2025年08月14日
血便は、痔などの良性の病気が原因であることも多い一方、大腸ポリープや大腸がん(大腸癌)、炎症性腸疾患のサインである場合もあります。血の色や便の状態は出血部位を考える手がかりになり、何科を受診すべきか判断する助けになります。
「トイレの水が赤く染まっていた」というとき、多くの方がまず戸惑うと思います。この記事では、血の色からわかる出血部位の目安、考えられる主な病気、受診の目安、何科に相談すればよいか、大腸カメラでわかることを整理します。
受診の際は、血便に気づいた日時、血の色、量、痛みや下痢の有無をメモしておくと、診察で状況を伝えやすくなります。写真を残せる場合は、無理のない範囲で記録しておくのも一つの方法です。
「血便」と呼ぶ範囲:便に混じる血と、排便時に出る血
血便とは、便に血液が混じった状態や、排便のときに血が出る状態全般を指します。色は真っ赤な鮮血から黒っぽいものまでさまざまで、量も個人差があり、少量だから軽い、大量だから重いと単純に言い切れるものではありません。
血便は何科?消化器内科をすすめる理由と、肛門科との使い分け
血便は、消化器内科(胃腸科)での相談が基本です。肛門からの出血が疑われる場合は肛門科でも構いませんが、大腸ポリープや大腸がん、炎症性腸疾患など大腸の奥の病気が隠れていることもあるため、大腸カメラに対応できる消化器内科での相談が安心です。どちらに行けばよいか迷う場合は、まず内科・消化器内科に相談してください。
血の色でわかること、わからないこと
はい、血の色や便の状態は出血部位を考える一つの手がかりになります。ただし色だけで原因を確定することはできず、あくまで目安です。
| 便・血の色 | 出血部位の目安 | 考えられる主な原因 |
|---|---|---|
| 鮮やかな赤色(鮮血) | 肛門・直腸など、肛門に近い部位 | 痔核(いぼ痔)、裂肛(切れ痔)、直腸の炎症、大腸ポリープ、大腸がんなど |
| 暗い赤色(暗赤色) | 大腸のより奥側、大腸全体 | 大腸憩室出血、虚血性腸炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、大腸がんなど |
| 黒色便・タール状の便 | 胃・十二指腸など上部消化管 | 胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃炎など |
鮮血・暗赤色・黒色便:色ごとに疑う病気
一般に、出血してから便として排出されるまでの時間が短いほど赤く、時間が経つほど黒っぽく変化するとされています。肛門に近い場所からの出血は赤いまま排出されやすく、胃や十二指腸など上部消化管からの出血は、腸内を通過する間にタール状の黒い便になることがあります。ただし出血量が多い場合は上部消化管からの出血でも赤みが残ることがあり、色だけで「軽い」「重い」を判断しないことが大切です。
血便の原因になる病気:痔から大腸がんまで
血便の原因としては、痔核・裂肛のような良性の病気から、大腸ポリープ、大腸がん(大腸癌)、炎症性腸疾患まで幅があります。以下のような病気が代表的です。
- 痔核・裂肛:いわゆるいぼ痔・切れ痔です。排便時の痛みを伴うこともあれば、痛みが目立たず出血だけで気づくこともあります。
- 大腸ポリープ・大腸がん:大腸がんは早い段階では自覚症状に乏しいことがあり、進行してから血便、便が細くなる、便通の変化、貧血などで気づかれることがあります。
- 大腸憩室出血:大腸の壁にできた小さなくぼみ(憩室)から出血する病気です。突然の下血として気づくことがあります。
- 虚血性腸炎:大腸への血流が一時的に低下して炎症が起こる病気です。突然の腹痛のあとに血便を伴う下痢が続くことがあります。
- 感染性腸炎:細菌やウイルスによる腸炎で、下痢や腹痛とともに血が混じることがあります。
- 潰瘍性大腸炎・クローン病:腸に慢性的な炎症が起こる病気で、血液に加えて粘液が混じる粘血便、下痢、腹痛などを伴うことがあります。
急に血便が出たとき、腹痛の有無から考える原因
これまで何もなかったのに、ある日突然血便が出た、というご相談は少なくありません。急に始まる血便では、大腸憩室出血や虚血性腸炎などが考えられます。大腸憩室出血は、腹痛がほとんどないまま突然の下血として気づかれることが多く、虚血性腸炎は、突然の強い腹痛のあとに血便を伴う下痢が続く、という経過をとることが一般的です。
一方で、硬い便や勢いのある下痢がきっかけで切れ痔やいぼ痔から出血することもあり、こちらも「急に」始まったように感じられます。急に出たからといって原因を絞り込めるわけではないため、出血の色や量、腹痛や発熱の有無をあわせて診察で確認します。
血便の原因で「多い」と言い切れない理由
血便の原因を一律に多い順に並べることはできません。一般の外来、救急、内視鏡検査を受けた方では、集まる症状や病気の内訳が異なるためです。痔核・裂肛などの肛門の病気のほか、腸炎、憩室出血、大腸ポリープ・大腸がん、血管性の病変などが原因になり、同じ方に複数の原因が重なっていることもあります。
当院で拝見する女性の血便では、虚血性腸炎と痔核からの出血が目立ちますが、これは当院を受診された方の傾向であり、血便全般の統計ではありません。血の色や量だけで原因を決めつけず、診察と検査で出血の場所を確認することが大切です。
切れ痔・いぼ痔の出血と大腸がんの出血は、見た目で見分けにくい
「切れ痔かどうか自分で確かめる方法はありますか」というご質問をよくいただきます。痔による出血には次のような傾向がありますが、これはあくまで傾向であり、見た目だけで痔と決めることはできません。
- 血の色:痔核・裂肛では鮮やかな赤い血であることが多いです。ただし、肛門に近い直腸にできたがんも鮮やかな赤い血として出ることがあります。
- 血の付き方:便の表面やトイレットペーパーに付く、排便のあとにぽたぽたと落ちる、という形が多いです。便への混じり方は手がかりの一つですが、出血の場所を見た目だけで判断することはできません。
- 痛み:切れ痔では排便時に切れるような痛みを伴うことが多い一方、いぼ痔(内痔核)は痛みがなく出血だけで気づくことも珍しくありません。痛みがないことは、安心の根拠にはなりません。
もともと痔がある方は「いつもの痔だろう」と思い込みやすく、受診が遅れる要因になり得ます。痔と大腸がんの出血を見た目だけで区別することは容易ではないため、痔か血便か分からないときは、判断を待たずに消化器内科または肛門科にご相談ください。
大腸がんの血便は、色や「紙につく程度」では否定できない
「大腸がんの血便は何色ですか」「ティッシュに血が付く程度でも大腸がんの可能性はありますか」というご質問には、色や付き方だけでは大腸がんを否定できない、というのが答えになります。大腸の奥にできたがんでは暗い赤色の血が便に混じることが多い一方、肛門に近い直腸のがんでは鮮やかな赤い血が紙や便の表面に付く形で出ることがあり、痔の出血とよく似て見えます。
大腸がんは早い段階では自覚症状に乏しく、進行してから血便のほかに、便が細くなる、便秘と下痢を繰り返す、貧血で気づかれることがあります。血便に加えてこうした変化がある場合は、早めに大腸カメラで確認することをおすすめします。
「ストレスのせい」と決めつけない血便
ストレスそのものが血便を起こすことはありません。「トイレットペーパーに少し血が付いたのはストレスのせいだろうか」と感じる方は多いのですが、ストレスが直接血を出すわけではない、というのが当院の考え方です。
ただし、強いストレスが腸の症状の引き金や悪化の要因になることはあります。ストレスをきっかけに下痢や便秘が続き、その結果として切れ痔やいぼ痔から出血する、という間接的な関係は十分に起こり得ます。また、潰瘍性大腸炎やクローン病をお持ちの方では、ストレスが症状悪化の一因となって血便が出ることもあります。
つまり、ストレスを感じている時期に血便が出たとしても、それをストレスのせいと片付けることはできません。出血している場所と原因は別に確認する必要があります。
家族に大腸がん・炎症性腸疾患の人がいる方へ
血便の原因となる病気の中には、家族歴が関係するものがあります。大腸がんのほか、潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患がその例です。ご家族にこうした病気の方がいる場合は、血便を「痔だろう」と自己判断せず、診察時にお伝えください。検査の進め方を考えるうえで大切な情報になります。
「いつもの痔」と思っても見分けにくい大腸がんの出血
血が赤いことから痔だと考える方は少なくありませんが、痔と大腸がんの出血を見た目だけで区別することは容易ではありません。肛門に近い直腸にがんができた場合も、鮮やかな赤い血便として出ることがあるためです。もともと痔がある方は「いつもの痔」と思い込みやすく、受診が遅れる要因になり得ます。市販の痔の薬で出血が落ち着いたとしても、原因が確認できたわけではありません。過度に不安になる必要はありませんが、気になる血便が続く場合は医師にご相談ください。
痛みがない血便が安心の根拠にならない理由
「痛みがないので大丈夫だと思っていた」という方は少なくありません。しかし、痛みがないことは安心の根拠にはなりません。いぼ痔(内痔核)は痛みを伴わずに出血することが多く、大腸ポリープや大腸がんも早い段階では痛みがなく、出血だけが唯一のサインになることがあります。潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患でも、初期には腹痛を伴わず血便だけが出る場合があります。
痛みの有無は出血の場所や原因を考える手がかりの一つにはなりますが、それだけで原因を決めることはできません。痛みがない血便でも、原因を確認するために受診をおすすめします。
1回だけの出血でも、原因の確認をすすめる理由
「おしりから1回だけ鮮血が出たが、その後は止まっている」という状況では、少量で他の症状がなければ緊急性は高くないことが多いです。全身状態が良く、腹痛や発熱がなく、出血が止まっているなら、通常の外来で対応できることが多いです。
ただし、初めての原因がわからない血便や、以前にも出たことがある血便は、救急でなくても消化器内科での精査が必要です。一度でも血便があった場合は、原因を確認しておくと安心です。当院では、血便がおさまっていても、消化器内科での相談をおすすめしています。
血だけが出る・便器が赤く染まる:量と繰り返しで変わる緊急度
便に血が混じるのではなく、血だけがぽたぽた落ちる、あるいは便器の水が赤く染まる、という出血の仕方があります。肛門に近い場所からの出血でよくみられ、痔核・裂肛が原因であることも多いのですが、直腸の病変でも同じような形で出ることがあります。
注意していただきたいのは出血の量と繰り返しです。便器が真っ赤になる程度の出血を何度も繰り返す、血の塊が何度も出る、大量の鮮血便が続く、という場合は、循環に影響が出る出血の可能性があり、救急で診てもらってください。めまいや冷汗、動悸を伴うなら、迷わず救急を受診してください。
下痢に血や粘液が混じるとき、疑う腸の炎症
下痢と血便が同時にある場合は、腸の炎症を考えます。細菌やウイルスによる感染性腸炎では、下痢や腹痛とともに血が混じることがあり、虚血性腸炎では突然の腹痛のあとに血便を伴う下痢が続きます。血液に加えてゼリー状の粘液が混じる粘血便や、下痢と腹痛を繰り返す場合は、潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患も考えます。
頻回の血性下痢、発熱を伴う血便、嘔吐で水分が取れない、強い腹痛が続く、という場合は、早期の評価が必要です。下痢と血便が出たら、様子を見ずに受診してください。
痔の出血が「何日続くか」で判断できない理由
切れ痔では、排便時に少量の鮮血が紙につくことがあります。ただし、出血が一度続く時間と、傷が落ち着くまでの期間は別に考える必要があり、続く日数には個人差があります[7]。少量に見えても、ほかの病気と外見だけで区別することはできません。
出血を繰り返す、量が増える、痛みや便通の変化を伴う場合は、痔と決めつけず消化器内科または肛門科にご相談ください。切れ痔・いぼ痔そのものの治療については、切れ痔(裂肛)の記事といぼ痔(痔核)の記事で解説しています。
健診で便潜血陽性:大腸カメラをすすめる理由
健診や人間ドックの便潜血検査で陽性と言われた場合、それは大腸のどこかから出血している可能性があるというサインです。痔があるとわかっている方でも、その出血が痔によるものなのか、大腸ポリープや大腸がんによるものなのかは、精密検査を受けなければ区別できません。「痔があるから大丈夫」と決めつけず、精密検査で確認することが大切です。
当院では、便潜血陽性という結果そのものを重く受け止め、年齢や自覚症状の有無にかかわらず大腸カメラでの確認をおすすめしています。痔があるとわかっている方でも同様に大腸カメラをおすすめしており、緊急性が高いと考えられる場合は、可能な範囲で日程を調整し、速やかに検査を行うこともできます。
便潜血検査は、大腸がんや大腸ポリープからの出血を捉えるための検診用の検査ですが、出血が毎日起こるとは限らないため、結果が陰性であっても大腸に病気がないと言い切れる検査ではありません。免疫法の便潜血検査の感度は、対象となる病変の進行度などによって幅があるとされ、偽陰性(結果が陰性であっても実際には病気がある状態、いわゆる見逃し)が生じ得ることも知られています。陽性の結果が出た場合はもちろん、血便などの症状がある場合は、便潜血検査の結果を待たずに大腸カメラを検討することが基本です。
便潜血陽性と言われた後の考え方について詳しくは、健診で便潜血陽性と言われたら|再検査より大腸カメラを考える理由もあわせてご覧ください。
便潜血陽性なのにポリープなし:ほかに考えられる出血の原因
あります。便潜血検査で陽性と言われたのに、大腸カメラでポリープが見つからなかった、という方もいらっしゃいます。便潜血陽性はイコール大腸ポリープではありません。日本で一般的な便潜血検査(免疫法)は、便の中のヒトのヘモグロビンを検出する検査で、下部消化管のどこかで少量でも出血していれば陽性になります[6]。
ポリープがなくても、次のようなものが原因になります。
- 痔核・裂肛:かなり一般的です。自覚症状がなくても微量の出血をしていることがあります。
- 大腸の炎症:感染性腸炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、虚血性腸炎など。
- 大腸憩室:明らかな血便がなくても微量に出血していることがあります。
- 大腸がん:ポリープの形をとらない場合も、当然ながら確認の対象です。
- 血管の病変や直腸の粘膜の病変。
- 一過性の微量出血:硬い便や排便時に粘膜が傷ついた場合など。
- 検査上のばらつき:消化管の出血は出たり止まったりするため、便を採ったタイミングによって陽性・陰性が変わることがあります。
便潜血が陽性だったのに大腸カメラでポリープが見つからなかった場合でも、出血の原因が別の場所にある可能性は残ります。結果の説明の際に、気になる症状があればあわせてお伝えください。
大腸カメラで異常なしでも血便が続くとき、次に確認する場所
あります。大腸カメラで大腸の内側に明らかな異常が見つからなくても、血便の原因が別のところにあることがあります。一つは肛門の病気です。痔核・裂肛は大腸カメラの観察の中心である大腸の外側にあり、診察や肛門鏡での確認が必要になる場合があります[11]。
もう一つは、出血が出たり止まったりする性質です。消化管の出血は間欠的なため、検査の時点では出血が止まっていて出血源が見つけにくいことがあります。硬い便や排便時に粘膜が傷ついたことによる一過性の出血も、検査の時には治っていることがあります。また、黒っぽい便の場合は、胃や十二指腸など上部消化管からの出血の可能性があり、大腸カメラではなく胃カメラで確認します。
大腸カメラで異常がなかった場合でも、血便が続く、または繰り返す場合はその旨をお伝えください。次に確認すべき場所や検査を、診察で一緒に考えます。
便潜血検査の結果はいつわかる?一律の日数を示せない理由
便潜血検査の結果をお伝えできる時期は、検体の提出方法、検査機関の運用、休日の有無などによって異なるため、一律の日数は示せません。提出時にお渡しする説明書や受付の案内で、結果の確認方法と時期をご確認ください。健診で陽性と言われた場合の考え方は、便潜血陽性と大腸カメラについての記事で解説しています。
女性の血便:生理・妊娠と重なるときの見分け方
女性の血便では、原因として特に多い病気の傾向があること、月経による出血と血便の区別がつきにくいこと、検査への抵抗感から受診が遅れやすいことなどに注意が必要です。それぞれ順にご説明します。
女性の血便で当院に多い原因:虚血性腸炎と痔核
女性の血便の原因として、当院で特に多くみられるのは虚血性腸炎と痔核からの出血です。次いで潰瘍性大腸炎がみられます。
虚血性腸炎は、便秘などで腸管内圧が上がることも一因とされ、大腸の血流が一時的に低下して炎症や出血を起こす病気です。高齢の方に多いとされる一方で、性別でみると女性に発症しやすい傾向があり、便秘がちな方に多くみられるとされています。突然の腹痛のあとに血便を伴う下痢が続く場合は、虚血性腸炎の可能性も考えられます。詳しくは虚血性腸炎についての記事もご覧ください。
女性では、妊娠・出産や便秘を背景に痔核からの出血がみられることがあります。排便時の鮮血として気づかれることが一般的です。
潰瘍性大腸炎は、血液に加えて粘液が混じる粘血便や下痢、腹痛を繰り返す病気で、比較的若い世代でも発症します。大腸憩室出血は、突然の下血として気づくことがあります。当院で拝見する女性の血便の原因としては、虚血性腸炎や痔核出血に比べると多くありません。
生理の出血と血便の見分け方
月経中や月経周辺の時期は、経血が便に付着して血便のように見えることがあります。ただし、経血による着色なのか、腸からの出血が混じった血便なのかは、見た目だけで判断することが難しい場合が少なくありません。無理に自己判断しようとせず、血便を疑う状態であれば大腸カメラでの確認をおすすめしています。判断に迷う場合は、生理中であることを伝えたうえで婦人科・消化器内科いずれかにご相談ください。なお、大腸カメラなど大腸の検査についての相談は消化器内科が担当となります。
妊娠中の血便への当院の対応
妊娠中は痔核による出血が増えやすい時期でもあり、当院では妊娠中の痔核による出血にも対応しています。一方で、痔核以外の病気が疑われる血便については、妊娠中は検査や治療の方法に制約があるため、まずは産科の主治医にご相談いただくようお願いしています。妊娠中に血便に気づいた場合は、自己判断せず産科の主治医にご相談のうえ、必要に応じて消化器内科にもご相談ください。
また、「検査中に下半身を見られるのが恥ずかしい」という理由で受診をためらう女性も少なくありません。大腸カメラでは、大腸内視鏡用の半ズボンタイプの検査着を着用して検査を行うため、下半身が露出することはありません。不安な点は予約時や診察時にご相談ください。
血便の緊急度:迷わず救急へ行く状態と、外来でよい状態の3区分
血便で救急を受診するかどうかは、出血の量そのものよりも、「循環が保てなくなっている」「出血が続いている」「重い病気を示している」所見があるかで判断するのが実用的です[5]。当院では次のように考えています。
迷わず救急を受診してほしい状態
- めまい、失神、冷汗、動悸、息切れ、強い倦怠感、意識がぼんやりする(出血による貧血やショックを疑う症状)
- 大量の鮮血便が続く、血の塊が何度も出る、便器が真っ赤になる程度の出血を繰り返す、黒色便が大量に出る
早めの評価が必要な状態
- 強い腹痛が続く、お腹を押すと強く痛む、発熱を伴う血便、頻回の血性下痢、嘔吐で水分が取れない(虚血性腸炎、重い感染性腸炎、炎症性腸疾患の急な悪化などを考えます)
- 抗凝固薬・抗血小板薬など血液をさらさらにする薬を飲んでいる、ご高齢、腎不全がある、重い貧血の既往がある方は、より早めの受診をおすすめします
- 原因のはっきりしない体重減少がある(血便がおさまっていても、消化器内科にご相談ください)[4]
通常の外来で対応できることが多い状態
少量の鮮血が紙につく程度で、全身の状態が良く、腹痛や発熱がなく、出血が止まっている場合は、痔核・裂肛などを考えて通常の外来で対応できることが多いです。ただし、初めての原因がわからない血便や、繰り返している血便は、救急でなくても消化器内科での精査が必要です。
いずれの場合も、血便が出たら受診してください。受診の際は、血便に気づいた日時、血の色、量、痛みや下痢の有無をメモしておくと、診察で状況を伝えやすくなります。
血便の原因を調べる検査:大腸カメラが基本になる理由
血便の原因を確認する検査としては、大腸カメラ(大腸内視鏡検査)が基本になります。便潜血検査は症状のない方を対象とした検診で使う検査であり、すでに血便という症状がある場合は、その結果を待たずに大腸カメラを検討することが一般的です。健診で便潜血陽性と言われた場合の考え方については、便潜血陽性と大腸カメラについての記事でも解説しています。抗凝固薬・抗血小板薬など血液をさらさらにする薬を服用している方は、検査や処置に関わることがあるため、自己判断で中止せず事前にお伝えください。
大腸カメラでわかること、その場で切除できること
大腸カメラでは、肛門から内視鏡を挿入し、直腸から盲腸までの大腸粘膜を直接観察します。痔核、大腸ポリープ、大腸がん、憩室出血、虚血性腸炎、潰瘍性大腸炎、クローン病などの診断につながることがあります。検査中にポリープが見つかった場合、適応があればその場で日帰り切除に対応します。ポリープのサイズや性状に応じて、内視鏡的粘膜切除術(EMR)とコールドスネアポリペクトミー(CSP)を使い分けていますが、サイズが大きい、数が多いなどの場合は入院での切除をおすすめすることもあり、方針は検査前の診察でご説明します。
大腸カメラについてさらに詳しくは大腸カメラのご案内ページを、便が細い・残便感が続く症状はこちらの記事を、痔の症状のセルフチェックはこちらの記事をご覧ください。
大腸カメラで痔はわかる?内痔核と外痔核で違う
大腸カメラは大腸の内側を観察する検査です。挿入と抜去の際に肛門の付近も通るため、いぼ痔(内痔核)が所見として確認できることはあります。ただし、切れ痔や外痔核を含めた痔の詳しい評価には、診察や肛門鏡での確認が必要になる場合があります[11]。大腸カメラの利点は、痔の有無だけでなく、大腸や直腸の奥に別の出血源がないかを同時に確かめられることです。痔があるとわかっている方でも、その出血が本当に痔によるものかを見た目だけで断定することはできないため、当院では大腸カメラでの確認をおすすめしています。
血便の大腸カメラに保険が使える場合と、費用が変わる条件
血便などの症状があり、診察で原因を確かめるために大腸カメラが必要と判断される場合は、通常、保険診療の対象です。検査中の組織採取やポリープの処置、使用する薬剤などによって自己負担額は変わります。症状のない任意の健診として受ける場合は扱いが異なるため、費用については予約時または診察時にご確認ください。大腸カメラの費用の考え方は、内視鏡検査の費用についての記事でも解説しています。
大腸カメラ・ポリープ切除のあとの出血:連絡すべき目安
検査だけを受けた場合と、ポリープを切除した場合とで考え方が少し異なります。観察のみの検査のあとに出血することはまれですが、ポリープを切除した場合は、切除した部分から出血することがあり、切除直後だけでなく数日たってから起こることもあります。
当院では、検査後や切除後に血の塊(コアグラ)が出るようであれば、早めにご連絡のうえ受診していただくようお願いしています。血液をさらさらにする薬を飲んでいる方は、切除後の出血に特に注意が必要です。めまいや冷汗を伴う、出血が止まらない、便器が赤くなる量が出る、という場合は、検査を受けた医療機関へ連絡するか、夜間・休日であれば救急を受診してください。日帰りのポリープ切除については日帰り大腸ポリープ切除のページもご覧ください。
血液をさらさらにする薬を飲んでいる方へ:自己判断で止めない理由
抗凝固薬・抗血小板薬など血液をさらさらにする薬を服用している方は、血便が出た場合の受診の目安を、そうでない方より早めに考えます。出血が止まりにくくなる可能性があるためです。また、大腸カメラでポリープを切除できるかどうか、薬を一時的に休むかどうかの判断にも関わります。
自己判断で薬を中止することは避け、受診の際はお薬手帳をお持ちのうえ、服用中の薬を事前にお伝えください。出血の量が多い、めまいや冷汗を伴う、という場合は早急にご連絡いただくか、救急を受診してください。
血便で大腸カメラをおすすめする当院の考え方
ここまでの一般的な目安に加えて、当院で実際に大腸カメラをおすすめする際に大切にしている考え方を紹介します。
- 血便がある場合、当院では年齢を問わず大腸カメラをおすすめしています。
- 痔があるとわかっている方でも、その出血が本当に痔核によるものかを見た目だけで断定することはできないため、当院では全例に大腸カメラをおすすめしています。
- 貧血症状を伴うなど緊急性が高いと考えられる場合は、日程を調整して速やかに検査を行うことも可能です。
実際の判断は診察のうえで、お一人おひとりの状態に応じて行いますので、気になる血便がある場合はご相談ください。
血便を1年放置した場合に起こりうること
「血便を1年放置したらどうなるか」というご質問には、原因によって答えが変わります、とお伝えしています。痔核・裂肛が原因であれば、放置しても命に関わることは少ない一方、出血や痛みを繰り返して生活に支障が出ることがあります。大腸ポリープや大腸がんが原因であれば、放置している間に進行する可能性があり、早く見つけるほど治療の選択肢は広がります。炎症性腸疾患であれば、治療が遅れることで症状が悪化することがあります。
問題は、放置している間は原因がわからないままだということです。血便がおさまったからといって原因がなくなったわけではありません。当院では、一度でも血便があった場合は、原因を確認しておくことをおすすめしています。
横浜駅前で、当日の大腸カメラに対応する体制
横浜駅前ながしまクリニックは、横浜駅きた西口から徒歩約3分にある内科・消化器内科・婦人科のクリニックです。血便や下血、強い腹痛、急な貧血など、緊急性が疑われる内視鏡検査のご相談は毎日対応しており、当日の大腸カメラも毎日実施しています(院内で下剤を内服する方法は水曜・金曜限定ですが、自宅で内服する方法であれば当日検査にも対応可能です)。ご希望に応じて鎮静剤を使用した検査に対応しており、見つかったポリープは適応があればその場で日帰り切除を行います。検査時は大腸内視鏡用の半ズボンタイプの検査着を着用するため、下半身が露出することはありません。院長は日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医、日本消化器病学会認定 消化器病専門医、日本肝臓学会認定 肝臓専門医です。手術や入院が必要な場合は連携する医療機関をご紹介しています。
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よくある質問
血便と下血はどう違いますか?
一般に血便は便に血が混じった状態全般を指し、下血は主に上部消化管からの出血で黒っぽい便が出る状態を指すことがあります。呼び方より、色や量、続く期間を医師に伝えることが大切です。
紙に少し血がつく程度でも受診したほうがいいですか?
量が少なくても、大腸ポリープや大腸がんなどが隠れていないとは言い切れません。初めての血便や繰り返す血便、便通の変化を伴う場合は、量にかかわらず消化器内科での相談をおすすめします。
血便は何日なら様子を見てよい?日数だけでは決められない
明確な日数だけで、様子を見てよいかを判断することはできません。少量の鮮血が紙につく程度で、全身の状態が良く出血が止まっている場合は、通常の外来で対応できることがあります。ただし、初めての原因がわからない血便や繰り返す血便は、消化器内科での精査が必要です。出血が続く、量が増える、ふらつきや強い腹痛、発熱を伴うときは、日数を数えずに早めに受診してください。
市販の痔の薬で出血が止まったら、もう受診しなくてよいですか?
市販薬で症状が落ち着いても、出血の原因が痔だけと確認できたわけではありません。一度でも血便があった場合は、原因を確認しておくと安心です。
生理中なのか血便なのか自分では判断がつきません。どうすればよいですか?
経血と便からの出血は見分けが難しいことがあります。判断に迷う場合は、生理の時期や量とあわせて婦人科または消化器内科にご相談ください。
大腸カメラはつらい検査というイメージがありますが、対応してもらえますか?
当院では、ご希望に応じて鎮静剤を使用した大腸カメラに対応しています。負担を感じにくくなる方が多いですが、感じ方には個人差があります。不安な点は予約時や診察時にご相談ください。
検査当日はどのくらいの時間がかかりますか?
下剤の内服や検査後の休憩を含め、半日程度を見込んでいただくことが多いです。鎮静剤を使用した場合はリカバリールームでの休憩が加わり、当日の自動車・バイク・自転車の運転はできません。
何歳から大腸がんを考える?40歳未満でも放置しない
年齢だけで、血便の受診や検査の要否は決まりません。厚生労働省の大腸がん検診は40歳以上が対象ですが、これは症状のない方を対象にした検診の基準であり、血便の受診基準ではありません[10]。目で見える血便は、年齢や便潜血の結果にかかわらず診察の対象です。大腸がんは年齢を問わず起こり得る病気で、年齢が上がるほど頻度が高まるとされていますが、血便があれば40歳未満でも放置せず原因を確認することが大切です。当院では年齢だけで判断せず、症状や経過を伺ったうえで、大腸カメラを含む検査をご提案しています。
20代・30代でも血便は検査が必要ですか?
20代・30代でも、血便があれば検査が必要になることがあります。若い年代でも痔や腸炎が原因になることがありますが、原因の内訳は受診した方の集団によって異なり、年齢や見た目だけで原因は決められません[8]。大腸がん検診の対象年齢は、症状がない方に向けた基準です。血便を繰り返す場合や、腹痛、下痢、便通の変化を伴う場合は、消化器内科で原因を確認します。必要な検査の種類は診察で決めますので、若いからと自己判断せずご相談ください。
血便のうち大腸がんが原因である割合:個人には当てはまらない数字
症状だけで、個人が大腸がんである確率を決めることはできません。参考として、海外の診療所を受診した50歳以上で直腸出血のある方をまとめた研究では、大腸がんが見つかった割合は8%程度と報告されています[4]。この数値は研究の対象となった集団の結果であり、個人には当てはまりません。年齢、出血の様子、貧血や便通の変化などをあわせて診断します。「血便が癌である確率」を調べるより、原因を検査で確認することをおすすめします。
血便の治療にはどのくらいかかりますか?
血便の治療にかかる期間は、原因によって一過性のものから長期にわたるものまでさまざまです。痔や一時的な腸の炎症では、便通の調整や薬で落ち着くことがあります。一方、炎症性腸疾患では、継続した治療や経過観察が必要になる場合があります[9]。大腸がんでも、診断後は治療とその後の経過観察を続けることになります[1]。自己判断で治療期間を見込まず、症状の変化も診察時にお伝えください。検査で原因を確かめ、その病気に応じた治療の計画を立てます。
検査結果はいつ、どのように教えてもらえますか?
当院では、検査結果は電話や郵送ではなく、後日ご来院いただいた際に医師から対面でご説明しています。ポリープ切除後の病理検査結果も、来院時にお伝えします。
監修
横浜駅前ながしまクリニック 院長 長島周平(内科・消化器内科/日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医)
参考文献
[1] 国立がん研究センター がん情報サービス. 大腸がん(結腸がん・直腸がん). https://ganjoho.jp/public/cancer/colon/index.html
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