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旅行から帰っても下痢が続く——考えられる原因と受診の目安

2026年08月24日

旅行から帰っても下痢が続く——考えられる原因と受診の目安

旅行や出張から帰った後の下痢は、多くの場合数日〜1週間ほどで自然に軽快します。ただし2週間以上続く場合や、血便・高熱・強い腹痛・脱水症状を伴う場合は、寄生虫感染など別の原因が隠れていることがあるため、早めの受診をおすすめします。

スーツケースとパスポート、水分補給と救急ポーチのイメージ

「海外にいる間はお腹の調子が悪かったけれど、帰国すれば自然によくなると思っていた」というのに、なかなか下痢がすっきりしない――そうした相談は消化器内科の外来でも珍しくありません。海外旅行者の半数以上が旅行中に下痢を経験するとされ、その多くは数日で自然に回復しますが、なかには帰国後もしばらく症状が続く方がいます [1]。この記事では、旅行後の下痢で考えられる原因、様子を見てよい場合と受診を検討したい場合の目安、当院で行っている検査について整理します。

旅行から帰った後も下痢が続くのは、よくあることですか?

はい、めずらしいことではありません。ただし長引く場合は、原因を確認したほうが安心です。

厚生労働省検疫所(FORTH)の案内でも、海外旅行者の半数以上が旅行中に下痢を経験し、帰国後も症状が続くケースがあると紹介されています [1]。多くは一時的な感染性胃腸炎で、水分補給や安静のうちに自然と回復していきます。ただし、下痢の程度が強い場合や、続く期間が長い場合は、別の原因を考える必要が出てきます。下痢全般の考え方については下痢 果たして放置してよいのか?病院に行く方がよいのか?でも解説していますので、あわせてご覧ください。

帰国後になってから下痢の症状が続くのはなぜですか?

感染がまだ治まりきっていない場合のほか、寄生虫感染や腸内環境の変化、旅行をきっかけに現れる別の症状などが考えられます。

FORTHの案内では、帰国後も下痢が続く原因として、感染が長引いている状態のほか、ジアルジア症やアメーバ赤痢といった寄生虫感染症、抗菌薬の服用による腸内細菌バランスの変化、もともと抱えていた消化器疾患の顕在化、過敏性腸症候群などが挙げられています [1]。時差や生活リズムの乱れ、旅行中のストレス、食事内容の違いが影響することもあります。ストレスと腸の関係についてはストレスで腸に変化?ストレス社会に潜む過敏性腸症候群とは?の記事で詳しく取り上げています。

ジアルジア症などの寄生虫が原因になることもありますか?

あります。ジアルジア症などの寄生虫感染は、症状がゆっくり長引きやすいのが特徴です。

CDC(米国疾病予防管理センター)の渡航医学関連の資料では、帰国後に持続する下痢の原因として寄生虫(原虫)の関与が指摘されており、症状が続く期間が長くなるほど、細菌よりも寄生虫が関わっている可能性が相対的に高くなるとされています [2]。寄生虫感染では、便検査を行わないと診断がつきにくいこともあるため、症状が長引く場合は自己判断で様子を見続けず、検査を受けることが勧められます。

どんな症状が出たら受診したほうがいいですか?(受診の目安)

血便、高熱、強い腹痛、脱水症状がある場合や、下痢が2週間以上続く場合は、早めに医療機関を受診してください。

FORTHの案内でも「激しい下痢、頻回の下痢、血液が混じっている下痢の場合、高い熱がみられる場合には、すみやかに医師と相談すること」が勧められています [3]。もともと持病があり免疫力が低下している方や、高齢の方、乳幼児は、症状が軽く見えても早めに相談したほうが安心です。目安を表にまとめました。

様子を見てよいことが多いサイン 受診を検討したいサイン
水っぽい下痢はあるが、水分・食事はある程度とれる 血便、黒っぽいタール状の便が出た
発熱がない、あっても微熱程度 高熱(目安として38℃以上)が続く
数日のうちに改善する傾向がある 下痢が2週間以上続いている
強い腹痛や繰り返す嘔吐はない 強い腹痛や繰り返す嘔吐がある
尿の量や口の渇きに大きな変化はない 尿量が減った、口が渇く等の脱水症状がある
持病がなく、体力にも問題がない 持病があり免疫力が低下している、高齢者・乳幼児である

出典:厚生労働省検疫所(FORTH)「病気になったら」 [3]/「旅行から帰って」 [1]をもとに作成

旅行後の下痢の原因にはどのようなものがありますか?

大きく分けると、細菌・ウイルス・寄生虫による感染性のものと、感染以外の要因によるものがあります。

主な原因と特徴を表にまとめました。実際にどれが原因かは症状だけで判断することが難しく、便検査などで確認する必要があります。

原因 特徴 症状の目安
細菌性(病原性大腸菌、カンピロバクター等) 汚染された水や食品を介して感染することが多い 急に始まる下痢や腹痛。発熱を伴うことがある
ウイルス性(ノロウイルス等) 潜伏期間が短く、急に発症しやすい 嘔吐を伴う水様便。比較的短期間で軽快することが多い
寄生虫・原虫性(ジアルジア症、アメーバ赤痢等) 経過がゆっくりで、長引きやすい 軟便や腹部の張りが数週間にわたって続くことがある
感染以外の要因(生活リズムの変化、ストレス、食事内容の違い等) 検査で感染が見つからないこともある 症状の程度や続く期間には個人差がある

出典:厚生労働省検疫所(FORTH)「旅行から帰って」 [1]、CDC(米国疾病予防管理センター)渡航医学関連資料 [2]をもとに作成

何日くらいなら様子を見てもいいですか?

急性の下痢は数日〜1週間程度で軽快することが多いとされますが、2週間以上続く場合は、原因を調べたほうが安心です。

下痢は続く期間によって、急性・持続性・慢性のように区分して考えられることがあり、2週間以上続く下痢は「持続性の下痢」として扱われることがあります [2]。旅行後に2週間を超えて下痢が続く場合は、寄生虫感染や、旅行をきっかけに顕在化した消化器疾患などの可能性も考えられるため、一度検査を受けることをおすすめします。夏場の食あたりとの見分け方は夏の下痢は食中毒だけじゃない?熱中症との見分け方でも解説しています。

下痢止めや抗菌薬を自己判断で使ってもいいですか?

自己判断での抗菌薬の使用はおすすめできません。下痢止めも、原因によっては使わないほうがよい場合があります。

抗菌薬は原因菌の種類によって効果が異なり、必要がない場面で使うと、耐性菌の問題につながる可能性があります。海外で入手した薬や、以前処方された薬を自己判断で服用することは避け、症状が続く場合は医師に相談してください。下痢止め(止瀉薬)についても、感染性の下痢では病原体の排出を妨げ、かえって症状を長引かせる可能性があるとされることがあるため、自己判断での使用には注意が必要です。

病院ではどんな検査をしますか?

問診に加えて、便検査や血液検査を行い、必要に応じて大腸カメラ検査で腸の状態を確認します。

問診では、渡航先や滞在期間、食事内容、症状が始まった時期などをうかがいます。これらの情報は、原因を絞り込むうえで重要な手がかりになります。そのうえで便検査(細菌培養や寄生虫の確認等)や血液検査を行い、炎症の程度や脱水の有無を調べます。症状が長引く場合や、大腸の病気が疑われる場合には、大腸カメラ検査で腸の粘膜を直接確認することもあります。大腸カメラについては大腸カメラ検査についてのページもご参照ください。黄色っぽい下痢が続く場合は、胆汁の関与が考えられることもあり、胆汁性下痢とは?原因・症状・検査・治療をわかりやすく解説もあわせてご覧ください。

横浜駅前ながしまクリニックでは旅行後の下痢にどのように対応していますか?

当院の消化器内科では、旅行後・海外渡航後の下痢についてのご相談に対応しており、便検査や血液検査を行っています。症状や経過によっては大腸カメラ検査をご案内することもあります。

大腸カメラは、鎮静剤を使用しての検査に対応しており、当日検査は原則毎日行っています。検査中にポリープが見つかった場合は、日帰りでの切除にも対応しています。検査結果は、電話や郵送ではなく、後日ご来院いただいた際に医師から対面でご説明しています。院長は日本消化器内視鏡学会認定の消化器内視鏡専門医です。なお、当院には手術・入院設備がないため、入院での対応が必要と判断した場合は、連携する医療機関をご紹介します。診療時間は平日9時〜12時・13時〜18時、土曜9時〜12時・13時〜17時(15時以降は内視鏡検査のみ)で、横浜駅きた西口から徒歩約3分です。

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よくある質問

旅行中の下痢はどのくらいで治りますか?

多くの場合、数日から1週間程度で自然に軽快します。ただし脱水が心配な場合や、症状が強い場合は早めにご相談ください。

帰国してからしばらくして下痢が始まったのですが、旅行が原因の可能性はありますか?

あります。感染症のなかには潜伏期間があるものもあり、帰国後しばらくしてから症状が出ることがあります。渡航先や時期を医師に伝えていただくと、診断の参考になります。

下痢と一緒に熱があるときはどうすればいいですか?

高熱(目安として38℃以上)を伴う場合は、自己判断で様子を見続けず、早めに医療機関を受診することをおすすめします。

血便が出た場合はすぐ受診すべきですか?

はい。血便や黒っぽいタール状の便がみられる場合は、様子を見ずに早めに受診してください。

水分補給は何を意識すればいいですか?

水だけでなく、塩分や糖分も含めて補うことが基本とされています。経口補水液など、水分と電解質を一緒に補える飲み物が選択肢になります。自力での水分摂取が難しい場合は、無理をせず受診してください。

市販の下痢止めを使ってもいいですか?

感染性の下痢の場合、下痢止めが症状を長引かせる可能性があるとされることがあります。使用の可否は自己判断せず、症状が続く場合や強い場合は医師にご相談ください。

大腸カメラはどんな場合でも受けないといけませんか?

下痢の原因や経過によります。便検査・血液検査で判断できることも多く、症状が長引く場合や大腸の病気が疑われる場合に大腸カメラをご案内しています。

子どもや高齢者の場合、注意点は違いますか?

子どもや高齢者は脱水が進みやすいため、軽い下痢でも早めの受診を検討したほうが安心です。持病があり免疫力が低下している方も同様です。

どのくらいの期間、様子を見てから受診すればいいですか?

目安として、2週間以上下痢が続く場合は受診をおすすめします。血便・高熱・強い腹痛・脱水症状がある場合は、2週間を待たず早めにご相談ください。

監修
横浜駅前ながしまクリニック 院長 長島周平(内科・消化器内科/日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医、日本消化器病学会認定 消化器病専門医)

参考文献
[1] 厚生労働省検疫所(FORTH). 旅行から帰って.
[2] CDC(米国疾病予防管理センター). Yellow Book: Post-Travel Diarrhea.
[3] 厚生労働省検疫所(FORTH). 病気になったら.

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