2026年09月01日
外来で家族の方からよく聞かれるのが、「実家の親に健診で要精密検査と出たけれど、この年齢で胃カメラや大腸カメラを受けさせても大丈夫でしょうか」という相談です。健診結果が届く秋から冬にかけて、このご相談は増えます。
結論を先に書くと、年齢だけを理由に検査をあきらめる必要はありません。ただ、若い世代とまったく同じに考えていいわけでもない、というのが正直なところです。
高齢の親でも胃カメラ・大腸カメラは何歳まで受けられますか?
制度としての年齢の上限は定められていません。ただ実際に受けるかどうかは、本人の状態を踏まえて判断します。
国立がん研究センターが示す対策型がん検診の対象年齢は、胃がん検診が50歳以上、大腸がん検診が40歳以上というように下限が決められているだけで、上限についての記載はありません [1]。横浜市のがん検診にも、年齢の上限は設定されていません [4]。当院で実施している横浜市の検診は大腸がん検診(便潜血)・特定健診・子宮がん検診・前立腺がん検診(PSA)で、胃がん検診と肺がん検診は当院では扱っておりません(横浜市自体は実施しています)。ただ胃カメラそのものは、保険診療や人間ドックのオプションとして年齢に関係なく受けていただけます。何歳から胃カメラ・大腸カメラを受けるべきかも参考にしてください。
高齢だと内視鏡検査のリスクは若い世代と違うのですか?
検査全体で見ると偶発症の頻度自体はごくまれです。ただ、重篤な例や死亡例は高齢の方に偏って現れやすい傾向が報告されています。
日本消化器内視鏡学会の第7回全国調査(2019〜2021年)では、合計246,627件の内視鏡検査のうち偶発症は668件(0.271%)、死亡例は8件(0.0003%)でした [2]。数字だけを見ればごくまれです。ただ同じ報告は、「死亡例の平均年齢は治癒軽快例に比して高かった」「後ろ向き調査においても重篤な偶発症を来した症例の多くは高齢者であった」とも記しています [2]。リスク自体は小さくても、そのリスクは高齢の方に偏って現れやすい。だから私たちは、年齢という一つの数字だけで判断するのではなく、もう少し細かく状況を見るようにしています。
受けるかどうかは何をもとに判断すればいいですか?
実際に外来で確認しているのは、主に4つです。
一つ目は検査の目的です。便潜血陽性で要精密検査となった場合や、原因不明の体重減少・血便などの症状がある場合は、無症状のドックより優先度が高くなります(健診で便潜血陽性と言われたら、ダイエットしていないのに体重が減るもご参照ください)。二つ目は全身状態と持病、とくに心肺機能や通院・歩行の状況です。三つ目は服薬で、血液をサラサラにする薬(抗血栓薬)を飲んでいる方は休薬の要否を事前に確認します(抗血栓薬と内視鏡検査)。四つ目は、もし何か見つかったとき本人がどこまでの治療を望むかです。国立がん研究センターは、がん検診の不利益として偽陰性・偽陽性・過剰診断・偶発症の4つを挙げています [1]。積極的に調べたい方もいれば、この年齢で治療までは望まないという方もいます。受けないという選択も、本人の意思として尊重されるべきものです。
四つの確認ポイントを表にまとめました。
| 確認するポイント | 具体的な内容 |
|---|---|
| ①検査の目的 | 要精密検査・症状の有無・無症状のドックかで優先度が変わる |
| ②全身状態と持病 | 心肺機能や通院・歩行の状況 |
| ③服薬 | 抗血栓薬などを飲んでいる場合は休薬の要否を事前に確認 |
| ④本人が望む治療の範囲 | 見つかったときどこまでの治療を望むか(受けない選択も尊重) |
大腸カメラの前処置(下剤)は高齢だと大変なのですか?
若い方でも楽な工程ではありませんが、高齢の方は指定量を飲みきるのがつらかったり、トイレへの移動に介助が要ったりすることがあります。
大腸カメラには、腸の中を空にするための下剤を前日から当日にかけて飲む工程があります。若い方でも楽ではありませんが、高齢の方は指定量を飲みきるのがつらかったり、効き始めてからのトイレへの移動に介助が要ったりすることがあります。飲み方の工夫は大腸カメラの下剤がつらい方へにまとめています。なお当院の大腸カメラ検査は、まず外来で問診・診察を受けたうえで検査日を予約する2段階の流れで、当日いきなり検査を受けることはできません。
鎮静剤を使うかどうかは何で決まりますか?
高齢だから使えない、あるいは一律に使うべき、というものではなく、そのつど個別に判断します。
検査中の負担を減らす方法に、鎮静剤を使ってうとうとした状態で受ける方法があります。日本消化器内視鏡学会のガイドラインは、鎮静について「個々の患者の希望,年齢,合併症,社会的状況,施設の事情や医師の裁量権によって柔軟に対応する必要がある」としています [3]。高齢だから使えない、あるいは一律に使うべき、というものではなく、そのつど個別に判断するものです。詳しくは鎮静剤でうとうとしたまま受ける胃カメラ・大腸カメラをご覧ください。
精密検査の費用を助成してもらえる制度はありますか?
要精密検査となった方向けに、横浜市には精密検査費用を助成する制度があります。
令和8年度中に65歳以上(昭和37年4月1日以前生まれ)などが対象で、対象検診は胃がん・大腸がん・肺がん・乳がん・子宮頸がん検診とPSA検査、人間ドックは対象外です [5]。申請手続きや助成される金額の細かい部分はこちらでは把握しきれていないため、この記事では触れません。該当しそうな場合は横浜市のページで最新の内容をご確認ください。
検査前にご家族が準備しておくとよいことはありますか?
お薬手帳、これまでの健診結果表、既往歴・手術歴、当日の付き添いの段取りを準備しておくとスムーズです。
検査の予定を立てる段になると、お薬手帳(抗血栓薬や糖尿病薬の有無)、これまでの健診結果表、既往歴・手術歴、当日の付き添いの段取りを準備しておくとスムーズです。移動や着替えに介助が必要な方は、付き添いを誰がいつ担当するかを早めに決めておくと当日の負担が減ります。
いつ相談すれば年内に検査まで進めやすいですか?
10月から12月がもっとも混み合う時期にあたるため、秋のうちにご相談いただくと年内のうちに精密検査まで終えやすくなります。
10月から12月は横浜市のがん検診がもっとも混み合う時期で、当院の内視鏡の検査枠も一年でいちばん増やす時期です。「要精密検査」の通知は結果が出てから届くまで1か月ほどかかることも珍しくなく、そこから受診・予約となると年末が近づくほど日程の調整が難しくなります。年末年始に帰省して親御さんの様子が気になってから動き出すと、検査の枠がすでに埋まっていることもあります。秋のうちにご相談いただければ、年内のうちに精密検査まで終えやすくなります。
秋にご相談いただいた場合の大まかな流れを表にまとめました。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 9〜11月ごろ | 健診結果・「要精密検査」の通知が届く |
| 秋のうち | 外来で相談 |
| 秋〜年末にかけて | 検査の予約 |
| 年内 | 検査を実施 |
横浜駅前ながしまクリニックの胃カメラ・大腸カメラはどんな検査ですか?
胃カメラは経口・経鼻を選べ、鎮静剤にも対応しています。緊急の内視鏡にも毎日対応していますので、症状が急に出た場合はご連絡ください。胃カメラ検査のページに検査の流れをまとめています。費用の目安は胃カメラ・大腸カメラの費用はいくら?、はじめて受ける方は初めての胃カメラ完全ガイドもあわせてご覧ください。
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よくある質問
高齢の親でも胃カメラ・大腸カメラは受けられますか?
がん検診の対象年齢に上限は設けられておらず [1][4]、年齢そのものを理由に検査ができないということはありません。ただ実際に受けるかどうかは、全身状態や持病、服薬の内容、本人の希望を踏まえて医師と相談しながら判断します。
本人が検査を嫌がったらどうすればいい?
無理に受けさせる必要はありません。受けないという選択も、本人の意思として尊重されるものです。国立がん研究センターは、がん検診の不利益として偽陰性・偽陽性・過剰診断・偶発症の4つを挙げています [1]。心配な症状があるかどうかを確認したうえで、あらためて相談する形でも構いません。
高齢だと大腸カメラの下剤がとくに大変って本当ですか?
大腸カメラの前処置では下剤を飲んでいただく必要があり、高齢の方は指定量を飲みきるのがつらかったり、トイレへの移動に介助が要ったりすることがあります。事前にどんな流れになるか聞いておくと、当日ご家族も慌てずに済みます。
監修
監修:横浜駅前ながしまクリニック 院長 長島周平(内科・消化器内科)
