2026年01月14日
痔がある方でも、大腸カメラを受けることはできます。むしろ、排便時の出血を「痔だけ」と決めつけると、大腸ポリープや大腸がん、炎症性腸疾患など別の原因を見落とすことがあります。痔核出血に大腸カメラは必要か、という問いへの答えは、出血があるなら大腸側の確認を検討する、です。
痔核からの出血でも大腸カメラが必要な理由
排便後にトイレットペーパーへ鮮やかな赤い血が付くと、「いぼ痔かな」と考える方は多いです。痔核は肛門の病気としてよくみられ、出血の原因にもなります。ただ、同じような鮮血でも、直腸の病変や大腸ポリープ、大腸がんから出ている場合があります。
大腸カメラの役割は、痔があるかどうかだけを見ることではありません。肛門から直腸、盲腸までを観察し、痔以外の出血源がないかを確認することです。痔がある方ほど「原因はもう分かっている」と思いやすいのですが、痔と大腸の病気が同時にあることもあります。
便秘薬や下剤を使っている方で、硬い便のあとに出血する場合も同じです。便秘薬の飲み方については、下剤はいつ飲む?――内服開始の目安とメリット・デメリットで整理していますが、血が出ているときは便秘薬の調整だけで終わらせないことが大切です。
痔核の出血と大腸がんの出血:違いと共通点
痔核の出血は、鮮やかな赤い血が紙に付く、便器へぽたぽた落ちる、排便時に出る、という形で気づかれることがあります。一方、大腸がんや大腸ポリープでも、肛門に近い直腸に病変があると鮮やかな赤い血として見えることがあります。
便に血が混じる、粘液が混じる、便が細くなる、便秘と下痢を繰り返す、貧血を指摘された、体重が減っている。このような変化があれば、痔だけでは説明しにくい場合があります。ただ、症状が軽いから大腸の病気ではない、とも言い切れません。
| 見た目・症状 | 痔核でみられること | 大腸側の病気でも起こること |
|---|---|---|
| 鮮やかな赤い血 | 起こりやすい | 直腸の病変では起こる |
| 痛みがない出血 | 内痔核で起こる | ポリープや早期の病変でも起こる |
| 便に血が混じる | 判断しにくい | 大腸側の出血で起こる |
| 便潜血陽性 | 原因になり得る | 大腸ポリープ・がんでも陽性になる |
つまり、痔核の出血と大腸の出血は、見た目だけでは重なります。私たちが確認したいのは、痔があるかどうかだけでなく、痔以外の病変を同時に持っていないかです。
便潜血検査が陽性に:痔があっても精密検査が欠かせない
便潜血検査は、便に混じった目に見えない血液を調べる検査です。痔がある方では、痔からの出血で陽性になることがあります。だからといって、「痔のせい」と判断して精密検査を受けないのは危うい考え方です。
国立がん研究センターの大腸がん検診の説明では、便潜血検査で陽性となった場合には精密検査として全大腸内視鏡検査を行う流れが示されています[1]。痔がある場合でも、便潜血陽性の原因が痔なのか、大腸ポリープや大腸がんなのかは検査しないと分かりません。
痔核と便潜血検査の関係を調べた研究では、痔核が偽陽性と関連すると報告されています[2]。一方で、これは「痔があれば大腸カメラが不要」という意味ではありません。陽性の背景を確認するには、大腸の中を見る必要があります。
痔核があっても大腸カメラを受けるべき科学的根拠
痔核がある方で大腸カメラを検討する理由は、症状が似ているからだけではありません。痔核と便潜血検査の偽陽性、痔核と大腸腺腫の関連、少量の直腸出血で大腸病変が見つかる報告など、複数の視点があります[2][3][4]。
ただし、研究の数値をそのまま一人ひとりに当てはめることはできません。年齢、家族歴、便潜血の結果、出血の続き方、貧血の有無、過去の大腸カメラ歴で判断は変わります。大切なのは、痔があることを理由に大腸側の確認を省かないことです。
痔があっても大腸検査はできますか?
できます。痔があること自体は、大腸カメラを受けられない理由には通常なりません。いぼ痔、大腸カメラ、内痔核、大腸内視鏡検査といった語で検索される方の多くは、検査で悪化しないか、痛くないか、断られないかを心配しています。
検査では肛門から内視鏡を挿入します。肛門の腫れや痛みが強い場合は、診察で状態を確認し、検査のタイミングや方法を相談します。出血が多い、強い痛みで挿入が難しい、急性の炎症が強い、といった場合は、先に処置や症状の評価を行うことがあります。
当院では、大腸カメラ中に大腸内視鏡用の半ズボンタイプの検査着を着用します。下半身が露出しない形で検査を行うため、恥ずかしさが心配な方も事前にご相談ください。
検査で痔が悪くならないか心配な場合
痔がある方の不安は、「検査を受けてよいか」だけではありません。挿入で出血が増えないか、検査後に痛みが続かないか、肛門を見られることがつらくないか、という心配もあります。検査前の診察では、出血の量、痛み、脱出の有無、普段使っている薬を確認します。
内痔核があるだけなら検査可能なことが多い一方、強い痛みを伴う血栓性外痔核、肛門周囲の炎症、裂肛の痛みが強い状態では、先に症状を落ち着かせる判断になることもあります。検査を急ぐべき血便か、痔の痛みへの対応を先にするかは、診察で分けます。
恥ずかしさが理由で先延ばしにしている方へ
大腸カメラでは、専用の検査着を着用して行います。当院では半ズボンタイプの検査着を使うため、下半身が露出する形にはなりません。痔や血便の相談は言いにくい内容ですが、診察では出血の色、量、続いた期間を確認するだけでも判断材料になります。
「痔だと思うので大げさかもしれない」と遠慮される方もいます。けれど、痔か大腸の病気かを分けるために相談するのであって、最初から原因を当てて来院する必要はありません。
内痔核・いぼ痔は大腸カメラでわかる?
大腸カメラでは、挿入時や抜去時に肛門付近を通るため、内痔核が所見として確認されることがあります。ただし、大腸カメラは大腸粘膜を観察する検査です。外痔核、裂肛、肛門周囲の皮膚の状態などを詳しく見るには、視診・触診・肛門鏡など別の診察が必要になることがあります。
「大腸カメラで痔はわかりますか」という質問への答えは、一部はわかるが、痔の評価だけで終わる検査ではない、です。大腸カメラの価値は、痔があるかどうかに加えて、奥の大腸や直腸に出血源がないかを同時に確認できる点にあります。
痔持ちで検便が陽性だった場合の考え方
検便で陽性と言われたとき、「自分は痔持ちだから」と考えるのは自然です。ただ、その説明だけで終わらせると、大腸ポリープや大腸がんからの出血を見逃す可能性があります。国立がん研究センターの大腸がん検診の流れでも、便潜血陽性後の精密検査は大腸内視鏡検査が基本です[1]。
便潜血検査は、症状がない方を対象に大腸がんの可能性を拾い上げる検査です。陽性になった後に同じ便潜血検査をもう一度行い、陰性だったから終わり、という考え方は精密検査の代わりになりません。痔核がある方でも、大腸側を確認する流れで考えます。
痔がある方では、便潜血陽性の説明がつきやすいように見えます。ただ、説明がつきそうに見えることと、原因が確定したことは別です。痔核が便潜血の偽陽性に関係するという報告がある一方で、痔核だけが原因と決めるには大腸側の確認が必要です[2]。
大腸内視鏡検査で痔はどう扱われる?
大腸内視鏡検査では、腸内をきれいにするための前処置を行い、肛門から内視鏡を挿入します。痔がある場合でも、検査の主目的は大腸粘膜の観察です。直腸、S状結腸、下行結腸、横行結腸、上行結腸、盲腸までを確認し、出血の原因になり得る病変を探します。
検査中に内痔核が見えることはありますが、痔の治療をその場で行う検査ではありません。出血源が痔と考えられる場合でも、大腸内にポリープや炎症、がんがないかを確認できる点が大きな意味を持ちます。
検査前の下剤が不安な方は、大腸カメラ前の下剤の種類と前処置も参考になります。便秘が強い方、過去に下剤で吐き気が出た方は、予約時や診察時に伝えてください。
大腸カメラ前に伝えてほしいこと
痔がある方は、検査前にいくつか伝えておくと検査計画が立てやすくなります。出血がいつからあるか、血の色、量、痛み、便秘や下痢の有無、便潜血検査の結果、過去の大腸カメラ歴です。痔の薬を使っている場合は、軟膏、坐薬、内服薬の名前も分かる範囲で伝えてください。
- 出血が紙に付く程度か、便器が赤くなる量か
- 痛みを伴うか、痛みがない出血か
- 便秘・下痢・便が細いなどの変化があるか
- 抗凝固薬・抗血小板薬を服用しているか
- 過去に大腸ポリープを切除したことがあるか
この情報があると、急いで検査を組むべきか、まず肛門症状の評価を行うか、ポリープ切除の可能性まで含めて準備するかを考えやすくなります。
出血量が少ない、痛みがない場合も確認が必要?
少量の鮮血が紙に付く程度でも、初めての出血や繰り返す出血では相談の対象になります。内痔核は痛みがないまま出血することがありますが、大腸ポリープや早期の大腸がんも痛みが目立たないことがあります。
出血量が少ないこと、鮮やかな赤色であること、痛みがないこと。この3つだけで大腸側の病気を否定することはできません。特に40歳以上、便潜血陽性、家族に大腸がんの方がいる、貧血を指摘された、便通が変わった、という場合は大腸カメラを検討します。
少量の直腸出血を対象にした研究では、痔のように見える軽い出血でも、大腸ポリープや大腸がんなど臨床的に意味のある病変が見つかることがあると報告されています[4]。この数値をそのまま全員に当てはめることはできませんが、少量なら調べなくてよい、とは言えません。
痔と大腸がんを自分で見分けられますか?
自分で見分けることは難しいです。痔核では鮮やかな赤い血が出やすい一方、直腸の病変でも同じような出血になります。痛みがあれば切れ痔、痛みがなければ大腸がんではない、という分け方もできません。内痔核は痛みが少ないことがあり、大腸ポリープや早期の病変も痛みが目立たないことがあります。
見分ける手がかりとして、便に血が混じる、便が細い、残便感が続く、体重減少、貧血、腹痛、下痢を伴うかを確認します。ただし、これらがないから大丈夫という意味ではありません。診察と必要な検査で原因を確かめます。
どのタイミングで受診する?急ぐサインと通常外来
便器が赤くなる量の出血、血の塊、めまい、冷汗、動悸、息切れ、強い腹痛、発熱を伴う場合は、通常外来まで待たず早めの評価が必要です。出血が続く場合や全身症状がある場合は、緊急対応が可能な医療機関も選択肢になります。
少量の鮮血が紙に付く程度で、全身状態が落ち着いている場合でも、初めての血便や繰り返す血便は通常外来で相談してください。出血が止まったことは、原因が消えたことと同じではありません。
抗凝固薬・抗血小板薬を飲んでいる方、透析中の方、貧血を指摘されている方、高齢の方では、少量に見えても早めに相談します。血液をさらさらにする薬は、自己判断で中止せず処方医に相談してください。
検査前に痔の薬や血液をさらさらにする薬はどうする?
痔の軟膏や坐薬を使っている場合は、予約時や診察時に薬名を伝えてください。検査当日の使い方は、症状や検査予定に合わせて個別に確認します。自己判断で中止するより、何をいつ使ったかを伝えるほうが診療に役立ちます。
抗凝固薬・抗血小板薬など血液をさらさらにする薬を服用している方は、特に重要です。検査だけでなく、ポリープ切除を行うかどうか、出血リスクをどう考えるかに関わります。自己判断で中止せず処方医に相談してください。お薬手帳を持参すると確認がスムーズです。
大腸カメラでポリープが見つかった場合
大腸カメラでポリープが見つかった場合、適応があればその場で日帰り切除に対応します。ポリープの大きさ、形、数、悪性が疑われる所見の有無によって、切除方法や紹介の要否は変わります。詳しい流れは、日帰り大腸ポリープ切除のページで説明しています。
切除後は、食事・飲酒・運動・入浴に一定期間の注意が必要になります。切除後の過ごし方は、大腸ポリープ切除後の過ごし方も参考にしてください。
痔がある方の検査でも、ポリープが見つかることはあります。出血の主な原因が痔だったとしても、大腸ポリープが別に存在する可能性はあります。検査前に「ポリープが見つかったら切除を希望するか」「血液をさらさらにする薬を飲んでいるか」を確認しておくと、当日の判断がしやすくなります。
当院での大腸カメラの流れ
当院では、大腸カメラの前処置下剤をご自宅で内服していただく方法を基本としています。院内で下剤を飲む方法は水曜・金曜に対応しています。検査時は、ご希望に応じて鎮静剤を使用した検査に対応します。鎮静剤を使用した日は、自動車、バイク、自転車の運転はできません。
検査中にポリープを発見した場合、適応があればその場で日帰り切除を行います。サイズが大きい、数が多い、悪性が疑われる場合などは、入院での切除を案内することがあります。検査結果は画像をお見せしながら院長が説明し、病理検査が必要な場合は後日対面で説明します。
血便や痔核出血で検査を検討している方は、大腸カメラ検査の診療ページもご確認ください。
よくある誤解:痔があると検査できない?
痔があると大腸カメラができない、という誤解があります。実際には、痔がある方ほど大腸側の確認が必要になる場面があります。痔が検査の妨げになるかどうかは、痔の種類、痛みの強さ、出血量、肛門周囲の炎症で変わります。
内痔核があるだけなら検査可能なことが多いです。外痔核が腫れて強く痛む場合や、裂肛で挿入時の痛みが強いと予想される場合は、検査時期を相談します。検査を避けるために自己判断するのではなく、診察で状態を見て決めることが大切です。
痔の治療を先にするか、大腸カメラを先にするか
順番は症状で変わります。出血量が多い、便潜血陽性、貧血、便通の変化、体重減少がある場合は、大腸側の確認を急ぐことがあります。一方、肛門の痛みが強く、検査そのものが難しい状態では、痔や裂肛の症状を先に評価することもあります。
「痔の治療が終わってから大腸カメラ」と決めてしまうと、大腸側の確認が遅れることがあります。反対に、強い肛門痛を無視して検査予定だけを組むと、当日の負担が大きくなります。どちらを先にするかは、出血の性質と全身状態で判断します。
大腸がん検診と症状がある血便は分けて考える
大腸がん検診の便潜血検査は、症状がない方を対象に大腸がんの可能性を拾い上げる仕組みです。一方、目で見える血便や下血がある場合は、すでに症状があります。症状がある場合は、検診の結果を待つのではなく、診察で原因を確認する流れになります。
痔がある方で「検診なら便潜血でよいのでは」と考えることがあります。便潜血検査は大切な検査ですが、陽性なら精密検査が必要です。陰性でも、目で見える血便が続いている場合は、症状の評価として大腸カメラを検討します。
検査後に「痔がある」と言われたとき
大腸カメラで痔があると言われることがあります。その場合でも、検査で大腸の奥まで確認できているか、ポリープや炎症がなかったか、組織検査を行ったかを一緒に確認します。痔があるという所見と、大腸に他の病変がないという所見は別の情報です。
検査後に出血が続く場合は、痔からの出血なのか、ポリープ切除後の出血なのか、別の原因なのかを再度確認することがあります。特にポリープを切除した後は、数日後に出血することもあるため、便器が赤くなる量の出血や血の塊がある場合は連絡してください。
家族歴や過去のポリープ歴がある場合
家族に大腸がんの方がいる、過去に大腸ポリープを切除したことがある、以前の検査で腺腫と言われたことがある場合は、痔の有無とは別に大腸カメラの必要性を考えます。痔が出血の原因に見えても、背景にあるリスクを無視できません。
以前ポリープを切除した方は、次回検査の間隔を医師から説明されていることがあります。出血が出た場合は、その予定より前でも相談してください。切除後の生活制限については、大腸ポリープ切除後の過ごし方にまとめています。
まとめ:出血量にかかわらず専門医に相談を
痔核出血に大腸カメラが必要かどうかは、「痔があるか」だけでは決まりません。出血の原因が痔だけなのか、大腸や直腸の病変が関係していないかを確認することが目的です。
痔があっても大腸検査はできます。便潜血陽性、繰り返す出血、便通の変化、貧血、体重減少がある場合は、大腸カメラで確認する流れを考えます。検査そのものについては、大腸カメラ検査の診療ページをご覧ください。
よくある質問
痔と診断済みでも大腸カメラを勧められるのはなぜですか?
痔核から出血していても、大腸ポリープや大腸がんなど別の病変が同時にある可能性を否定できないためです。大腸カメラでは直腸から盲腸までを確認できます。
いぼ痔でも大腸検査は受けられますか?
受けられることが多いです。痛みや腫れが強い場合は、先に診察で状態を確認し、検査時期や方法を相談します。
大腸カメラで内痔核はわかりますか?
内痔核が所見として確認されることはあります。ただし、痔の詳しい評価には肛門の診察が必要になる場合があります。
出血が少量で鮮やかな赤色なら痔だけと考えてよいですか?
鮮やかな赤い血は痔核でみられやすい出血ですが、直腸の病変でも同じように見えることがあります。少量でも繰り返す場合は消化器内科で相談してください。
便潜血検査が陽性で痔もあります。再検査だけでよいですか?
便潜血陽性では、痔があっても精密検査として大腸カメラを検討します。再度の便潜血検査は、大腸内視鏡検査の代わりにはなりません。
大腸カメラのあとに痔の出血が増えることはありますか?
検査後に少量の出血がみられることはあります。出血量が多い、止まりにくい、腹痛やめまいを伴う場合は、検査を受けた医療機関へ連絡してください。
当院の関連診療ページ
関連ブログ
参考文献・サイト
- 国立がん研究センター がん情報サービス 大腸がん検診について https://ganjoho.jp/public/pre_scr/screening/colon.html
- Are Hemorrhoids Associated with False-Positive Fecal Immunochemical Test Results? https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5122631/
- Hemorrhoids as a risk factor of colorectal adenomas on colonoscopy. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10191731/
- Colonoscopic evaluation of minimal rectal bleeding in average-risk patients for colorectal cancer. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2773342/
- 日本消化器内視鏡学会 大腸内視鏡検査と治療 https://www.jges.net/citizen/check-cure/no3-2
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監修:院長 長島周平(消化器内科)
更新日:2026年10月5日
