2026年09月24日
健診の便潜血検査やバリウム検査で「要精密検査」と言われ、胃カメラや大腸カメラを勧められることがあります。糖尿病の薬を飲みながら通院している場合、検査前に何を主治医に確認すればいいのかがはっきりしないまま、予約をためらってしまうこともあるでしょう。「今の薬のまま受けていいのか」「絶食する日は薬をどうするのか」。この記事では、糖尿病の薬を服用中の方が胃カメラ・大腸カメラを受ける前に何を確認し、誰に何を伝えておく必要があるのかを整理します。
血液をサラサラにする薬だけでなく、糖尿病の薬も申し出が要ります
胃カメラ・大腸カメラの前に薬の確認が必要になる代表例が、血液をサラサラにする薬(抗血栓薬)です。日本消化器内視鏡学会の市民向けQ&Aでは、観察だけの検査であれば休薬は基本的に必要ないとされ、休薬が要るかどうかは内視鏡医と処方医が連携して個別に判断するとされています(詳しくは抗血栓薬と内視鏡検査)。糖尿病の薬は、これとは別の理由で確認が要ります。出血ではなく「検査前に食事がとれない時間ができる」ことや、種類によっては低血糖・脱水に注意が必要になることに関わっているためで、血液サラサラの薬を飲んでいない方でも、糖尿病の薬を服用中であれば予約の際にお伝えください。
検査の前は「食事が摂れない日」になります
胃カメラも大腸カメラも検査前は食事に制限があり、日本消化器内視鏡学会の胃内視鏡検査Q&Aには次のように説明されています。
「病変を見つけやすく診断をより正確に行うために、検査の前夜や当日の朝から絶食をしてもらいます。通常は前日の夕食後から検査終了まで絶食します。ただし喉が渇いた場合、水は検査の1時間前まで適宜摂取してもらっても結構です」
食事がとれない、あるいは食事量が減る状態は、糖尿病の診療でいう「シックデイ」に近い状況です。糖尿病標準診療マニュアル2026は、シックデイを「治療中に発熱,嘔吐などで食欲が低下したり摂食量が減少したりする場合のこと」と定義しています。薬をふだん通り使ってよいかが問題になるため、検査を予定する段階での主治医への相談が必要です。
薬の種類で、気をつける中身が変わります
糖尿病の薬は種類によって、検査前に気をつける中身が違います。代表的な分類ごとの注意点を表にまとめました。
| 薬の種類 | 気をつけること | 検査前にどうするか |
|---|---|---|
| インスリン・SU薬 | 低血糖 | 主治医に確認 |
| SGLT2阻害薬 | ケトアシドーシス(シックデイは休薬) | 主治医に確認 |
| メトホルミン | 脱水 | 主治医に確認 |
| その他の経口薬 | 種類によって注意点が異なる | 主治医に確認 |
インスリンやSU薬は低血糖との関わりが強い薬です。糖尿病標準診療マニュアル2026は「単独で重症低血糖(第三者の助けが必要な低血糖)の原因となりうるのは特にSU薬とインスリンである」とし、インスリンは「自己判断でインスリン注射を中止せず」主治医の指導のもとで対応することを示しています。検査前の使い方も自己判断で決めず主治医に確認してください。
SGLT2阻害薬について、日本糖尿病学会のRecommendationは「発熱・下痢・嘔吐などがあるときないしは食思不振で食事が十分摂れないような場合(シックデイ)には必ず休薬する」としています。同じ文書には手術予定時は術前3日前から休薬するという記載もありますが、これは手術(周術期)についての基準であり、胃カメラ・大腸カメラの基準ではありません。検査前の対応は主治医が個別に判断します。
メトホルミンは脱水との関わりが指摘されている薬です。同学会のRecommendationには「利尿作用を有する薬剤(利尿剤、SGLT2阻害薬等)との併用時には、特に脱水に対する注意が必要である」とあり、シックデイの際は「いったん服薬を中止し、主治医に相談する」ことが示されています。大腸カメラの前処置のように短時間に何度も排便する場面は、脱水が懸念される状況になり得ます。服用中の方はこの点も主治医に伝え、判断をもらう対象になります。
これら以外の飲み薬も、種類によって検査前の対応は変わります。お薬手帳を主治医と当院の両方に見せて確認してもらうのが確実です。
大腸カメラは、下剤で何度も排便する検査です
大腸カメラの前処置は、当院では下剤を基本的にご自宅で内服していただき、腸がきれいになったことを確認してから来院、午後から検査という流れです(水曜・金曜は院内での内服にも対応)。下剤の種類は複数あり、体調に合わせて選べます。詳しい飲み方は下剤の飲み方をご覧ください。下剤を飲み始めると頻繁にトイレに行く必要があり、その間は自宅で安静に過ごすことになります。短時間に何度も排便するこの処置は前のセクションの脱水の注意ともつながるため、糖尿病の薬を服用中の方は前処置の進め方も主治医・当院の両方にご相談ください。
検査の直前に打つ薬にも、糖尿病の確認があります
胃カメラでは検査の直前に鎮痙剤(消化管の動きを抑える薬)を注射することがあり、日本消化器内視鏡学会のQ&Aには次のように説明されています。
「ブスコパンやグルカゴンといった鎮痙剤(消化管の動きを抑える薬)を検査前に注射します。心疾患や緑内障、糖尿病などがあるひとは副作用が出るおそれがありますので、問診で確認をします」
糖尿病があること自体が検査を妨げるわけではありませんが、この注射を使うかどうかは問診での確認事項です。予約時や来院時に糖尿病で通院中であることを伝えておくと確認がスムーズです。
ご予約のときに伝えていただきたいこと
ご予約の際にお伝えいただきたいことをまとめました。
ご予約時に伝えていただきたい5項目
- お薬手帳
- 主治医の医療機関名
- インスリン・SU薬・SGLT2阻害薬を使っているかどうか
- 低血糖を起こしたことがあるかどうか
- 鎮静剤を希望するかどうか
この5つをお伝えいただくと、主治医への確認や当日の準備がスムーズになります。鎮静剤を使用した場合、効果が消えるまで当日の車・バイク・自転車の運転はできません。詳しくは鎮静剤での内視鏡もご覧ください。
年内に検査を終えたい方は、早めに相談を始めてください
糖尿病で通院中の方は、検査の予約とは別に主治医の外来で薬の相談をする1ステップが余分に挟まります。年末年始は主治医の外来も休診になることが多いため、年内に検査を終えたい方は逆算して早めに相談を始めてください。
予約から検査当日までの流れ
年末までのスケジュールの立て方は年内に検査を終えるための逆算スケジュールで詳しく説明しています。
当院の場合
当院で鎮静剤を使用した方は当日の車・バイク・自転車の運転はできず、検査後はリカバリールームで30分から1時間ほど休んでからお帰りいただきます。診療は月曜から土曜で、日曜・祝日はお休みです。
糖尿病の薬について検査前にどのような対応が必要かは、お薬の種類や主治医の判断によって一人ひとり異なります。当院からの具体的なご案内は、ご予約時にお申し出いただいたうえでお伝えしています。
よくあるご質問
糖尿病の治療中でも胃カメラ・大腸カメラは受けられますか?
治療中であることを理由に検査自体を受けられないわけではありません。服用中のお薬によって検査前の対応が変わるため、主治医へご相談のうえ、ご予約の際に当院へもお申し出ください。
インスリンやSU薬は、検査前に自分の判断で減らしてもいいの?
自己判断で中止・変更せず、主治医に確認してください。糖尿病標準診療マニュアルでも、インスリンについて自己判断で注射を中止しないことが示されています。
SGLT2阻害薬は検査前に休薬が必要って本当?
学会のRecommendationが術前3日前からの休薬を示しているのは手術を受ける場合で、胃カメラ・大腸カメラの基準ではありません。ただし同じ文書は、食事が十分に摂れない状態(シックデイ)では休薬すると示しています。検査前に食事の制限がある以上、休薬が要るかどうかは主治医の個別の判断になりますので、自己判断では決めないでください。
大腸カメラの下剤を飲むとき、糖尿病の薬はどうすればいい?
下剤の前処置は短時間に何度も排便するため脱水に注意が必要な状況になり得ます。メトホルミンなど脱水と関わりが指摘されている薬を服用中の方は、進め方を主治医・当院にご相談ください。
関連するご案内
- 胃カメラ検査
- 大腸カメラ検査
- 抗血栓薬と内視鏡検査
- 下剤の飲み方
- 年内に検査を終えるための逆算スケジュール
- 鎮静剤での内視鏡
- 糖尿病の初期症状
- 便潜血陽性と言われたら
- バリウムで要精密検査と言われたら
当院へのアクセス(横浜駅から徒歩3分)
横浜駅前ながしまクリニックは、横浜駅から300m・徒歩3分(横浜モアーズから徒歩2分)の場所にあります。診療は月曜〜土曜で、日曜・祝日は休診です。横浜駅からの道順はアクセスページで写真つきでご案内しています。胃カメラ・大腸カメラのご予約・ご相談は胃カメラ検査・大腸カメラ検査のページからどうぞ。
参考文献
- 日本糖尿病学会「糖尿病治療におけるSGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」(2022年7月26日改訂) https://fa.kyorin.co.jp/jds/uploads/recommendation_SGLT2.pdf(2026年9月23日確認)
- 日本糖尿病学会「メトホルミンの適正使用に関するRecommendation」(2020年3月18日改訂) https://fa.kyorin.co.jp/jds/uploads/recommendation_metformin.pdf(2026年9月23日確認)
- 日本糖尿病・生活習慣病ヒューマンデータ学会「糖尿病標準診療マニュアル2026(一般診療所・クリニック向け)」 https://human-data.or.jp/wp-content/uploads/2026/03/dm_manual_2026.pdf(2026年9月23日確認)
- 日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡Q&A「胃内視鏡検査の前にはどんな準備が必要ですか?」 https://www.jges.net/citizen/faq/esophagus-stomach_01(2026年9月23日確認)
- 日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡Q&A「血液をサラサラにする薬(抗血栓薬)を飲んでいるのですが、内視鏡検査は受けられますか?」 https://www.jges.net/citizen/faq/general_09(2026年9月23日確認)
監修
横浜駅前ながしまクリニック 院長 長島周平(内科・消化器内科/日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医、日本消化器病学会認定 消化器病専門医、日本肝臓学会認定 肝臓専門医、日本内科学会 認定医)
