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PMS(月経前症候群)・PMDDとは?イライラ・落ち込み・むくみの原因と治療法を産婦人科専門医が解説

2026年05月14日

「生理前になると、毎月決まってイライラする」「涙が止まらず、自分でも自分が分からなくなる」「胸が張ってむくみがひどい」――こうした症状が月経のたびに繰り返されているなら、それは月経前症候群(PMS)や、より重症型の月経前不快気分障害(PMDD)かもしれません。気合や我慢の問題ではなく、ホルモン変動に伴う医学的な不調であり、治療によって大きく改善できます。本記事では、診断のポイントと当院で行える治療をわかりやすく解説します。

PMSとPMDDの違い

日本産科婦人科学会の定義では、PMSは「月経開始の3〜10日前の黄体期に続く精神的あるいは身体的症状で、月経開始とともに減弱あるいは消失するもの」とされています。一方、精神症状(強い抑うつ・不安・怒り)が際立ち、日常生活や対人関係に支障をきたすほど重い場合はPMDDと診断され、米国精神医学会の診断基準(DSM-5-TR)に従って評価します。

仙台地域の高校生を対象とした国内調査では、中等度以上のPMSが11.3%、PMDDが3.2%に認められたと報告されています。2024年に発表された国際的なメタアナリシスでも、確定診断によるPMDDの有病率は約1.6%、暫定診断を含めれば3.2%とされ、決してまれな病気ではありません。

11.3%
日本人女子高生の
中等度以上PMS
3.2%
日本人女子高生の
PMDD
1.6%
世界のPMDD
(確定診断)

なぜ起こるのか――黄体ホルモンと脳の関係

PMS/PMDDの患者さんでは、卵巣から分泌されるホルモンの値そのものは正常範囲のことが多いと分かっています。問題はホルモン量ではなく、ホルモン変動への脳の感受性にあります。排卵後に増えるプロゲステロン(黄体ホルモン)の代謝産物が、脳内の神経伝達物質GABAやセロトニンの働きに影響し、気分の不安定さを生むと考えられています。

つまり「気の持ちよう」ではなく、脳が黄体期のホルモン変動に過敏に反応している状態です。ストレス、睡眠不足、カフェイン・アルコール、運動不足などが症状を悪化させます。

①月経期(1〜5日)
症状はほぼ消失
②卵胞期
体調の良い時期
③排卵
ホルモン切り替わり
④黄体期(PMS発症)
月経3〜10日前から症状ピーク

診断――2か月以上の症状日記が鍵

PMS/PMDDの診断で最も大切なのは、症状が黄体期(排卵後〜月経開始)に出て、月経開始数日以内に消えるというパターンを確認することです。そのためには2か月以上の症状日記(または市販のアプリ)が有用です。

うつ病や不安障害は月経周期と無関係に症状が続く一方、PMS/PMDDは「月経が来ると嘘のように楽になる」という特徴があります。逆に月経中も症状が続く場合は、別の精神疾患や甲状腺機能異常、貧血なども鑑別が必要です。

治療の選択肢

1. 低用量ピル(特にドロスピレノン配合)

排卵を抑え、ホルモン変動の波そのものを小さくすることで、PMSの身体症状・精神症状の両方を軽減します。中でもドロスピレノン/エチニルエストラジオール配合錠(24/4レジメン)は、ネットワークメタアナリシスでも最も有効性が示されている経口避妊薬の組み合わせです。月経痛・過多月経・ニキビにも効果があり、避妊効果も得られます。

2. SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)

精神症状が強いPMDDには、抗うつ薬の一種であるSSRIが第一選択となります。うつ病に使うときと違い、服用後数日で効果が現れるのが特徴で、毎日服用する方法のほか、黄体期だけ服用する間欠投与も選択肢になります。2024年のコクランレビューでは、SSRIの継続投与が間欠投与よりやや有効と報告されています。

3. 漢方薬

ホルモン療法に抵抗のある方や、軽症〜中等症の方には漢方が選択肢になります。イライラ・不眠が強い場合は加味逍遙散、むくみ・冷え・頭痛には当帰芍薬散、のどのつかえ感や不安感には半夏厚朴湯などを体質に合わせて使い分けます。

4. 生活習慣の調整

規則正しい睡眠、有酸素運動(週3回程度のウォーキングなど)、カフェイン・アルコール・塩分の控えめな食事、カルシウムやビタミンB6を意識した食事は、エビデンスが報告されている補助療法です。

どんな症状が中心? 治療選択の目安
身体症状
(むくみ・乳房痛・頭痛)
低用量ピル
(ドロスピレノン配合)
精神症状
(強いイライラ・抑うつ)
SSRI
(必要に応じピル併用)
軽症 / 体質改善志向
漢方薬
+ 生活習慣改善

こんなときは婦人科を受診してください

⚠️ 受診を検討するサイン
  • 月経前の不調で仕事・学校を休んだことがある
  • 家族やパートナーとの関係がぎくしゃくする
  • 市販薬や我慢では対処しきれない
  • 月経痛・過多月経も併存している

腹部の張りや痛みが月経と関係なく続く場合は、消化器系の疾患も視野に入れる必要があります。詳しくは 腹痛の原因は!?部位別チェックガイド|図でわかる原因疾患と受診の目安 をご覧ください。

当院では問診と症状日記をもとに、低用量ピル・漢方・SSRI(必要に応じて精神科連携)から、その方に合った治療を一緒に選びます。婦人科は内診ありきの場所ではありません。PMS/PMDDの初診は問診中心で、内診なしで治療を開始できるケースも多くあります。「相談だけ」でも構いませんので、毎月の不調を一人で抱え込まず、ぜひ一度ご相談ください。


監修

横浜駅前ながしまクリニック 副院長 長島麻子(産婦人科専門医)

参考文献

  1. Reilly TJ, et al. The prevalence of premenstrual dysphoric disorder: Systematic review and meta-analysis. J Affect Disord. 2024;349:534-540. PMID: 38199397
  2. Marjoribanks J, et al. Selective serotonin reuptake inhibitors for premenstrual syndrome and premenstrual dysphoric disorder. Cochrane Database Syst Rev. 2024. PMID: 39140320
  3. 日本産科婦人科学会 女性ヘルスケア委員会. 月経前症候群・月経前不快気分障害(PMS・PMDD)に対する診断・治療指針. 2023-2024年度.
  4. 日本産婦人科医会. (2)月経前症候群(PMS:premenstrual syndrome). 産婦人科診療ガイドライン.

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