2026年09月09日
「前回、大腸カメラは異常なしでした。次はいつ受ければいいですか」――秋の健診結果が届くこの時期、外来でよく聞かれる質問です。実はこの問いには、性質の違う二つの答えがあります。ひとつは症状のない人が受ける、がん検診としての受診間隔。もうひとつは、前回の内視鏡で何が見つかったかに応じて個別に決まる間隔です。この二つを分けずに話すと、案外かみ合いません。
対策型検診としての間隔
症状のない人向けの、国の指針。
胃:50歳から2年に1度
大腸:40歳から年1回の便潜血検査
前回の所見による個別の間隔
ガイドラインの目安(胃2〜3年・大腸5年)と、当院の基準(胃はリスクに応じて1年または2年・大腸3年)があります。
主治医と相談して決めます。
※ 大まかな整理です。ご自身がどちらに当てはまるかは、前回の検査結果を踏まえてご相談ください。
「何年おきか」には、二つの違う質問がある
胃がん検診・大腸がん検診として国が定めた間隔と、前回の胃カメラ・大腸カメラの結果を踏まえて主治医が個別に提案する間隔は、そもそも別のものです。健診の結果票にある「次回は◯年後に」という案内は前者を、外来で私たちが話す「次はいつ受けましょうか」は後者を指すことが多く、ここを区別しないと話がすれ違います。順番に整理します。
まず、症状のない人向けの「対策型検診」の間隔
胃がん検診は50歳から2年に1度、胃部X線検査(バリウム)か胃内視鏡検査のどちらかを選んで受けるというのが国の指針です[4]。この二つを毎年交互に受けることは、偽陽性の判定が増え、それに伴う偶発症の可能性も高まるため、推奨されていません[4]。当院は横浜市の胃がん検診そのものは取り扱っておらず、胃カメラは人間ドック、または症状に応じた保険診療の中で受けていただく形になります。
大腸がん検診は40歳から年に1度、便潜血検査を受けるのが国の指針です[5]。ここで押さえておきたいのは、対策型検診の項目は便潜血検査であって、大腸カメラそのものは検診の項目には含まれていないという点です。便潜血が陽性になったときに、精密検査として初めて大腸カメラを行う、という順番になります。当院でも便潜血検査を実施しており、陽性であれば大腸カメラでの精密検査をご案内しています。結果が陽性だった方は健診で便潜血陽性と言われたらもあわせてご覧ください。
胃カメラの間隔――ガイドラインが示す数字と、その理由
所見なし・症状なし:2年に1回
※ 当院の基準はガイドラインより短めです。理由と、短くすることの不利益は本文「当院の基準」の項をご確認ください。
胃カメラの間隔について国内でよりどころになるのは、国立がん研究センター「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン」です[2]。証拠のレベル2+・推奨グレードBとして「検診対象は50歳以上が望ましく、検診間隔は2〜3年とすることが可能である」としています[2]。
裏づけとして、国内の症例対照研究では2〜4年以内の受診で胃がん死亡率が30%減少(有意だったのは3年以内の受診のみ)、韓国の研究では57%の死亡率減少、40〜79歳では1〜4年以内の受診で20〜40%の減少効果が報告されています[2]。一方、毎年検診では累積の偽陽性が増え、生検の増加に伴い偶発症も増えるとガイドラインは指摘し、「検診間隔の妥当性については、引き続き検討が必要である」とも述べています[2]。
なお、ピロリ菌を除菌した後も萎縮性胃炎や腸上皮化生が残っていれば、胃がんになる危険性はゼロにはなりません[1]。(萎縮性胃炎とは、ピロリ菌除菌後も胃カメラが必要な理由)ご自身の状態は胃がんリスク検診(ABC検診)の結果が参考になります。
大腸カメラの間隔――ガイドラインが示す数字と、その理由
※ 当院の基準はガイドラインより短めです。理由は本文「当院の基準」の項をご確認ください。
大腸カメラの根拠も、日本消化器内視鏡学会「大腸内視鏡スクリーニングとサーベイランスガイドライン」です[3]。初回検査で腫瘍性病変がなかった場合のCQ15のステートメントは「定期的なFIT検診を提案する」(FITは便潜血検査)[3]。
欧米(US-MSTF・ESGE)は腺腫性ポリープがなければ10年後の内視鏡でよいとしています。コホート研究では大腸がん罹患リスクが2年後約90%減少、3〜5年後約80%、10年後は46%まで減弱。死亡リスクは3年後まで約90%、10年後まで約80%減少が続いたとされます[3]。日本のガイドラインはこの10年をそのまま採用せず、理由に大腸内視鏡後にもかかわらず発生する大腸がん(PCCRC)を挙げています。de novo癌や見つけにくい右側のLST(laterally spreading tumor)など急速発育・見逃しやすい病変を考慮し、「欧米と同様に次回のスクリーニングまで10年の間隔を空けることは困難と考える」と判断、「腫瘍性病変がない場合には5年後のスクリーニングTCSを考慮する」としています[3]。negative colonoscopy後のadvanced neoplasiaの5年後発生率は3%以下で、「初回に腫瘍性病変を認めなければ、大腸がんの罹患リスクは十分に低い集団といえる」とも述べています[3]。ポリープを切除した方は大腸ポリープの病理結果で「腺腫」と言われたらをご覧ください。
当院の基準――ガイドラインより短く設定している理由
当院はこれとは別に、次を基準にしています。
| 対象 | 当院の基準 |
|---|---|
| 胃カメラ:ピロリ菌の感染歴がある方、萎縮性胃炎や腸上皮化生を指摘された方、除菌後の方 | 1年に1回 |
| 胃カメラ:ピロリ菌の感染歴がなく、前回の胃カメラで異常がなく、症状もない方 | 2年に1回 |
| 大腸カメラ:前回の大腸カメラで腫瘍性病変がなく、症状もない方 | 3年後 |
ガイドラインの胃2〜3年・大腸5年に対し、当院はより短い間隔を基準にしています。理由は二つ。ガイドラインの間隔は症状のない集団向けの対策型検診の話であり、リスクの傾向がすでに分かっている方への診療上のフォローアップとは目的が異なること。もうひとつは大腸についてで、ガイドライン自身がPCCRCを理由に「欧米の10年は困難」と判断していることを踏まえ、当院はその考え方をさらに進めて3年としていることです。
短い間隔は良いことばかりではありません。胃がん検診ガイドラインが指摘するとおり、間隔を詰めるほど累積の偽陽性・生検・偶発症は増えます[2]。全国共通のルールではなく当院独自の目安であり、実際の間隔は前回の所見や体調を踏まえ個別に相談して決めています。
正直なところ、当てはまる基準は人によって違う
「結局、自分は何年後でいいのか」を一言で言い切れないのは、前回の所見・ピロリ菌の既往・家族歴・症状の有無で当てはまる基準が変わるためです。健診結果票や以前の検査結果があれば、その場で次の時期を決めやすくなります。何歳から受け始めるべきかはこちらの記事で扱っています。
この間隔の話は、症状がない人の話です
ここまでの間隔の話は、あくまで自覚症状のない方を対象にしたものです。胃の痛みや不快感、食欲不振、食事がつかえるといった症状がある場合は[4]、検診の間隔を待たずにすぐ受診してください。血便や、便の性状・排便回数の変化がある場合も同様です[5]。こうした症状があるときは「次は何年後か」ではなく、「今」受診するかどうかの問題になります。
9月から11月にかけては、職域健診や人間ドックの結果が手元に届き、「前回いつ受けたか」を思い出しやすい時期でもあります。当院では10月から12月にかけてが内視鏡検査の最も混み合う時期で、12月の枠は例年11月のうちに埋まり始めます。年内に確認しておきたい場合は、秋のうちに一度ご相談ください。逆算した目安は年末までに検査を終えるための逆算スケジュールで、当院の内視鏡検査全般については内視鏡検査のご案内でご確認いただけます。
よくある質問
胃カメラは基本的に何年おきに受ければいいですか?
症状のない方向けの対策型検診としては、50歳から2年に1度、胃部X線か胃内視鏡のどちらかを選んで受けるのが国の指針です[4]。学会のガイドラインでは、ピロリ菌感染や萎縮性胃炎などの所見がある方への内視鏡検査は2〜3年間隔とすることが可能とされています[2]。当院ではこれよりやや短く、こうした所見がある方・除菌後の方は1年に1回、所見がなく症状もない方は2年に1回を基準にしています。実際の間隔は前回の結果を踏まえて相談のうえで決めます。
大腸カメラで異常なしだったら、次はどのくらい間隔を空けても大丈夫なんでしょうか?
学会のガイドラインでは、初回の大腸内視鏡で腫瘍性病変が見つからなかった場合、5年後のスクリーニングを考慮するという提案が示されています[3]。当院ではこれよりも短い3年後を基準にしています。日本では見逃されやすい病変(PCCRC)への配慮から、欧米のような10年という長い間隔は難しいと考えられており、当院ではその考え方をさらに進めています。なお大腸がん検診としては、40歳から年1回の便潜血検査を続けることも並行して勧められています[5]。
ピロリ菌に感染したことがある場合、間隔は短くなりますか?
ピロリ菌感染や萎縮性胃炎、腸上皮化生といった所見があった方には、ガイドライン上は2〜3年間隔での内視鏡検査が示されていますが[2]、当院ではこうした方を1年に1回の基準としています。ピロリ菌を除菌した後も萎縮性胃炎などが残っていれば、胃がんになる危険性はゼロにはならないため[1]、同様の間隔で検査を続けることをお勧めしています。
バリウムと胃カメラを毎年交互に受けるのはよくないんでしょうか?
推奨されていません。偽陽性の判定が増え、それに伴う偶発症の可能性が高まるなど、不利益が増えるためです[4]。対策型検診としては、胃部X線か胃内視鏡のどちらか一方を選び、2年に1度受ける形が基本になります[4]。
症状があるときも、次の検査時期まで待った方がいいですか?
待つ必要はありません。ここまでの間隔の話は、あくまで症状のない方を対象にしたものです。胃の痛みや食事のつかえ、食欲不振といった症状[4]、血便や便通の変化といった症状があれば[5]、検診の間隔とは関係なく早めに受診してください。
前回いつ内視鏡を受けたか覚えていない場合はどうすればいいですか?
健診結果票や、以前受診した医療機関の検査結果があれば持参してください。前回の所見の有無によって次の時期の考え方が変わるため、記録がある方が相談がスムーズです。記録が見当たらない場合も、症状や健診歴を伺いながら一緒に方針を決めていきます。
監修
横浜駅前ながしまクリニック 院長 長島周平(内科・消化器内科/日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医、日本消化器病学会認定 消化器病専門医)
参考文献
- 日本消化器内視鏡学会. 胃内視鏡検査は何年に1回(どのくらいの間隔で)受ければいいですか?(2019年8月6日掲載、2023年2月7日更新/大阪国際がんセンター 消化管内科 上堂文也). https://www.jges.net/citizen/faq/esophagus-stomach_08(2026年9月8日確認)
- 国立がん研究センター. 有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン 2014年度版. https://canscreen.ncc.go.jp/guideline/iganguide2014_150421.pdf(2026年9月8日確認)
- 日本消化器内視鏡学会. 大腸内視鏡スクリーニングとサーベイランスガイドライン. Gastroenterological Endoscopy 62(8):1519-, 2020. https://www.jstage.jst.go.jp/article/gee/62/8/62_1519/_html/-char/ja(2026年9月8日確認)
- 国立がん研究センター がん情報サービス. 胃がん検診について. https://ganjoho.jp/public/pre_scr/screening/stomach.html(2026年9月8日確認)
- 国立がん研究センター がん情報サービス. 大腸がん検診について. https://ganjoho.jp/public/pre_scr/screening/colon.html(2026年9月8日確認)
- 厚生労働省. がん検診. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000059490.html(2026年9月8日確認)
