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夏の下痢は食中毒だけじゃない?熱中症との見分け方

2026年08月14日

夏の下痢は食中毒だけじゃない?熱中症との見分け方

外来で「お腹を壊して、力も入らなくて」と来られる方が、この時期は増えます。問診をすると、必ずしも食あたりとは限りません。熱中症でも下痢や吐き気は起こりうるからです。「夏の下痢=食中毒」と決めつけて様子を見ていると、実は熱中症が進行していた、ということもあります。どんな手がかりで見分けるか整理します。

熱中症対策と食中毒予防の対比イメージイラスト

熱中症でも下痢は起こる――「軽症」で片づけない

環境省の熱中症環境保健マニュアルでは、熱中症を「暑熱障害による症状の総称」として扱っています。暑い環境にさらされたあとの体調不良は、すべて熱中症の範囲に入りうるのです。

重症度は3段階です。軽症(I度)は、めまいや立ちくらみ、生あくび、大量の発汗、こむら返りなどで、意識ははっきりしており現場対応で済みます。中等症(II度)は、頭痛、嘔吐、倦怠感、虚脱感、集中力や判断力の低下に加え、脱力や吐き気、そして下痢が見られます。下痢が含まれる点は見落とされがちです。重症(III度)は中枢神経症状や肝・腎機能障害、血液の凝固異常などを伴い、入院しての集中治療が必要になります。

軽症(I度)
めまい・立ちくらみ・生あくび・大量の発汗・こむら返り
意識障害なし/現場での応急処置で対応

中等症(II度)
頭痛・嘔吐・倦怠感・虚脱感・集中力や判断力の低下
脱力・吐き気・下痢/病院への搬送が必要

重症(III度)
中枢神経症状・肝腎機能障害・血液凝固異常など
入院しての集中治療が必要

出典:環境省「熱中症環境保健マニュアル2022」II-1(表2-1は日本救急医学会 熱中症診療ガイドライン2015を改変)

問診でまず確認するのは、症状が出る前にどんな環境にいたか、水分や塩分をとれていたかです。炎天下での作業やスポーツのあと、冷房なしで過ごした室内での下痢や吐き気は、食あたりより先に熱中症を疑います。

食中毒は「いつ食べたか」から逆算できる

一方の食中毒は、原因菌ごとに潜伏期間の傾向があります。東京都保健医療局によると、代表的な菌ではおおよそ次のような幅です。

黄色ブドウ球菌
30分〜6時間
(平均約3時間)
はき気・おう吐・腹痛

腸炎ビブリオ
8〜24時間
(短い場合は2、3時間)
激しい腹痛・下痢

サルモネラ属菌
6〜72時間
 
腹痛・下痢・おう吐・発熱(38〜40℃)

カンピロバクター
1〜7日
(潜伏期間が長い)
発熱・倦怠感・頭痛・筋肉痛のあと腹痛

出典:東京都保健医療局「食品衛生の窓」各原因菌ページ

「昨日食べたものが怪しい」と思っても、菌によっては数日前の食事が原因のこともあります。原因菌ごとの詳しい症状や予防は夏に急増する細菌性胃腸炎──暑さと湿気が招く"食中毒シーズン"の乗り切り方にまとめています。厚労省統計では令和7年の食中毒は1,172件・24,727人で、令和5年以降、細菌が原因の事件は例年6〜9月に増える傾向です。

見分けの手がかりは症状より「状況」

熱中症と食中毒は、下痢や吐き気という症状だけでは区別がつきません。問診で重視しているのは、症状そのものより前後の状況です。

暑い場所に長時間いたか、水分や塩分を十分にとれていたか。めまいや立ちくらみ、こむら返りといった前兆が先にあったか。一緒に食事をした人にも同じ症状が出ているなら、食中毒の可能性が高まります。家族や同僚で症状が重なるかは見落とされがちな手がかりです。何を、いつ食べたかを潜伏期間と照らし合わせるのも役立ちます。涼しい場所で水分と塩分をとって休み症状がやわらぐなら、熱中症の関与を考えます。食中毒は環境を変えるだけでは改善しにくいためです。

すぐ受診・救急を考えるサイン

環境省のマニュアルは、重症度を判断するうえで「意識がしっかりしているか」「水を自分で飲めるか」「症状が改善したか」の3つを挙げています。少しでも意識がおかしければII度以上とみなし、搬送が必要です。

こんな症状なら早めの受診・救急要請を
  • 意識がおかしい、呼びかけへの反応が鈍い
  • 自分で水が飲めない、飲んでも改善しない
  • 嘔吐を繰り返して水分すら受けつけない
  • 黒っぽいタール状の便が出た
  • 高熱が続く
  • 強い腹痛でお腹を丸めていないとつらい

消化器の側から見ても、これらは共通して受診を急いでほしいサインです。熱中症か食中毒かを自分たちで見極めようとせず、早めに医療機関を受診してください。

長引く下痢は「夏のせい」で片づけない

熱中症も食中毒も、多くは数日から1週間程度で落ち着きます。ただ、涼しい場所で休んでも改善しない、下痢が2週間以上続く、血便が出る、体重が減った、健診で貧血を指摘された――こうしたときは、感染性胃腸炎ではなく大腸の別の病気を考えます。炎症性腸疾患や大腸ポリープ、大腸がんは下痢や腹痛が長引く形で見つかることがあり、横浜の大腸カメラで粘膜を確認しないと区別がつきません。国立がん研究センターの統計では大腸がんは2023年に15万例以上診断されており、珍しい病気ではありません。

嘔吐が長引く、黒色便のように上部消化管からの出血が疑われるときは、横浜の胃カメラ(経鼻・鎮静剤対応)での確認が必要になることもあります。腹痛の場所から疑う病気を整理したい方は腹痛の原因は!?部位別チェックガイドもあわせてご覧ください。

日常でできること

夏の体調管理は、特別なことより基本の積み重ねです。喉が渇く前にこまめに水分と塩分をとる、屋外作業やスポーツでは休憩をはさむ。食品は室温に放置せず、肉や魚介類はしっかり加熱し、調理器具は生ものと調理後で使い分ける。体調が優れないときは無理をせず涼しい環境で休み、改善しないなら早めに相談してください。横浜駅前ながしまクリニックは横浜駅から徒歩圏内にあり、お仕事帰りにもご相談いただけます。


監修

横浜駅前ながしまクリニック 院長 長島周平(内科認定医、日本消化器病学会専門医、日本内視鏡学会専門医、日本肝臓学会専門医)

参考文献

  1. 環境省熱中症予防情報サイト「熱中症環境保健マニュアル2022」II-1 どんな症状があるのか(PDF・p.20/表2-1の出典:日本救急医学会 熱中症診療ガイドライン2015を改変)
  2. 東京都保健医療局「食品衛生の窓」黄色ブドウ球菌
  3. 東京都保健医療局「食品衛生の窓」腸炎ビブリオ
  4. 東京都保健医療局「食品衛生の窓」サルモネラ属菌
  5. 東京都保健医療局「食品衛生の窓」カンピロバクター・ジェジュニ/コリ
  6. 厚生労働省「令和7年食中毒発生状況の概要」(第9回厚生科学審議会食品衛生監視部会 資料1-1、令和8年3月25日)
  7. 国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん(結腸がん・直腸がん)の統計」(罹患数2023年:154,039例)

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