2026年07月26日
「とくにダイエットをしているわけではないのに、いつの間にか体重が減っていた」「食欲はふだんどおりで、食べる量も変えていないのに、体だけ細くなってきた」――そうした変化に気づいて来院される方は少なくありません。体重が落ちること自体はうれしく感じられる場合もありますが、食事や運動量に心当たりのない体重減少は、体のどこかで何らかの変化が起きているサインであることがあります。ここでは、どのくらいの体重減少であれば受診を考えたほうがよいのか、考えられる原因にはどのようなものがあるのか、そして当院でご案内できる検査の流れについてお伝えします。

どのくらい減ったら「受診すべき体重減少」なのか
「何キロ減ったら受診すべきか」に明確な一つの答えがあるわけではありませんが、目安の一つとして、日本臨床検査医学会の診療ガイドラインでは体重減少を「6〜12ヵ月間に5%以上の体重減少があった場合」などと定義しています [1]。米国家庭医学会誌に掲載された総説でも、高齢者を対象とした報告として、6〜12ヵ月間で体重の5%以上が減った状態を「意図しない体重減少」とし、罹患率・死亡率の増加と関連すると述べられています [2]。
たとえば体重60kgの方であれば、3kg前後の減少が一つの目安になる計算です。もちろん年齢や体格、もともとの体重によって受け止め方は異なりますし、数字だけで判断できるものでもありません。特に理由が見当たらないのに体重が減ってきたと感じる状態が数ヵ月続く場合は、一度相談してみることをおすすめします。
評価する目安の期間
体重減少の目安 [1][2]
考えられる主な原因
体重減少の原因は幅広く、消化器系の病気だけでなく、内分泌系の病気や心理的な要因が関わっていることもあります。日本臨床検査医学会のガイドラインでは、体重減少の基礎疾患として悪性腫瘍・うつ状態・消化器疾患・内分泌疾患が多いとされる一方、原因を検索しても分からない場合が25%前後あるとも述べられています [1]。米国家庭医学会誌の総説では、高齢者の意図しない体重減少のうち、悪性腫瘍が19〜36%、消化器系の非悪性疾患が9〜45%、内分泌疾患が4〜11%を占めるという報告が紹介されています [2]。年代や対象集団によって割合は変わりますが、原因の幅広さをつかむ目安として参考になります。
| 分類 | 考えられる主な原因(例) |
|---|---|
| 消化器系 | 胃がん・大腸がんなどの消化管の病気、胃潰瘍・十二指腸潰瘍、潰瘍性大腸炎・クローン病などの炎症性腸疾患、肝臓・膵臓の慢性的な病気 など |
| 内分泌系 | 甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)、糖尿病、副腎の病気 など |
| その他 | うつ状態や強いストレス、食欲不振、感染症、加齢に伴う食事量の低下 など |
どれか一つに絞り込めるものではなく、複数の要因が重なっていることもあります。「食欲はあるのに痩せる」「食べているのに体重が減る」という場合は、栄養の吸収や消費のしかたに変化が起きている可能性があり、消化器系や内分泌系の病気が関係していることがあります [1]。
消化器の病気が隠れていることがあります
体重減少があるからといって、それだけですぐにがんと決まるわけではありません。ただ、消化器の病気が原因になっていることは実際にあり、原因を確かめておくことが安心につながります。国立がん研究センターの解説では、胃がんは早い段階では自覚症状がほとんどない一方、「食事がつかえる、体重が減る、といった症状がある場合は、進行胃がんの可能性もあります」と述べられています [3]。当院の胃がんの初期症状についてのコラムもあわせてご覧ください。
また、難病情報センターの解説では、クローン病の症状として「腹痛や下痢、血便、体重減少などが生じます」とされており、腸の炎症が続くことで栄養の吸収がうまくいかなくなり、体重減少につながることがあるとされています [4]。潰瘍性大腸炎などほかの炎症性腸疾患や、胃潰瘍・十二指腸潰瘍でも、食事量の低下や消化・吸収の変化から体重減少がみられることがあります。血便・下痢・腹痛など他の症状を伴う場合は、なおのこと消化器の検査を検討する目安になります。
甲状腺や糖尿病など、内分泌系が関わることもあります
「食べる量は変えていないのに痩せる」というときには、内分泌系の病気が関わっていることもあります。日本内分泌学会の解説では、甲状腺の働きが過剰になるバセドウ病の症状として「動悸、体重減少、指の震え、暑がり、汗かきなどの症状がおきます」とされています [5]。甲状腺ホルモンが増えることで代謝が高まり、食欲があっても体重が減りやすくなるのが特徴とされています。
糖尿病でも、血糖のコントロールがうまくいかない状態が続くと、体重減少がみられることがあります。当院の糖尿病の初期症状についてのコラムでも、気づきにくい初期サインについて解説していますので、あわせてご参照ください。
検査の流れ――採血から内視鏡検査まで
体重減少の原因を調べる際は、まず問診と診察で経過を確認したうえで、血液検査(血算・肝機能や腎機能などの生化学検査、必要に応じて甲状腺の検査など)や便潜血検査を行うのが一般的な進め方とされています [1]。そのうえで消化器の病気が疑われる場合には、胃カメラや大腸カメラによる内視鏡検査で粘膜の状態を直接確認します。
胃カメラ・大腸カメラ
今後の相談
検査の順番や内容は、症状や採血結果によって前後することがあります。実際にどの検査が必要かは、診察のうえで個別にご相談します。
当院でできること
横浜駅前ながしまクリニックは、横浜駅きた西口から徒歩3分の内科・消化器内科・婦人科併設のクリニックです。体重減少のご相談では、採血に加えて、鎮静剤を使用した胃カメラ・大腸カメラにも対応しており、検査に不安のある方にも配慮しています。婦人科も併設しているため、女性の方で他の症状もあわせて気になる場合にも相談しやすい体制です。「痩せてきた気がするけれど、何科に相談すればいいか分からない」という段階でも、お気軽にご相談ください。
詳しい検査内容や当日の流れは内視鏡検査(胃カメラ・大腸カメラ)のご案内のページもご参照ください。
よくある質問
Q. ダイエットもしていないのに、1ヵ月で2〜3kg減りました。すぐ受診したほうがいいですか。
A. 短期間での急な体重減少は、期間の目安を待たずに一度相談したほうがよい場合があります。とくに発熱・血便・強い腹痛など他の症状を伴う場合は、早めの受診を検討してください。
Q. 体重は減っていますが体調は良く、他に症状もありません。それでも様子を見ないほうがいいですか。
A. 自覚症状がないまま進行する病気もあるため、症状がないことだけで安心できるとは限りません。数ヵ月にわたって体重減少が続く場合は、採血などの基本的な検査を受けておくと安心につながります。
Q. 採血で異常がなければ、それ以上の検査は不要ですか。
A. 採血だけでは分からない病気もあります。血便や便通の変化、腹部症状などがある場合や、体重減少が続く場合は、採血の結果にかかわらず胃カメラ・大腸カメラでの確認をおすすめすることがあります。個々の状況によって必要な検査は異なりますので、診察の際にご相談ください。
体重減少の原因は一つとは限らず、消化器系・内分泌系・その他の要因が組み合わさっていることも少なくありません。原因がはっきりすることで、安心して次の対応を考えられるようになります。気になる変化がある方は、一人で抱え込まず、まずはご相談ください。
監修
横浜駅前ながしまクリニック 院長 長島周平(内科認定医、日本消化器病学会専門医、日本内視鏡学会専門医、日本肝臓学会専門医)
参考文献
[1] 日本臨床検査医学会. 診療ガイドライン「20 体重減少 Weight Loss」. https://www.jslm.org/books/guideline/05_06/020.pdf
[2] Gaddey HL, Holder KK. Unintentional Weight Loss in Older Adults. Am Fam Physician. 2021;104(1):34-40. PMID: 34264616. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34264616/
[3] 国立がん研究センター がん情報サービス. 胃がんについて. https://ganjoho.jp/public/cancer/stomach/about.html
[4] 難病情報センター. クローン病(指定難病96). https://www.nanbyou.or.jp/entry/81
[5] 日本内分泌学会. バセドウ病. https://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=40
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