2025年05月23日
潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん)は、大腸の内側の粘膜に炎症が続き、下痢や血便、腹痛などが現れる病気です。症状が続くときの受診先は、消化器内科が基本になります。少量の血が付く程度で始まる方もいて、痛みの強さだけでは判断できません。
治療では腸の炎症を抑え、症状が落ち着いた状態を長く保つことを目指します。すでに診断されている方も、新しく血便が出た方も、今の症状と普段からの変化が受診を考える手がかりです。
| 気になる状態・疑問 | 考え方 | 受診・対応の目安 |
|---|---|---|
| 下痢や血便が続く。何科に行くか | 潰瘍性大腸炎のほか、感染性腸炎や痔などとの区別が必要 | 消化器内科へ。血便を繰り返す場合は早めに受診 |
| 少量の血、粘液、残便感がある | 直腸だけに炎症がある型では、下痢が目立たない場合もある | 痔と決めず、続く場合は診察を受ける |
| 診断されたばかりで治療が不安 | 炎症の範囲と強さを確認し、内服薬や局所の薬などを選ぶ | 薬の目的と次の評価時期を主治医と確認 |
| 生理前後にお腹の調子が変わる | 月経に伴う変化と、腸の炎症の悪化を区別する | 月経日と症状を記録。血便や発熱は月経のせいにしない |
| 大量の血便、強い腹痛、ふらつきがある | 出血や脱水、重い腸炎などの可能性 | 救急受診。意識がぼんやりする、立てない場合は救急車を要請 |

潰瘍性大腸炎の定義と基礎知識
潰瘍性大腸炎は、炎症性腸疾患(IBD)の一つです。大腸の粘膜がただれる「びらん」や、粘膜が傷ついて欠ける「潰瘍」が生じます。同じ炎症性腸疾患にはクローン病もありますが、病変のできる場所や広がり方が異なります。[1][2]
若い世代にも発症する病気で、小児から高齢の方まで見られます。年齢だけで候補から外れるわけではありません。症状の強い活動期と、落ち着いた寛解期を行き来するなど、経過は人によって違います。
直腸から連続して広がるが、大腸全体とは限らない
典型的には、肛門に近い直腸から口側に向かって、炎症が連続して広がります。直腸に限られる直腸炎型、大腸の左側までの左側大腸炎型、より広い範囲の全大腸炎型が代表的な分類です。[1]
ただし、炎症の範囲と重症度は別の評価です。範囲が狭くても血便や切迫した便意で生活に困る方がおり、広い範囲に病変があっても治療で症状が落ち着いている方もいます。病名や型だけで、今のつらさや必要な薬を決めることはできません。

大腸の位置と粘膜の変化を示す模式図です。粘膜の炎症で出血や粘液を伴いやすくなりますが、実際の炎症の範囲は患者さんごとに異なります。
寛解とは、症状と炎症が落ち着いた状態
寛解(かんかい)は、病気の活動性が抑えられた状態を指します。下痢や血便が落ち着くことに加え、検査で腸の炎症がどこまで改善したかも治療の評価に含まれます。症状が消えただけでは、粘膜にも炎症が残っていないとは言い切れません。[4]
一度落ち着いた炎症が再び強くなることを再燃と呼びます。症状のない期間も、再燃を減らすための治療や通院が必要です。
潰瘍性大腸炎の主な症状と初期症状
主な症状は、下痢、血便、粘液の混じる便、腹痛です。便意を感じると我慢しにくい、排便後も便が残った感じがする、といった変化もあります。すべての症状が一度にそろうわけではありません。[3]
少量の血や残便感だけで始まる場合もある
初期には、便の表面に血が付く、トイレットペーパーに赤い血が付く、粘液だけが出る、といった変化から気付く方もいます。直腸炎型では便の形が保たれている場合があり、下痢がないから否定できる病気ではありません。[2]
痔でも赤い血は出ます。色や量だけで出血の場所を見分けるのは難しく、痔と腸の病気が重なる場合もあります。少量でも繰り返す出血や、粘液・便通の変化を伴う出血は、消化器内科で確認する対象です。
肛門の腫れや出血が気になる場合には、いぼ痔の症状と治療についての記事も参考になります。ただ、便に血が混じる原因を自分で痔と決める材料にはなりません。
腹痛はどこが、どんなふうに痛むのか
差し込むような腹痛や、持続する腹痛を伴う方がいます。腹痛だけでなく、下痢や血便、便意を我慢しにくい感じ、残便感などを合わせて確認します。すべての症状がそろうわけではなく、痛みだけで判断することはできません。[1][3]
左下腹部が痛むだけでは、潰瘍性大腸炎とは判断できません。便秘、感染性腸炎、虚血性腸炎などにも似た症状があり、婦人科や泌尿器の病気が関係する場合もあります。急に強くなった痛みや、いつもと違う痛みは、普段の病気の症状として片付けないでください。
発熱・体重減少・貧血は全身の状態を見るサイン
炎症が強い場合には、発熱、食欲低下、体重減少、だるさなどを伴います。出血による鉄不足や炎症に関連する貧血があると、息切れや動悸、めまいにつながる場合もあります。[1][2]
日中の便の回数だけでなく、夜に便意で目が覚めるか、食事や水分を取れるか、通勤や家事ができるかも診察で役立つ情報です。便の回数が極端に多くなくても、脱水や貧血を伴えば治療を急ぐ必要があります。
潰瘍性大腸炎は何科に相談する?受診の目安
下痢や血便が続くときは、消化器内科が相談先になります。近くに消化器内科がなければ、まず内科で相談する方法もあります。診断済みの方は、これまでの経過や薬を把握している主治医への連絡が基本です。
大腸炎という言葉は、原因の異なる腸の炎症を広く含みます。感染によるもの、血流の低下によるもの、薬に関連するものなどで治療が変わるため、最初から潰瘍性大腸炎に絞らず症状を伝えることが診断につながります。[2]
| 区分 | 目安となる状態 | 行動 |
|---|---|---|
| 早めに受診 | 血便を繰り返す、出血が増えた、発熱や強い腹痛、頻回の下痢、水分を取れない、尿が減った | 当日を目安に医療機関へ相談。大量出血や動けないほどの痛みは救急受診 |
| 近いうちに相談 | 血便や強い痛みはないが、軟便・残便感が続く、夜間の便意や体重減少がある、仕事や外出に支障がある | 症状が軽くても消化器内科の受診予定を立てる |
| 様子を見てよい目安 | 一時的な軟便で、血便・発熱・強い痛みがなく、水分や食事を取れ、普段の状態に戻っている | 短期間の経過観察。長引く、繰り返す、新しい症状が出る場合は受診に切り替える |
様子を見てよい目安は、潰瘍性大腸炎を否定する基準ではありません。診断済みの方は、症状が落ち着いていても予定された受診や治療の継続が必要です。主治医から悪化時の連絡基準を伝えられている場合は、それを優先してください。
救急車を呼ぶのはどんなときか
大量の血便に加えて意識がぼんやりする、失神した、立てないほどふらつく、冷汗が出る場合は、119番で救急車を要請してください。強い腹痛とお腹の張りが急に悪化し、動けない場合も救急対応が必要です。
潰瘍性大腸炎が重くなると、大量出血や腸管穿孔などの合併症が問題になります。病名を確認してから救急受診する必要はありません。薬の一覧や診断名が分かるものは役立ちますが、準備のために救急要請を遅らせないでください。[1][5]
潰瘍性大腸炎の原因と、似た病気との違い
原因はまだ一つに特定されていません。遺伝的な体質、腸内細菌、免疫反応、環境などが関わり、腸の炎症が続くと考えられています。単純な細菌感染とも、特定の食べ物だけが原因の病気とも異なります。[1][2]
免疫の反応が腸で続くという病態
免疫は本来、体を感染などから守る働きです。潰瘍性大腸炎では、その反応を調整する仕組みが乱れ、腸の粘膜で過剰な炎症が続くと考えられています。粘膜が傷つくことで、出血や粘液便、便通の変化につながります。
特定のウイルスや細菌がうつって発症する感染症ではなく、通常の生活で家族に潰瘍性大腸炎がうつるわけではありません。一方、診断済みの方にも感染性腸炎は起こり得るため、急な下痢を毎回再燃と決めることもできません。
ストレスや食生活だけを原因にしない
ストレスで腹痛や便通が変わる方はいます。ただ、ストレスを取り除くだけで粘膜の炎症まで抑えられるとは限りません。発症したことを、本人の性格や生活習慣のせいにする根拠もありません。
ご家族に患者さんがいる場合でも、同じ病気になると決まっているわけではありません。複数の要因が関わる病気であり、家族歴がない方にも発症します。診察では家族の病歴も参考にしますが、それだけで診断するものではありません。[1]
クローン病・過敏性腸症候群との違い
クローン病は、口から肛門までの消化管に病変が生じ得る炎症性腸疾患です。小腸の病変や、離れた場所に点在する炎症などが手がかりになります。大腸中心のクローン病もあるため、症状だけでの区別は困難です。[2]
過敏性腸症候群では、潰瘍性大腸炎のような粘膜の炎症や潰瘍では説明されない腹痛・便通異常が続きます。血便、発熱、体重減少がある場合は、過敏性腸症候群と決める前に、別の病気を確認する必要があります。
診断方法:大腸カメラ・血液検査・便検査
診断では、症状の経過と検査結果を合わせて判断します。血液検査だけ、便の写真だけで病名が決まるわけではありません。感染性腸炎などを区別したうえで、大腸の炎症の形や範囲、組織の変化を確認します。[1][2]
大腸カメラで粘膜を見て、必要に応じて生検を行う
大腸カメラは、肛門から内視鏡を入れて粘膜を観察する検査です。赤み、ただれ、出血のしやすさ、潰瘍の形などを見ます。組織の一部を採る生検では、顕微鏡で炎症の特徴や別の病気を調べます。
強い炎症が疑われるときは、通常の健診と同じ手順で大腸全体を見るとは限りません。医師が体調とリスクを評価し、観察範囲や前処置の方法、検査場所を選びます。血便がある状態で、市販の下剤を使って自分で検査準備を始めないでください。[2]

潰瘍性大腸炎の内視鏡像の一例です。実際の診断では一枚の画像だけでなく、ほかの部位の所見、組織検査、症状の経過を合わせて判断します。
検査を受ける際の流れは、大腸カメラの診療ページに掲載しています。検査への不安や、以前に下剤で困った経験も、受診時に伝えると準備を考える材料になります。
血液検査と便検査で分かること
血液検査では、貧血、炎症の指標であるCRP、脱水に伴う変化などを確認します。便検査は、感染の原因や腸の炎症を調べるためのものです。血液中の炎症反応が低くても、症状や内視鏡所見を合わせて判断する必要があります。[2][4]
便中カルプロテクチンは、腸の炎症の程度を推測する指標の一つです。診断後の経過を見る際にも使われますが、数値だけで薬の変更や中止を決めるものではありません。症状と検査値が合わない場合は、内視鏡での再評価も検討されます。[4]
初診で伝えるとよい情報
いつから下痢や出血があるか、便の回数、夜間の便意、発熱、体重の変化をメモすると、経過を伝えやすくなります。飲み始めた薬、抗菌薬の使用、旅行、家族や周囲の人の下痢も診断の参考です。以前の検査結果やお薬手帳があれば、その内容も判断に役立ちます。
潰瘍性大腸炎の疑いと説明された段階では、生検の結果待ちや、感染などとの区別が必要な場合もあります。診断が確定したか、何を確認するための次の検査かが分かると、その後の通院を考えやすくなります。
潰瘍性大腸炎の治療方法と初期治療
初期治療は、炎症を抑えて寛解へ導くための治療です。その後、寛解を維持する治療へつなぎます。初めての診断でも重症なら入院が必要で、全員が同じ薬から始めるわけではありません。[5]
軽症から中等症では5-ASA製剤が基本の選択肢
5-ASA製剤は、大腸の粘膜の炎症を抑える薬です。メサラジンなどの一般名があり、内服薬のほか、肛門から使う坐剤や注腸剤があります。炎症の範囲に合わせて剤形を選び、組み合わせる場合もあります。[1][2]
直腸に炎症が限られるときは、患部に薬を届ける局所治療が役立ちます。坐剤や注腸剤は、内服薬より軽い治療という意味ではありません。薬が届く場所と、続けやすさを考えて選ぶ方法です。
薬が効き始めるまでの時間は、薬の種類や炎症の強さによって異なります。次の評価日より前でも、血便や下痢の増加、発熱、飲食できない状態があれば処方医に連絡してください。決められた薬を飲み切るまで我慢する必要はありません。
ステロイドは炎症を抑えるために使い、長期維持とは分ける
5-ASA製剤で十分に改善しない場合や炎症が強い場合には、ステロイドを用いることがあります。内服、局所投与、点滴などを病状に応じて選びます。全身に作用するステロイドは、長く飲み続けて寛解を維持するための薬ではありません。[1][5]
使用中は感染症、血糖の上昇、骨への影響などに注意が必要で、リスクは投与量や期間などで変わります。医師は効果と副作用を見ながら減量を計画します。症状が軽くなっても、自己判断で急に中止しないでください。
免疫調整薬・生物学的製剤・低分子薬など
再燃を繰り返す、ステロイドを減らすと悪化する、十分な効果が得られない、といった場合には別の治療を検討します。免疫調整薬、生物学的製剤、炎症に関わる働きを抑える低分子薬などが選択肢です。[1]
生物学的製剤には、炎症を伝える物質や、免疫細胞が腸へ移動する仕組みを標的にする薬があります。低分子薬の例はJAK阻害薬やS1P受容体調節薬などです。注射薬か内服薬かだけでなく、過去の治療、持病、感染症などのリスクを踏まえて選びます。
免疫に働きかける薬では、使用前の感染症の確認や、使用中の採血などが必要になる場合があります。効き目が強そうという印象だけで選べる薬ではありません。副作用の確認と通院を含めて、続けられる治療かを主治医と考えます。
入院や手術が必要になる場合
強い炎症、脱水、貧血などで全身状態が悪い場合は、入院して治療を行います。内科治療で抑えられない病状、大量出血、腸管穿孔、がんなどでは、外科手術を検討する必要があります。[1][5]
手術を考えることは、治療の失敗を意味するものではありません。病気や合併症から体を守るための選択肢です。切除する範囲、便をためる袋を作る方法、人工肛門の必要性などは、病状や体の状態に応じて専門の医療機関で検討されます。
生理前後に悪化したと感じるとき
生理前後は、腹痛や便通、体調が変わる方がいます。ただし、お腹の症状が強まったことと、潰瘍性大腸炎の炎症が再燃したことは同じではありません。月経周期と腸の病気の両方から考える必要があります。
月経に伴う症状と再燃は分けて評価する
炎症性腸疾患の女性を対象にした前向き研究では、月経中の腹痛や全身状態の変化が見られた一方、血便や夜間の下痢などの病気に特有の症状には、周期による明確な差が認められませんでした。主に寛解期・軽症の患者さんを調べた研究で、すべての方に当てはまる結果ではありません。[6]
月経が始まった日、便の回数、血の混じり方、夜間の便意、痛み、発熱を同じメモに記録すると、診察で判断しやすくなります。毎回同じ時期に軽い腹痛が出るのか、月経が終わっても下痢や出血が続くのかは区別したい点です。
血便が増えた、発熱がある、夜間も下痢で起きる、水分を取れないときは、生理が終わるのを待たず主治医に連絡してください。経血か便からの出血か分からない場合も、分からないまま伝えて構いません。
生理痛の薬は、使用中の治療と合わせて確認する
生理痛に使う解熱鎮痛薬のうち、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、腸症状の悪化との関連が指摘されている一方、研究結果が一致していない部分もあります。すべての方で悪化するとは限りませんが、自己判断で連用するのは避けたい薬です。[2]
使用前に、潰瘍性大腸炎で治療中であることと飲んでいる薬を、主治医や薬剤師に伝えて相談してください。生理痛が強い、不正出血があるなどの場合は婦人科での評価も必要です。消化器の症状と月経の症状をそれぞれ伝えると、診療科が変わっても経過が分かりやすくなります。
潰瘍性大腸炎と生活の工夫
生活の工夫は、薬による炎症の治療を支えるものです。食べられるものや活動できる範囲は、活動期と寛解期で変わります。体調が落ち着いている方に、一律に厳しい食事制限を続ける必要はありません。[7][10]
下痢や腹痛が強い時期の食事と水分
食べるとつらい時期は、一度の量を減らす、柔らかく加熱するなど、口にしやすい形を選びます。脂肪分の多い料理や刺激の強いもの、アルコールで症状が増える方は、体調が落ち着くまで量を控える方法があります。生野菜なども、症状に合わせて調理法や量を調整する考え方です。
下痢が続くときは、少量ずつの水分補給が基本です。脱水が疑われる際には経口補水液が選択肢になりますが、飲めない、尿が少ない、ふらつく状態は自宅の対処だけでは不十分です。強い症状を食事だけで抑えようとせず、早めに医療機関へ相談してください。
寛解期は食べられるものまで減らしすぎない
症状が落ち着いている時期は、主食、たんぱく源、野菜などを組み合わせ、偏りを小さくすることが基本です。食物繊維や乳製品を全員が避ける必要はありません。特定の食品で症状が出る方は、食べた量や調理法も含めて振り返ると調整しやすくなります。
食事制限で体重が減る、食べられる食品が少なくなる場合は、栄養不足にも注意が必要です。貧血がある方は鉄の不足などを確認し、必要な補充を医師が判断します。特定の食事やサプリだけで再燃を防げるという十分な根拠はありません。[7]
食事の選び方は、潰瘍性大腸炎の活動期・寛解期の食事にも掲載しています。
仕事・運動・睡眠を病状に合わせる
寛解を保ちながら仕事や学業を続けている方もいます。外出先のトイレ、通院のための時間、体調が悪いときの休憩など、困る場面を具体的にしておくと周囲へ相談しやすくなります。診断されたという理由だけで、仕事を辞める必要がある病気ではありません。[10]
症状が落ち着いていれば、体力に合った運動や普段の生活を続けられます。睡眠不足や疲れが重なる時期は、予定を詰め込みすぎない工夫も必要です。休養でつらさが軽くなっても、出血や炎症の治療が済んだとは限りません。
潰瘍性大腸炎の経過と主な合併症
再燃する時期や薬への反応は人によって異なります。便の回数や出血などの変化に気付けるよう、寛解期の自分の状態を把握しておくと役立ちます。
大腸がんの確認は、症状がなくても必要になる
大腸の炎症が長く続く方では、大腸がんのリスクを考えた内視鏡検査が必要です。炎症の範囲や持続期間、家族歴、合併する病気などによって、検査の開始時期や間隔を決めます。血便がないことだけで、がんを否定できるわけではありません。[2]
日本消化器病学会のガイドラインでは、左側大腸炎型・全大腸炎型は罹患から8年を目安に、大腸がんの早期発見を目的とした定期的な内視鏡検査が推奨されています。[2] これは、その年数になるまで検査が不要という意味ではありません。症状の評価や治療効果の確認には、それ以前から内視鏡を行います。
新しい血便、便通の変化、体重減少があるときも、再燃だけが原因とは限りません。予定の検査を待つかどうかは、主治医の判断が必要です。
腸だけでなく、関節・皮膚・眼にも注意する
潰瘍性大腸炎では、関節の痛み、皮膚の症状、眼の炎症など、腸以外の症状を伴う方もいます。腸管外合併症と呼ばれるもので、腹部の症状と同じ時期に出るとは限りません。[8][10]
眼の痛みや見え方の変化があれば、次の定期受診を待たず眼科などを受診してください。ほかの診療科を受診する際も、潰瘍性大腸炎の診断名と使用中の薬を伝えることが、原因や治療を考える助けになります。
よくある質問
潰瘍性大腸炎と診断されたら、最初に何を確認する?
炎症の範囲と重症度、薬の目的、次の受診・検査の予定、悪化したときの連絡先を確認すると、治療を続ける見通しが立ちます。薬を使い始めてからの変化も診察で役立つ情報です。便の回数や出血の有無を、無理なく続けられる方法で残しておくと伝えやすくなります。
難病の医療費助成は全員が使えますか
潰瘍性大腸炎は指定難病ですが、診断だけで全員が医療費助成の対象になるわけではありません。重症度などの条件があり、軽症でも高額な医療を継続する場合に対象となる仕組みがあります。申請に必要な書類や条件は、主治医とお住まいの自治体の窓口で確認してください。[8][9]
症状がなくなったので薬をやめたい
寛解を維持するために続ける薬があります。中止や減量は、症状だけでなく検査結果や過去の再燃も踏まえて決めるため、自己判断で中断せず主治医に相談してください。飲み忘れや使いにくさがある場合も、その理由を伝えることが治療の調整につながります。
家族に患者がいれば、自分も発症するの?
遺伝的な要因は関わりますが、家族に患者さんがいるだけで発症が決まるものではありません。家族歴のない方にも発症します。気になる下痢や血便があるかどうかが、受診を考えるうえでの具体的な手がかりです。[1]
下痢止めや痛み止めで様子を見てもよい?
血便や発熱、強い腹痛がある場合、薬で症状を隠して受診を先延ばしにするのは適切ではありません。下痢止めが適さない腸炎もあり、診断済みの方でも病状によって判断が変わります。市販薬を追加する前に、使用できる薬と受診の必要性を医師や薬剤師に確認してください。[2]
胃カメラで潰瘍性大腸炎は分かる?
胃カメラでは大腸を観察できないため、大腸の病変を調べる検査の代わりにはなりません。胃カメラの対象は食道・胃・十二指腸です。みぞおちの症状や黒い便などで上部消化管の確認が必要と判断された場合には、胃カメラ検査を検討します。
横浜駅前ながしまクリニックで相談できること
横浜駅前ながしまクリニックでは、消化器内科でお腹の症状を診察し、大腸カメラによる血便や炎症性疾患の診断に対応しています。下痢や血便が続いている方、検査の必要性に迷う方は、消化器内科の診療案内をご確認ください。
大腸カメラは鎮静剤を使用する方法も相談でき、検査結果は対面で説明しています。使用した日は車・バイク・自転車の運転はできません。症状の始まった時期や使用中の薬を把握しておくと、診察で検査の必要性を考える際に役立ちます。
参考文献
- [1] 難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班/難病情報センター.潰瘍性大腸炎:病気の解説.
- [2] 日本消化器病学会.炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2020(改訂第2版).
- [3] 日本消化器病学会.患者さんとご家族のための炎症性腸疾患(IBD)ガイド2023.
- [4] Singh S, et al. AGA Clinical Practice Guideline on the Role of Biomarkers for the Management of Ulcerative Colitis. Gastroenterology. 2023.
- [5] 英国消化器病学会.成人の炎症性腸疾患診療コンセンサスガイドライン(2019).
- [6] Lim SM, et al. The effect of the menstrual cycle on inflammatory bowel disease: a prospective study. Gut Liver. 2013.
- [7] Hashash JG, et al. AGA Clinical Practice Update on Diet and Nutritional Therapies in Patients With Inflammatory Bowel Disease: Expert Review. Gastroenterology. 2024.
- [8] 難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班/難病情報センター.潰瘍性大腸炎:診断・治療指針.
- [9] 厚生労働省.指定難病.
- [10] 難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班/難病情報センター.潰瘍性大腸炎:FAQ.
医学監修:横浜駅前ながしまクリニック 院長 長島周平(内科・消化器内科)
更新日 2026-10-18
