2026年05月18日
「生理のたびに鎮痛薬が手放せない」「年々、生理痛が重くなっている」「なかなか妊娠しない」──そんな悩みの裏に隠れているかもしれないのが 子宮内膜症 です。生殖年齢の女性のおよそ10人に1人が罹患するといわれる、決してまれではない病気ですが、初期は「ただの重い生理痛」と見過ごされやすく、診断までに平均4〜12年かかるとも報告されています。今回は、横浜駅前ながしまクリニックの産婦人科専門医が、症状・検査・治療の全体像をわかりやすくまとめます。

子宮内膜症とはどんな病気?
子宮の内側を覆う「子宮内膜」と似た組織が、本来あるはずのない場所(卵巣・腹膜・ダグラス窩・腸管・膀胱など)に生じてしまう病気です。これらの異所性組織も月経周期に合わせて増殖・出血を繰り返すため、慢性的な炎症と癒着を引き起こします。原因は完全には解明されていませんが、月経血が卵管から逆流して腹腔内に到達する「経血逆流説」が有力で、エストロゲン(女性ホルモン)に依存して進行することがわかっています。
特に卵巣にできるものは内部に古い血液がたまり、「チョコレート嚢胞」と呼ばれます。長期間放置するとまれに卵巣がん(明細胞癌・類内膜癌)のリスクが上がることも知られており、定期的な経過観察が欠かせません。
有病率
診断までの平均
合併割合
こんな症状なら要注意
代表的な症状は以下のとおりです。月経時だけでなく、月経以外の時期にも痛みが続く点が特徴です。
強い月経痛(月経困難症):鎮痛薬が効きにくい、年々悪化する
慢性骨盤痛:月経時以外にも下腹部や腰がずっと重い
性交痛・排便痛:ダグラス窩(子宮の裏側)や腸管に病変が及ぶと出やすい
過多月経・不正出血
不妊:原因不明不妊の背景にあることも多い
お腹の張り・吐き気・倦怠感
「鎮痛薬が必要な生理痛」は、医学的には月経困難症と呼ばれる立派な治療対象です。我慢を続けるほど病変は進行しやすいため、早めの相談をおすすめします。
どうやって診断する?
問診で月経歴・痛みの強さ・妊娠希望を伺ったうえで、以下を組み合わせて評価します。
経腟(または経直腸)超音波検査 ── 卵巣チョコレート嚢胞や子宮腺筋症の有無を確認
MRI 検査 ── 深部子宮内膜症(DIE)や癒着の広がりを評価
内診・直腸診 ── 圧痛・硬結の有無を直接触診
血液検査(CA125 など) ── 補助的に使用
腹腔鏡 ── 以前は「ゴールドスタンダード」とされましたが、現在のESHREガイドラインでは画像所見が陰性でも症状が強い症例に限定されます
当院では、まず非侵襲的な内診とエコーで全体像を把握し、必要に応じて連携先の高次施設でMRIや腹腔鏡を検討します。
治療の選択肢──症状と妊娠希望で決める
治療は「痛みのコントロール」「病変進行の抑制」「妊孕性(妊娠する力)の温存」の3点をどう優先するかで変わります。
薬物療法
NSAIDs(ロキソプロフェンなど):月経痛に対する第一選択
低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP/低用量ピル):排卵と月経量を抑え、痛みと進行を緩和
ジエノゲスト(ディナゲスト®):子宮内膜症の中心的治療薬。長期使用が可能
レボノルゲストレル放出子宮内システム(LNG-IUS/ミレーナ®):月経量と痛みの軽減に有効
GnRH アンタゴニスト(レルゴリクス/レルミナ®)/アゴニスト:強い病変・術前後に短期使用
手術療法
妊娠希望がある場合は病変のみを摘出する「温存手術」、症状が極めて重く挙児希望がない場合は子宮・卵巣の摘出を含む「根治手術」を検討します。手術適応や術式は病変の場所・大きさ・年齢・希望によって個別に決まります。
妊娠を希望する方へ
子宮内膜症があっても自然妊娠は十分可能ですが、卵管周囲の癒着や卵巣機能低下によって妊孕性が下がる場合があります。30代後半以降や半年〜1年の不妊期間がある場合は、早めに生殖医療の専門施設と連携した方針決定をおすすめします。
受診の目安
- 市販の鎮痛薬で効かない・回数が増えている生理痛
- 生理が来るたびに学校・仕事を休む
- 性交時や排便時の下腹部痛
- 月経以外の時期も続く骨盤の重さ・痛み
- 1年以上避妊せず妊娠しない(35歳以上は半年)
横浜駅前ながしまクリニックでは、産婦人科専門医が経腟エコー・内診・必要に応じた採血を行い、薬物療法(ピル、ジエノゲスト、IUS、GnRHアンタゴニストなど)の提案から高次医療機関への紹介まで一貫してサポートします。「ただの生理痛かも」と迷っている段階で、どうぞお気軽にご相談ください。
監修
横浜駅前ながしまクリニック 副院長 長島麻子(産婦人科専門医)
参考文献
Becker CM, et al. ESHRE guideline: endometriosis. Hum Reprod Open. 2022. PMID: 35350465
World Health Organization. Endometriosis Fact Sheet. 2023
公益社団法人 日本産科婦人科学会「子宮内膜症」
Mindsガイドラインライブラリ「産婦人科診療ガイドライン-婦人科外来編2023」
Kalaitzopoulos DR, et al. Advances in the diagnosis and management of endometriosis: A comprehensive review. 2025. PMID: 39808858
厚労省研究班監修 女性の健康推進室ヘルスケアラボ「子宮内膜症」
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