ、良性だから放置でよい、とも言い切れません。取る・様子を見るの考え方を整理します。
食道乳頭腫とは、どんな状態か
食道の粘膜にできる、小さなイボ状の隆起です。通常は2〜6mmほどで、単発、白からピンクがかった色をしています[1]。食道の中ほどから下の部分に多く見つかります[1]。
頻度は研究によって幅があります。オーストラリアの病院では、胃カメラ6,962件のうち16人(0.23%)で、全員が単発、平均3.8mmでした[2]。米国の2施設では66人(0.72%)で、92.5%が単発、大きさは0.2〜2.3cmでした[3]。日本人のデータは今回の調べでは確認できていません。
食道の白っぽいイボ状の所見、3つの比較
| 所見 | どんな状態か | 確定の方法・対応 |
|---|---|---|
| 食道乳頭腫 | 2〜6mmほどの単発の白〜ピンクのイボ状。中部〜下部に多い[1] | 組織検査で確定。大きさ・異形成の有無・多発かどうかで、切除か経過観察かを相談[1] |
| グリコーゲンアカントーシス | 食道の上皮が厚くなる良性の変化。504人中143人(28.3%)で見つかり、加齢と関連[4] | 良性の変化。見た目だけでは区別しにくいことがあり、必要に応じて組織検査[1] |
| 食道カンジダ | カビの一種による感染。原因が乳頭腫とは別 | 詳しくは食道カンジダの記事 |
出典:Mercurio M, et al. 2025 [1]/Nazligül Y, et al. 2012 [4]。頻度は研究により異なり、研究どうしの数字は直接比較できません。
食道の白いイボは、全部乳頭腫?
そうとは限りません。似て見える別の状態がいくつかあります。
ひとつは、グリコーゲンアカントーシスです。食道の上皮が厚くなる良性の変化で、トルコの調査では504人中143人(28.3%)に見つかり、加齢との関連が示されています[4]。もうひとつは食道カンジダで、カビの一種による感染のため、原因も対応も乳頭腫とは別です。
グリコーゲンアカントーシスでは、食道裂孔ヘルニアとの関連が報告されています[4]。逆流性食道炎・食道裂孔ヘルニアの記事もご覧ください。
見た目だけでは区別がつかないことがあり、確定には組織検査が必要です[1]。詳しくは生検の記事と画像の見方ガイドへ。
乳頭腫は、がんになるのか
はっきりしていない、というのが正直なところです。乳頭腫にはHPV(ヒトパピローマウイルス)が関わるとする報告があります[1]。ただ、先ほどの2つの研究では、HPVを調べた人は全員陰性でした(3人[2]、62人[3])。HPVが原因と決めきれない状況です。
悪性化については、米国の研究で、経過をみた18人のうち1人が食道扁平上皮がんになりました[3]。著者の結論は「悪性化の可能性は低いが、無視はできない」です[3]。総説でも、リスクは無視できないが、データは限られるとされています[1]。人数が少なく、言い切れません。
食道がん(扁平上皮がん)の主な要因は、喫煙と飲酒です。両方ある人は、より危険性が高くなります[5]。予防の基本は禁煙と節酒です。お酒で顔が赤くなる方はこちらの記事も参考になります。
取る? 様子を見る?
方針は、大きさ、形、組織の結果、患者さんの状態を合わせて決めます[1]。5mm以下であれば生検鉗子で取り切ることが多く、5mmを超えるものはスネアという輪状の器具や、内視鏡的粘膜切除術(EMR)を使います[1]。
取ったあとの経過観察は、状況で分かれます。小さく、異形成(がんの前段階とされる細胞の変化)のない単発の病変は、定期的な追加検査が不要なこともあります[1]。一方、多発している場合や、高リスクのHPVが陽性の場合は、慎重に経過をみます[1]。
当院では、必要に応じて組織検査を行い、結果に応じて今後の方針を相談します。
「食道乳頭腫」と言われたあとの流れ
多くは症状がなく、偶然の発見[1]
乳頭腫か、似た別の所見か。異形成があるかも調べる[1]
切除したうえで、追加検査が不要なこともある[1]
慎重に経過をみる[1]
どちらになるかは、大きさ・数・組織の結果をみて、医師と相談して決めます。
受診の目安
乳頭腫は小さいため、症状を起こしにくいとされます[1]。出るとしても、胸やけやみぞおちの不快感、飲み込みにくさなど、はっきりしないものです[1]。次の場合は相談してください。
□ 胸やけやみぞおちの不快感が続いている
□ 体重が減ってきた
□ 喫煙・飲酒の習慣があり、胃カメラを長く受けていない
□ 「食道乳頭腫」と言われ、次にどうすればよいか分からない
眠った状態での検査は鎮静剤の内視鏡の記事、次回の時期は内視鏡検査の間隔の記事が参考になります。痛みが中心の症状は、腹痛の原因を部位別に解説したガイドもあります。
10〜12月は胃カメラ・大腸カメラの予約が混みやすく、12月分は11月に埋まり始めます。年末年始の休診は12月29日から1月3日です。年内希望の方は早めにご相談を。
よくある質問
食道乳頭腫って、がんになるの?
はっきりしていません。リスクは「低いが無視はできない」とされ、データも限られます[1][3]。組織検査で異形成の有無を調べ、結果に応じて方針を相談します。
食道にある白いイボは、全部乳頭腫と考えていい?
いいえ。グリコーゲンアカントーシスや食道カンジダなど、似て見える所見があります[4]。見た目だけでは区別できないことがあり、確定には組織検査が必要です[1]。
取ったあとは、また胃カメラを受けないといけない?
状況によります。小さく異形成のない単発なら不要なこともあり、多発や高リスクHPV陽性では慎重に経過をみます[1]。間隔は医師と相談します。
当院へのアクセス(横浜駅から徒歩3分)
横浜駅前ながしまクリニックは、横浜駅から300m・徒歩3分(横浜モアーズから徒歩2分)の場所にあります。診療は月曜〜土曜で、日曜・祝日は休診です。横浜駅からの道順はアクセスページで写真つきでご案内しています。胃カメラのご予約・ご相談は胃カメラ検査のページからどうぞ。
参考文献
- Mercurio M, de Sire R, Campagnoli P, et al. Esophageal Squamous Papilloma and Papillomatosis: Current Evidence of HPV Involvement and Malignant Potential. Cancers (Basel). 2025;17(14):2404. PMID: 40723286. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12293905/
- Jideh B, Weltman M, Wu Y, Chan CHY. Esophageal squamous papilloma lacks clear clinicopathological associations. World J Clin Cases. 2017;5(4):134-139. PMID: 28470005. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5395981/
- Ahmad AI, Lee A, Nithagon P, et al. Esophageal squamous papilloma: Literature review and case-control retrospective study with histopathological exam of human papillomavirus. JGH Open. 2023;7(10):674-681. PMID: 37908288. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10615170/
- Nazligül Y, Aslan M, Esen R, et al. Benign glycogenic acanthosis lesions of the esophagus. Turk J Gastroenterol. 2012;23(3):199-202. PMID: 22798107. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22798107/
- 国立がん研究センター がん情報サービス「食道がん 予防・検診」. https://ganjoho.jp/public/cancer/esophagus/prevention_screening.html
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監修
横浜駅前ながしまクリニック 院長 長島周平(内科・消化器内科/日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医、日本消化器病学会認定 消化器病専門医、日本肝臓学会認定 肝臓専門医、日本内科学会 認定医)
