家族に大腸がん・胃がんの人がいます――自分は何歳から検査を受けるべきか|横浜市横浜駅前の消化器内科・婦人科・内科|横浜駅前ながしまクリニック

〒221-0835神奈川県横浜市神奈川区鶴屋町2-11-8 4階

045-534-8147

Instagram 予約はこちらから LINE

家族に大腸がん・胃がんの人がいます――自分は何歳から検査を受けるべきか

2026年09月13日

家族に大腸がん・胃がんの人がいます――自分は何歳から検査を受けるべきか

秋は健康診断や人間ドックの案内が届く時期で、その封筒を見て「そういえば父が大腸がんだった」と実家の病歴を思い出し、外来で相談される方が毎年一定数います。当院のブログでは以前、何歳から胃カメラ・大腸カメラを受けるべきかという年代別の目安を紹介しました。ただあの目安は、家族にがんの既往がない、平均的なリスクの方を前提にしています。家族歴があると、この前提が変わってきます。今日はその場合の考え方を整理します。

大腸がんの家族歴は、リスクをどれくらい上げるのか

海外の系統的レビュー・メタ解析によると、一親等(親・きょうだい・子)に大腸がんの人が1人いる場合、相対リスクはコホート研究で1.37倍、症例対照研究で1.92倍という報告があります。2人以上いる場合や、50歳未満で診断された一親等がいる場合はさらに上がり、症例対照研究では3倍を超える数字も出ています [1]。

数字だけ見ると身構えてしまいますが、私が診療で大事にしているのは、倍率(相対リスク)よりも、実際に何%の人がなるかという確率のほうです。同じメタ解析では、85歳までに大腸がんになる生涯リスクは、一親等に1人いる場合で4.8%程度、2人以上いる場合で8.2%程度と推計されています [1]。倍率だけ見ると怖く感じますが、実際の確率としては「多くの人はならない」水準にとどまるとも言えます。なお、これは西ヨーロッパを想定した推計であり、日本人でそのまま同じ数字になるかは未確認です。

「家族に多い」に見えても、遺伝性が疑われるのは一部

家族歴のすべてが遺伝性というわけではありません。ただ、家族性大腸腺腫症やリンチ症候群という遺伝性の病気があり、こうした家系では近親者に大腸がんが多く発生することが知られています [2]。若くして診断された方が一親等に複数いる、何世代にもわたってがんが出ている、といった場合は通常の検診とは別に専門的な管理が必要になることがあります。当てはまるかもしれないと思ったら申し出てください。

家族歴を確認するときのチェック項目
  • 続柄(親・きょうだい・子など一親等かどうか)
  • 診断されたときの年齢(50歳未満かどうか)
  • がんの部位(大腸がん・胃がんか、それ以外か)
  • 同じ系統に何人いるか(1人か、2人以上か)

胃がんの家族歴は、大腸がんとは事情が違う

一方、胃がんは大腸がんほど「家族歴そのもの」が独立したリスク指標として整理されていません。主なリスク要因はピロリ菌感染と喫煙で、塩分の多い食事もリスクを高める可能性があるとされています [3]。

見落とされがちなのが、ピロリ菌は主に幼少期に口から感染し、家庭内感染も経路の一つと考えられている点です [4]。つまり「親が胃がんだった」という事実そのものより、「親から自分にうつっている可能性がある」という側面のほうが実務的には重要になります。除菌でリスクは下がりますがゼロにはならず、除菌歴がある方も内視鏡での経過観察が勧められています [4]。親や祖父母が胃がん・ピロリ菌陽性だったと聞いている方は、まず自分のピロリ菌の有無を調べるところから始めるのが理にかなっています。

大腸がんの家族歴

  • 家族歴そのものがリスク指標として整理されている
  • 人数・診断年齢で目安が変わる
  • 一部は遺伝性(リンチ症候群など)が疑われる

胃がんの家族歴

  • 家族歴単独のリスク指標としては未整理
  • 意味を持つのはピロリ菌の家庭内感染
  • まず自分のピロリ菌の有無を確認するのが実務的

では、自分はいつ・どの検査を受ければいいのか

大腸がんの対策型検診は40歳以上を対象に、年1回の便潜血検査が基本の目安です [2]。ただし家族歴がある方について、日本国内で「内容ごとに何歳から受けるべきか」を一律に定めたガイドラインは、私が確認した範囲では見当たりませんでした。この点は未確認としておきます。そのため当院では、便潜血検査の結果を待たず、家族歴がはっきりしている方には年齢の目安にかかわらず一度相談していただき、必要に応じて大腸カメラでの直接観察を検討しています。

胃がんの対策型検診は50歳以上・2年に1回で、胃部X線か胃内視鏡のいずれかとされています [3]。家族にピロリ菌感染や胃がんの既往がある方は、この年齢を待たずピロリ菌検査から始めることをおすすめします。除菌が終わっていても胃がんのリスクがゼロにはならない以上、ピロリ菌除菌後も胃カメラが必要な理由で触れている継続観察の考え方は、家族歴がある方にも当てはまります。

年内に検査を済ませておきたいなら、繁忙期に入る前の秋のうちに動いておくと予約も取りやすいというのが、この時期にお伝えしている実務的な理由です。

年齢の目安を待たず相談してほしいケース
  • 一親等に大腸がんの人が2人以上いる
  • 50歳未満で大腸がん・胃がんと診断された家族がいる
  • 親や祖父母が胃がん・ピロリ菌陽性だったと聞いている
  • 健診の便潜血検査や胃の検査を一度も受けたことがない

なお、大腸がんの症状は大腸がんの初期症状とは?見分け方と検査のタイミング、便潜血陽性後の考え方は健診で便潜血陽性と言われたら、胃がんの初期症状は胃がんの初期症状とは|見逃しやすいサインと検診の目安で扱っています。本記事は症状が出る前、無症状の段階で「いつ動くか」を判断するための内容なので、気になる症状がすでにある方はそちらもご覧ください。おなかの痛みの部位から考えたい方は腹痛の原因を部位別に解説|考えられる病気と受診の目安も参考にしてください。

当院では消化器内視鏡を専門とする院長が胃カメラ大腸カメラを担当し、必要に応じて鎮静剤を使います。横浜駅きた西口から徒歩約3分で当日検査にも対応していますので、家族歴が気になる方は年齢の目安にとらわれず相談してください。

よくある質問

親が大腸がんだと、自分もなりやすいのでしょうか。
一親等に大腸がんの方が1人いる場合、相対リスクはコホート研究で1.37倍、症例対照研究で1.92倍という報告があります。85歳までの生涯リスクは一親等に1人で4.8%程度、2人以上で8.2%程度と推計されており(西ヨーロッパを想定した推計で、日本人で同じ数字になるかは未確認です)、倍率は上がるものの多くの人はならない水準にとどまるとも言えます。

親が胃がんだった場合、まず何をすればいいですか。
ピロリ菌は主に幼少期に口から感染し、家庭内感染も経路の一つと考えられています。そのため「親が胃がんだった」という事実より、自分にうつっている可能性のほうが実務的には重要です。まず自分のピロリ菌の有無を調べ、除菌後もリスクはゼロにならないため内視鏡での経過観察が勧められます。

家族歴がある場合、何歳から検査を受ければいいですか。
対策型検診は大腸が40歳以上・年1回の便潜血検査、胃が50歳以上・2年に1回が目安です。家族歴がある方向けに国内で年齢を一律に定めたガイドラインは、確認した範囲では見当たらず未確認です。当院では家族歴がはっきりしている方には年齢の目安にかかわらず一度相談していただき、必要に応じて大腸カメラを検討しています。


監修

横浜駅前ながしまクリニック 院長 長島周平(内科認定医、日本消化器病学会専門医、日本内視鏡学会専門医、日本肝臓学会専門医)

参考文献

  1. Roos VH, et al. Effects of Family History on Relative and Absolute Risks for Colorectal Cancer: A Systematic Review and Meta-Analysis. Clin Gastroenterol Hepatol. 2019 Dec;17(13):2657-2667.e9. PMID: 31525516. https://europepmc.org/article/MED/31525516
  2. 国立研究開発法人国立がん研究センター がん情報サービス. 大腸がん 予防・検診. https://ganjoho.jp/public/cancer/colon/prevention_screening.html
  3. 国立研究開発法人国立がん研究センター がん情報サービス. 胃がん 予防・検診. https://ganjoho.jp/public/cancer/stomach/prevention_screening.html
  4. 日本ヘリコバクター学会. ピロリ菌に関するQ&A. https://www.jshr.jp/citizen/info/question.html

関連記事

TOP