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健診で「貧血」と言われたら|鉄剤を飲む前に、胃と大腸を調べたほうがよい人

2026年09月01日

健診で「貧血」と言われたら|鉄剤を飲む前に、胃と大腸を調べたほうがよい人

秋は健康診断や人間ドックの結果が返ってくる時期です。血圧やコレステロールは気にするのに、貧血の欄は「昔から低いので」と流されがちで、外来には何年分もの結果を束にして持ってこられる方がいます。ただ貧血は、数値そのものより「なぜそうなったのか」のほうが大事な項目です。

健診の「貧血」の項目では、何を調べているのですか?

血色素量(ヘモグロビン)と赤血球数を測定し、貧血の有無を確認しています。ただし、健診の数値だけでは、なぜ貧血になったのかまではわかりません。

労働安全衛生規則第44条にもとづく定期健康診断の項目には、貧血検査として血色素量(ヘモグロビン)と赤血球数の測定が含まれています [1]。ヘモグロビンは赤血球の中で酸素を運ぶたんぱく質で、この量が減った状態が貧血です [2]。

押さえておきたいのは、健診でわかるのは「貧血がある」ところまでで、その理由は判定できないという点です。原因を決めるのは、そのあとの検査になります。

鉄が足りない場合、なぜ消化管の検査が必要なのですか?

男性や閉経後の女性の鉄欠乏性貧血では、消化管からの出血が背景にあることが少なくないためです。国内外のガイドラインでも、胃と大腸の両方を調べる内視鏡検査が標準的な評価法とされています。

日本で最も多い貧血は鉄欠乏性貧血です。鉄が足りなくなる理由には食事の偏りや月経による喪失もありますが、消化管から少しずつ出血している場合があります。

英国消化器病学会(BSG)の2021年のガイドラインには、鉄欠乏性貧血をきたした男性と閉経後女性のおよそ3分の1に基礎疾患があり、その多くは消化管に見つかると記載されています。そのうえで、上部消化管(胃カメラ)と下部消化管(大腸カメラ)の両方を調べる双方向内視鏡が標準的な検査だとされています [3]。米国消化器病学会(AGA)の2020年のガイドラインも、男性と閉経後女性の鉄欠乏性貧血では双方向内視鏡を主たる評価手段として推奨しています [4]。

鉄剤を飲めば数値は戻ります。ただ出血源が残っていれば、やめたころにまた下がる。私たちが「鉄剤より先に原因を」とお伝えするのは、そのためです。

消化管を調べたほうがよいかどうかの目安を、表にまとめました。

まず鉄剤で様子を見ることが多い場合 消化管を調べたほうがよい場合
月経のある年代の女性で、経血量が多い自覚がある 男性の鉄欠乏性貧血
極端な減量や偏食など、鉄の摂取不足の心当たりがはっきりしている 閉経後の女性の鉄欠乏性貧血
便の色・太さの変化や体重減少がない 鉄剤で改善しない、あるいは中止すると再び下がる
黒い便・血便・体重減少・便の狭小化を伴う

出典:英国消化器病学会(BSG)2021年ガイドライン [3]、米国消化器病学会(AGA)2020年ガイドライン [4]をもとに作成。一般的な考え方の整理であり、実際の判断は年齢・症状・検査値をあわせて個別に行います。

内視鏡検査では、具体的に何を調べているのですか?

胃潰瘍・十二指腸潰瘍、萎縮性胃炎、大腸ポリープ、そしてがんなど、出血を起こしうる病変を探しています。

国立がん研究センターは、胃がんについて「早期の段階では自覚症状がほとんどなく、かなり進行しても症状がない場合もあります」とし、がんからの出血で貧血や黒い便が出ることがあると説明しています [5]。大腸がんでも早期はほとんど無症状で、慢性的な出血による貧血の症状(めまいなど)が挙げられています [6]。

気をつけたいのは右側の大腸です。国立がん研究センター中央病院は、便がまだ水様の盲腸・上行結腸・横行結腸にできた大腸がんでは腹部症状が目立たないことが多く、貧血や腹部のしこりで発見されることがあると述べています [7]。血便が出ていないから大丈夫、とは言い切れません。

女性の貧血は、月経が原因と決めつけていいのですか?

月経のある年代の女性では過多月経や子宮筋腫が背景にあることが実際に多く、まず婦人科で相談していただく意味は十分あります。ただ、それだけで消化管を確認しなくてよいとは限りません。

婦人科側に原因が見つかったことと、消化管が正常であることは別の話です。年齢や、便の色・太さの変化、体重の減少、家族歴などによっては、並行して胃と大腸も確認します。どちらの科から相談すればよいか迷う方は、消化器内科と婦人科、どっちに行けばいい?もあわせてご覧ください。

なお、鉄分の摂り方や夏場に貧血が出やすい理由については夏場に起こりやすい貧血の原因と対処法で扱っています。

どんな症状があれば、消化管の検査を検討したほうがいいですか?

便が黒い・赤いものが混じる、鉄剤を飲んでも数値が改善しない、体重が減ってきた――こうしたサインが重なるほど、消化管を一度見ておく価値は高くなります。

  • 便が黒い、あるいは赤いものが混じる
  • 鉄剤を飲んでも数値が上がらない、やめると下がる
  • 体重が減ってきた
  • 便が細くなった、残便感が続く
  • 男性、または閉経後の女性で貧血を指摘された
  • 親やきょうだいに胃がん・大腸がんの人がいる

おなかの痛みがある方は腹痛の原因を部位別に解説|考えられる病気と受診の目安も参考になります。

横浜駅前ながしまクリニックでは、貧血の精査をどのように受けられますか?

横浜駅から徒歩3分の当院で、鎮静剤を使った胃カメラ・大腸カメラの両方に対応しています。条件が合えば同じ日にまとめて受けていただくことも可能です。

当院は横浜駅から徒歩3分で、胃カメラ大腸カメラともに鎮静剤を使った検査に対応しています。条件が合えば同じ日にまとめて受けていただくこともできます。血をさらさらにする薬を飲んでいる方は、抗血栓薬と内視鏡検査のページもご確認ください。

10月から12月はがん検診と人間ドックが重なり、内視鏡の枠が埋まりやすい時期です。健診結果が手元に届いた9月から10月のうちにご相談いただくと、年内に精査まで終えやすくなります。

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よくある質問

鉄剤を飲んで数値が戻れば、検査はしなくていい?

数値が戻ったことと、出血源がなくなったことは別です。とくに男性と閉経後の女性では、原因を確認しないまま鉄剤だけを続ける形は勧められていません [3][4]。

便潜血検査が陰性なら、大腸カメラは省けますか

便潜血検査は大腸がん検診のための検査で、貧血の原因を調べる目的の検査としては位置づけられていません。原因のはっきりしない鉄欠乏性貧血に対する標準的な検査は、内視鏡です [3]。便潜血が陽性だった方の考え方は健診で便潜血陽性と言われたらで解説しています。

胃カメラと大腸カメラ、両方受ける必要があるのはなぜ

出血源は上にも下にもありうるためです。片方だけでは、もう一方の病変を見落とします [3][4]。

監修
横浜駅前ながしまクリニック 院長 長島周平(内科認定医、日本消化器病学会専門医、日本内視鏡学会専門医、日本肝臓学会専門医)

参考文献

  1. 厚生労働省. 労働安全衛生法に基づく定期健康診断の項目(第11回 労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会 参考資料5, 令和7年12月17日). https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001617600.pdf
  2. 厚生労働省 e-ヘルスネット(健康日本21アクション支援システム). Hb / 血色素量. https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/metabolic/ym-074.html
  3. Snook J, et al. British Society of Gastroenterology guidelines for the management of iron deficiency anaemia in adults. Gut. 2021 Nov;70(11):2030-2051. PMID: 34497146. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34497146/
  4. Ko CW, et al. AGA Clinical Practice Guidelines on the Gastrointestinal Evaluation of Iron Deficiency Anemia. Gastroenterology. 2020 Sep;159(3):1085-1094. PMID: 32810434. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32810434/
  5. 国立研究開発法人国立がん研究センター がん情報サービス. 胃がん について. https://ganjoho.jp/public/cancer/stomach/about.html
  6. 国立研究開発法人国立がん研究センター がん情報サービス. 大腸がん(結腸がん・直腸がん)について. https://ganjoho.jp/public/cancer/colon/about.html
  7. 国立がん研究センター中央病院 大腸外科. 大腸がんの症状について. https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/clinic/colorectal_surgery/150/index.html

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