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胃潰瘍・十二指腸潰瘍(消化性潰瘍)とは?症状の違いと、胃カメラで確かめたいサイン

2026年08月16日

胃潰瘍・十二指腸潰瘍(消化性潰瘍)とは?症状の違いと、胃カメラで確かめたいサイン

「みぞおちがキリキリ痛む」「空腹時に胃が痛くなる」――そんなとき市販の胃薬でしのいでいる方は少なくありません。しかしその痛みの正体が胃潰瘍や十二指腸潰瘍(あわせて消化性潰瘍)であった場合、放置すると出血や穿孔(せんこう:胃や腸に穴があくこと)につながることがあります。この記事では、両者の違い・原因・見逃せないサイン・胃カメラが必要な理由を整理します。

胃にやさしい食事と胃のイメージイラスト(消化性潰瘍)

胃潰瘍と十二指腸潰瘍はどう違う?

消化性潰瘍とは、胃酸や消化酵素によって胃・十二指腸の粘膜が深く傷ついた状態です。表面が軽くただれる「びらん」より深く、粘膜の下の層まで欠損が及びます。できる場所によって、痛み方の傾向が少し異なります。

胃潰瘍

  • できる場所:胃の粘膜
  • 痛みの傾向:食後に強まりやすい
  • 年代:中高年以降に多い傾向
  • 注意点:胃がんと見た目が似ることがある

十二指腸潰瘍

  • できる場所:胃の出口の先(十二指腸)
  • 痛みの傾向:空腹時・夜間に強まりやすい
  • 年代:比較的若い世代にもみられる
  • 注意点:食べると一時的にやわらぐことがある

ただしこれはあくまで典型例で、実際には痛みの出方は個人差が大きく、症状だけで胃潰瘍か十二指腸潰瘍かを見分けることはできません。高齢の方や痛み止めを飲んでいる方では、痛みをほとんど自覚しないまま出血して初めて気づくこともあります。

主な原因はピロリ菌と痛み止め(NSAIDs)

消化性潰瘍の二大原因は、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染と、解熱鎮痛薬(NSAIDs)の使用です。コクラン・レビューでは、十二指腸潰瘍の約95%、胃潰瘍の約70%がピロリ菌感染と関連していると記載されています。ピロリ菌は胃の粘膜に長くすみつき、慢性的な炎症を起こして粘膜の防御力を落とします。

一方、頭痛・腰痛・関節痛などで使う解熱鎮痛薬(ロキソプロフェンなどのNSAIDs)や、少量のアスピリンも、胃粘膜を守るしくみを弱めて潰瘍の原因になります。夏場は熱中症予防や体調不良で鎮痛薬を手に取る機会も増えますが、空腹時の常用や、複数の市販薬の重ね飲みには注意が必要です。喫煙や過度の飲酒、強いストレスも、潰瘍の治りを妨げる要因として知られています。

季節と胃潰瘍——「寒暖差」よりも先に確かめたいこと

朝晩の気温差が出てくると、「寒暖差で胃が痛くなる」と外来で聞かれることが増える季節です。実際に検索してみると、同じように寒暖差を疑う人が多いことがうかがえます。ただ正直にお伝えすると、気温差そのものが潰瘍を作るという直接の証拠は、今回確認できていません。

一方で、消化性潰瘍の発生に季節差があること自体は、海外のデータで報告されています。韓国の全国データベースを使った研究では、2012〜2016年に消化性潰瘍と診断された成人14,626人と、潰瘍からの出血があった3,575人について発生時期を比較したところ、発生率が最も高かったのは冬で、次いで春・夏、最も低かったのは秋でした(P<0.001)。潰瘍出血についても、5年のうち4年で冬にピークが来ていました。台湾の全国データを使った別の研究(2001〜2019年の入院13,022人)でも傾向は同じで、季節ごとの割合は冬26.8%、春25.1%、秋24.2%、夏23.9%。年齢や性別で区切っても、この順番はほぼ変わらなかったとされています。

26.8%

25.1%

24.2%

23.9%

出典:Lai YC, et al. BMJ Open Gastroenterol. 2024;11(1):e001522(台湾、2001〜2019年、入院13,022人の季節別割合)。韓国のデータ(Yoon JY, et al. Medicine. 2021;100(21):e25820)でも同様に冬が最多・秋が最少の傾向。いずれも海外データで、日本国内の季節変動データは今回未確認です。

いずれも韓国・台湾のデータであって、日本国内で同じ季節変動があるかどうかを示すデータは、今回確認できていません。また、これらの研究が示しているのは「冬に多い」という事実であって、気温そのものが潰瘍の原因になっていると証明したものではない点も補っておきます。

では、なぜ冬に多いのか。ここははっきりしていません。台湾の研究では季節ごとに解熱鎮痛薬(NSAIDs)の使用状況も比べられていますが、それで季節差が説明できたとはされていません。ただ、季節差の理由になるかどうかとは別に、秋から冬にかけて実際に気をつけていただきたいのはこの解熱鎮痛薬です。かぜやインフルエンザ、頭痛や関節痛で市販の解熱鎮痛薬を飲む機会は、この時期に自然と増えます。NSAIDsは消化性潰瘍の主な原因のひとつで、少量のアスピリンも同じ仲間に入ります。心筋梗塞や脳卒中の再発予防で長期に飲んでいる方のうち、以前に消化性潰瘍になったことがある方は、再発のリスクが高いとされています。ただしNSAIDsを続ける必要がある場合の対応は、胃酸を抑える薬(PPIなど)を併用するかどうかを医師と相談しながら決める話であって、自己判断で市販の胃薬を足すという話ではありません。

もうひとつ見落としやすいのが、市販のかぜ薬にも解熱鎮痛薬の成分が含まれていることがある点です。かぜ薬と痛み止めを別々に買って一緒に飲むと、気づかないうちに同じ系統の成分を重ねて摂ることになりかねません。面倒でも、複数の市販薬を併用するときはパッケージの成分表示を一度確認しておくと安心です。

寒さが本格化する前のこの時期は、季節のせいにしてしまう前に、一度胃カメラで状態を確かめておく目安にもなります。

「様子を見てはいけない」サイン

潰瘍そのものより怖いのは合併症です。次のような症状があるときは、胃薬で様子を見ずに受診してください。

⚠️ 早めの受診をおすすめするサイン
  • 黒いタール状の便が出た
  • 血を吐いた、コーヒーかすのような嘔吐物が出た
  • 突然の激しい腹痛でお腹が板のように硬い
  • ふらつき・息切れ・顔色不良(貧血が疑われる)
  • 食べられない、体重が減ってきた
  • みぞおちの痛みが2週間以上続く/繰り返す

黒色便(タール便)は、胃や十二指腸からの出血が消化されて黒くなったものです。貧血によるふらつき・息切れ・顔色不良が先に出ることもあります。逆に、鮮やかな赤い血が便に混じる場合は大腸側からの出血の可能性が高く、確認には大腸カメラが必要になります。詳しくは血便の原因は!?部位別チェックガイドもご覧ください。

診断は胃カメラ──胃がんとの見分けにも必要

消化性潰瘍の診断は、胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)で粘膜を直接観察して行います。胃カメラが欠かせない理由は二つあります。

一つは、潰瘍の場所・深さ・出血しそうな血管の有無を確認し、必要なら検査中にそのまま止血処置ができること。もう一つは、胃がんとの見分けです。胃がんは進行すると潰瘍のような形をとることがあり、見た目だけでは良性の潰瘍と区別がつかない場合があります。国立がん研究センターの解説でも、胃がんの確定診断には内視鏡で組織の一部を採取する生検が用いられると説明されています。胃潰瘍と言われた場合に生検や再検査をすすめられるのは、この見分けのためです。

同時にピロリ菌の有無も調べます。ピロリ菌検査が保険で行えるのは、胃カメラで胃炎や潰瘍が確認された場合などに限られる点も知っておくとよいでしょう。

当院では経鼻・経口いずれの胃カメラにも対応し、ご希望に応じて鎮静剤を使い、うとうとした状態で受けていただくことも可能です。強い胃痛や黒色便など緊急性が高い場合の当日検査についてもご相談いただけます。詳しくは横浜の胃カメラ(経鼻・鎮静剤対応)、下部の検査は横浜の大腸カメラをご覧ください。

治療と再発予防:除菌でどう変わるか

治療の基本は、胃酸を強く抑える薬(PPIやP-CAB)で潰瘍を治すことです。そのうえでピロリ菌がいれば除菌治療を行い、NSAIDsが原因なら中止・減量や胃を守る薬の併用を検討します。

再発予防で大きいのが除菌です。同レビューでは、無治療と比べ除菌治療を行った場合、十二指腸潰瘍の再発は64.4%から12.9%へ、胃潰瘍の再発は52.4%から16.3%へ低下したと報告されています。

64.4%
十二指腸潰瘍の再発
(除菌なし)

12.9%
十二指腸潰瘍の再発
(除菌あり)

52.4%
胃潰瘍の再発
(除菌なし)

16.3%
胃潰瘍の再発
(除菌あり)

出典:Ford AC, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2016;4:CD003840(PMID: 27092708)。無治療との比較。

ただしこのレビューでは、これらの結果のエビデンスの確実性は高くない(very low quality)とも評価されており、数値は目安として受け取ってください。除菌後も胃がんのリスクがゼロになるわけではないため、定期的な胃カメラでの経過確認がすすめられます。

受診の目安と、日常でできること

みぞおちの痛みや胃もたれが2週間以上続く、市販薬を飲んでも繰り返す、痛み止めを常用している、これまでピロリ菌を調べたことがない――こうした場合は一度検査を検討してください。日常面では、禁煙、飲酒量を控えること、鎮痛薬を空腹時に飲まないこと、規則的な食事が、粘膜の負担を減らす助けになります。

痛みの部位から原因を整理したい方は腹痛の原因は!?部位別チェックガイドもあわせてご覧ください。横浜駅前ながしまクリニックは横浜駅から徒歩圏内にあり、お仕事帰りにもご相談いただけます。

よくある質問

寒暖差が原因で胃潰瘍になるのですか?

寒暖差そのものが潰瘍を起こすという直接の証拠は、今回確認できていません。海外のデータでは、消化性潰瘍が冬に多く秋に少ないという季節差が報告されていますが、これは発生率の違いを示しているだけで、気温との因果関係を証明したものではありません。なぜ冬に多いのかは、まだはっきりわかっていません。ただ、秋から冬はかぜや発熱で解熱鎮痛薬を飲む機会が増える時期でもあるため、痛み止めの使い方は季節にかかわらず気にしておいていただきたいところです。

かぜ薬を飲むとき、市販の胃薬も一緒に飲めばよいですか?

自己判断で胃薬を足すことはおすすめしていません。かぜ薬の中にも解熱鎮痛薬の成分が含まれていることがあり、まずは服用中の薬の成分表示を確認することが先です。以前に胃潰瘍になったことがある方や、飲み合わせが心配な場合は、自己対応せず医師や薬剤師にご相談ください。


監修

横浜駅前ながしまクリニック 院長 長島周平(内科認定医、日本消化器病学会認定 消化器病専門医、日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医、日本肝臓学会認定 肝臓専門医)

参考文献

  1. Ford AC, Gurusamy KS, Delaney B, Forman D, Moayyedi P. Eradication therapy for peptic ulcer disease in Helicobacter pylori-positive people. Cochrane Database Syst Rev. 2016;4:CD003840. PMID: 27092708
  2. Lanas A, Chan FKL. Peptic ulcer disease. Lancet. 2017;390(10094):613-624. PMID: 28242110
  3. 日本消化器病学会「消化性潰瘍ガイド2023(患者さんとご家族のためのガイド)」
  4. 国立がん研究センター がん情報サービス「胃がん」
  5. Yoon JY, Cha JM, Kim HI, Kwak MS. Seasonal variation of peptic ulcer disease, peptic ulcer bleeding, and acute pancreatitis: A nationwide population-based study using a common data model. Medicine (Baltimore). 2021;100(21):e25820. PMID: 34032695
  6. Lai YC, et al. Seasonal variations in peptic ulcer disease incidence in Taiwan, a country spanning both tropical and subtropical regions: a real-world database analysis. BMJ Open Gastroenterol. 2024;11(1):e001522. PMID: 39581693

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