2026年09月09日
婦人科の外来でよく聞かれるのが、「生理が始まると決まってお腹が痛くなり、下痢か便秘になる」という相談です。本人は「体質だから仕方ない」と諦めていることが多いのですが、実際にどれくらいの人に起きているのか、数字で見たことがある方は少ないと思います。
生理のたびにお腹の調子が崩れるのは、めずらしいことではない
海外の報告になりますが、婦人科外来を受診した健康な女性156人を対象にした調査では、月経前または月経中に何らかの消化器症状(腹痛・下痢・便秘・吐き気・嘔吐のいずれか)を経験した人が73%にのぼったと報告されています。内訳を見ると、腹痛は月経前が58%、月経中が55%。下痢は月経前24%、月経中28%で、強い疲労感を訴えた人も月経前53%・月経中49%でした [1]。日本人を対象にした調査ではなく、単一施設での結果という限界もありますが、少なくとも「生理の前後にお腹の調子が変わる」こと自体は、婦人科を受診するような健康な女性でも珍しくない現象だとわかります。月経に伴って便通が変わること自体は、それだけで病気を疑う材料にはなりません。
「毎月のことだから」で片づけないほうがいいケースもある
ただ、症状が強くて日常生活に支障が出ている場合や、年々つらさが増している場合は話が別です。月経痛が強すぎて動けない、鎮痛薬を飲んでも効きにくいといった状態は月経困難症と呼ばれる状態にあてはまることがあり、その背景に子宮内膜症などの婦人科的な病気が隠れていることもあります [3][4]。私たちが外来で最初に確認するのは、痛みの強さと、月経周期とどれくらいきっちり連動しているかという点です。
骨盤の外にできる子宮内膜症は、腸にできることが多い
子宮内膜症というと子宮や卵巣のまわりの病気というイメージが強いかもしれませんが、骨盤内の生殖器以外の場所にできることもあります。そうした性器外子宮内膜症について、どこにできやすいかをまとめた総説では、もっとも多い部位は腸管だとされています [2]。
だからこそ、「生理のときだけ強くなる下腹部の痛み」「排便のときに響くように痛む」といった、月経周期にきれいに連動する症状は、婦人科で相談する価値があります。周期との関係を自分で記録しておく(症状日記やカレンダーへのメモ程度でよい)と、診察でとても役に立ちます。
生理の前後に強くなる → 婦人科に相談
- 生理のときだけ強い下腹部痛
- 排便のときに響く痛みが周期的にある
- 生理が終わると自然に落ち着く
生理と関係なく続く → 消化器内科で確認
- 血便が続く
- 便が細い状態が続く
- 体重が理由なく減る
- 貧血を指摘された
- 月経が終わっても治らない
※ 迷ったら、どちらを受診しても大丈夫です。実際の判断は症状の経過とあわせて個別に行います。
一方で、周期と関係なく続く症状は、別に考える必要がある
ここで注意してほしいのは逆のパターンです。血便が出た、便が細い状態が続く、体重が理由もなく減ってきた、貧血を指摘された、月経が終わっても便通の乱れが戻らない——こうした症状が月経周期とは関係なく続く場合は、婦人科というより大腸側の病気を疑って確かめる話になります。血便は大腸がんでも起こりうる症状のひとつであり [5]、実際に大腸に何が起きているかを確認するには、大腸カメラで直接観察する検査が必要になります。
生理のたびに調子を崩すことに慣れてしまっていると、こうした「周期と関係ない変化」を見逃しやすくなります。実は、私たちが婦人科の診察で便通の相談を受けたときにまず切り分けているのも、この2つ——周期に連動する症状か、そうでないかという軸です。
婦人科と消化器内科、どちらに相談すればいいか
「お腹の症状だから婦人科ではなく消化器内科に行くべきでは」と迷う方も多いのですが、この振り分けについては当院のコラム「消化器内科と婦人科、どっちに行けばいい?」で詳しく整理しているので、そちらを参考にしてください。ざっくり言えば、月経周期にはっきり連動する痛みは婦人科から、周期と関係なく続く症状や血便・貧血など体全体に関わるサインがあれば消化器内科から、という考え方になります。どちらか判断がつかないときは、どちらを受診しても構いません。必要であれば、その場でもう一方の科につないでいきます。
子宮内膜症そのものについては「子宮内膜症とは」で詳しく扱っているので、あわせてご覧ください。当院は同じ建物の中に婦人科と消化器内科があり、女性医師である私自身も婦人科の診察にあたっています。横浜駅前で婦人科の女性医師に相談したい方へもご覧いただければと思います。大腸カメラを受けることへの抵抗感がある方には「大腸カメラが恥ずかしくて踏み出せない女性へ」でその不安についても書いていますので、あわせて読んでみてください。
受診の目安と、これから
目安として、月経のたびに強い腹痛や下痢・便秘があり生活に支障が出ている、鎮痛薬が効きにくくなってきた、血便や便が細い状態が続いている、原因不明の貧血を指摘された——このいずれかに当てはまるなら、一度相談してください。
当院では10月から12月にかけて、大腸カメラの予約が特に混み合う時期に入ります。気になる症状があるなら、年内に一度確かめておくと年明けを心配なく迎えられます。混み合う前の今のうちに検討していただければと思います(詳しくは「年末までに検査を終えるための逆算スケジュール」も参考にしてください)。
よくある質問
生理のたびに下痢になるのは、病気なんでしょうか?
多くの場合、それだけで病気とは限りません。海外の調査では健康な女性の73%が月経前後に何らかの消化器症状を経験しており、下痢もそのひとつとして報告されています [1]。ただ、生活に支障が出るほど強い、年々ひどくなっているという場合は、月経困難症や子宮内膜症などが背景にあることもあるため、一度相談してください。
生理中に血便のようなものが出たのですが、これは経血ではないのでしょうか?
経血が便に混じって見えることもありますが、月経周期と関係なく血便が続く場合や、量が多い・色が経血と明らかに違う場合は、大腸側の出血を考えて確認したほうが安心です。血便は大腸がんでも起こりうる症状のひとつとされており [5]、自己判断で様子を見続けるのは避けたいところです。
婦人科と消化器内科、どちらを先に受診すべき?
月経周期にはっきり連動する痛みなら婦人科、周期と関係なく続く症状や血便・貧血など体全体のサインがあるなら消化器内科が目安になります(詳しくは「消化器内科と婦人科、どっちに行けばいい?」)。判断に迷うときは、どちらを受診しても、必要に応じてもう一方につなぐので心配はいりません。
監修
横浜駅前ながしまクリニック 副院長 長島麻子(産婦人科)
参考文献
- Bernstein MT, Graff LA, Avery L, Palatnick C, Parnerowski K, Targownik LE. Gastrointestinal symptoms before and during menses in healthy women. BMC Womens Health. 2014;14:14. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3901893/
- Nezhat C, Li A, Falik R, et al. Bowel endometriosis: diagnosis and management. Am J Obstet Gynecol. 2018. https://europepmc.org/article/MED/29032051
- 女性の健康推進室 ヘルスケアラボ(厚生労働省研究班監修)「子宮内膜症」. https://w-health.jp/monthly/endometriosis/
- 女性の健康推進室 ヘルスケアラボ(厚生労働省研究班監修)「月経困難症」. https://w-health.jp/monthly/dysmenorrhea/
- 国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん」. https://ganjoho.jp/public/cancer/colon/index.html
