2026年09月27日
お腹がパンパンに張って気持ち悪い、吐いてしまう、おまけに便もガスもまったく出ない――これらが同時に起こっているなら、単なる便秘や食べ過ぎではなく「腸閉塞(イレウス)」という状態かもしれません。お腹の手術を受けたことがある方には特に関係が深い病態で、放置すると腸が壊死することもあります。この記事では腸閉塞がどんな状態か、何が原因になりやすいか、どの段階で病院に行くべきかを整理します。当院は外来クリニックで、腸閉塞そのものの入院治療は行っていません。ただ、疑わしいサインを知っておくことは受診の判断に役立つはずです。
腸閉塞(イレウス)とは──4つのサイン
腸閉塞というのは、腸の中身が先へ進めなくなった状態を指す言葉です[1]。厳密には完全に詰まっている場合だけでなく、通過が悪くなっているだけでも「イレウス」と呼ばれます。
代表的なサインは次の4つです。
- 腹痛
- 吐き気・嘔吐
- お腹がパンパンに張る(腹部膨隆)
- 便やガスがまったく出ない
腸閉塞を疑う4つのサイン
※ 4つが揃っているときは様子見をせず、入院対応が可能な病院を受診してください。出典:済生会「イレウス(腸閉塞)」[1]
腹痛・吐き気嘔吐・お腹の張りに加えて、便やガスが止まったときは、腸閉塞を疑います[1]。お腹の張りだけならお腹が張って苦しいときで扱ったような別の原因のこともありますし、吐き気だけが続くなら吐き気・嘔吐が続くときで取り上げた他の病気の可能性もあります。ただ、この4つが揃って出ているときは、話が別だと考えたほうがよいでしょう。
原因の多くは「お腹の手術歴」――癒着性イレウス
腸閉塞の原因として最も多いのは、お腹の手術を受けたことがある方に起こる「癒着性イレウス」で、全体の6割近くを占めます[1]。腹部の手術や腹膜炎の既往があると腸の周りに癒着(腸同士や腸と腹壁がくっつく状態)ができやすく、そこで腸が折れ曲がったり引っ張られたりして詰まります。手術後しばらく調子が良かった方でも、ある日突然発症することがあります[1]。
次に多いのが大腸がんなどの腫瘍によるもので、頻度は1割強とされています[1]。まれに、便のかたまりが原因になる「糞便イレウス」もあり、これは高齢の方や寝たきりの方、持病のある方で注意が必要とされています[1]。
もう一つ、見逃したくないタイプが「絞扼性イレウス」です。癒着やヘルニアの嵌頓、腸重積、腸軸捻転などによって腸への血流そのものが途絶えてしまう状態で、急に強い痛みが起こり、それがずっと続くようなら絞扼性の可能性が高いとされています[1]。血流が止まった腸は壊死してしまうため、早期の治療が必要です。
腸閉塞の主な原因と頻度の目安
6割近く
1割強
※ 棒の長さは出典の「6割近く」「1割強」をもとにした目安です。その他は出典に数値の記載がありません。出典:済生会「イレウス(腸閉塞)」[1]
| 原因 | 頻度の目安 |
|---|---|
| 癒着(お腹の手術歴・腹膜炎の既往など) | 6割近く[1] |
| がんなどの腫瘍 | 1割強[1] |
| 便(糞便イレウス)・血流障害を伴う絞扼性など | 数値の記載なし[1] |
「そのうち出るだろう」で様子を見てはいけない理由
腸閉塞は、通院治療だけでは治らずにかえって悪化することがあるため、診断がついた時点でそのまま入院になるのが基本の流れです[1]。絶飲食にして点滴で水分と栄養を補い、小腸が原因なら鼻からチューブを入れて腸の中の圧を下げる処置を行います。それでも改善しない場合は手術が検討され、最終的に手術が必要になるのは全体の3割程度とされています[1]。病変が大腸にある場合は、大腸の内視鏡などによる処置が行われることもあります[1]。
当院は外来のクリニックのため、腸閉塞そのものの入院治療(絶飲食・点滴・チューブでの処置や手術)は行っていません。疑わしい症状があるときは、入院設備のある病院を受診する、あるいは状況によっては救急要請をする、という判断が必要です。
見分け方の目安は次のとおりです。
- 急に強い腹痛が起こり、それがずっと続く場合──絞扼性イレウスの可能性があり、総務省消防庁の救急車利用マニュアルでも「突然の激しい腹痛」「激しい腹痛が持続する」は救急要請の対象に挙げられています[5]。
- 腹痛・吐き気嘔吐・お腹の張り・便とガスの停止の4つが揃っている場合──様子見をせず、入院対応が可能な病院を受診してください。
- 吐いたものに便のようなにおいがある場合は状態が進んでいる可能性がある一方、排ガスや排便が普段どおり続いているなら、イレウスではないか、あっても軽症であることが多いとされています[1]。
どこに相談する? 受診の目安
※ 救急要請の目安は総務省消防庁「救急車利用マニュアル」[5]、それ以外は済生会「イレウス(腸閉塞)」[1]の記述をもとに整理しています。
大腸カメラで確かめておきたいタイミングもある
先ほど触れたとおり、大腸がんも原因の一つになりえます。国立がん研究センターの解説によると、大腸がんが進行してくると、腸が狭くなることによる便秘や下痢、便が細くなる、残便感、お腹が張るといった症状が先に出てくることがあり、これがさらに進むと腸閉塞になって便が出なくなり、腹痛や嘔吐が起こるとされています[2]。
つまり、いきなり腸閉塞になるとは限らず、その手前で「お腹の張り」や「便通の変化」が続くことがあります。下痢と便秘を繰り返すときのような症状が長引くなら、一度大腸カメラで確かめておくのも一つの方法です。大腸がんの初期症状は大腸がんの初期症状でも取り上げています。当院の内視鏡検査の案内ページも参考にしてください。
大腸カメラの下剤を飲む前に、伝えておきたいこと
もう一つ知っておきたいのが、大腸カメラの前に飲む腸管洗浄剤(下剤)との関係です。代表的な下剤の一つであるモビプレップは、「胃腸管閉塞症(胃や腸が詰まった状態)および腸閉塞(腸が詰まった状態)の疑いがある人」には使用できないとされています[3]。
モビプレップは、飲む前日あるいは飲み始める前に通常どおりの排便があったことを確認してから飲み始めるものとされており、排便がない場合は医師や薬剤師に相談するよう案内されています[3]。約1Lを飲んでも排便がない場合は、腹痛や吐き気、嘔吐がないことを確認したうえで飲み続けることになっていますが、2Lを飲んでも排便がない場合はただちに受診するようにと定められています[3]。実際、腸閉塞を疑う患者に腸管洗浄剤を使う際は、事前に問診や触診、画像検査などで腸閉塞でないことを確認したうえで投与すべきとされています[4]。
当院で大腸カメラを受ける場合も、前日や当日に便が出ていない、お腹が張っている、吐き気があるといった状態があれば、下剤を飲み始める前に一度ご連絡ください。飲んでいる途中で腹痛や嘔吐が出た場合も、そこで中止してご連絡ください。
腸閉塞の治療を受けたあとの大腸カメラ
腸閉塞で入院治療を受けた場合、その原因が大腸にあるのかどうかを確かめる手段の一つが大腸カメラです。いつ受けるかは、治療した病院の医師と相談してください。「腸閉塞になったらすぐ大腸カメラ」と一律に決まっているわけではありません。
よくある質問
お腹が張って便が出ないのですが、痛みはそれほど強くありません。それでも病院に行ったほうがいいですか?
痛みが軽くても、お腹の張り・吐き気嘔吐・便とガスの停止がいくつか重なっているときは、自己判断で様子を見続けるのは避けたほうがよいでしょう。特に、以前にお腹の手術を受けたことがある方は、癒着性イレウスを起こすことがあるとされています[1]。注意が必要です。
市販の下剤や浣腸を使って、自分で便を出そうとしてもいい?
腸閉塞が疑われる状況で、自己判断により下剤や浣腸を使うことは勧められません。原因や重症度によって対応が異なるため、まずは医療機関で状態を確認してもらうことが基本です。
大腸カメラを受ける予定なのですが、最近ずっとお腹が張っていて心配です。このまま下剤を飲んでしまって大丈夫?
使用する下剤の種類によって注意点は異なりますが、モビプレップの場合は腸閉塞やその疑いがある方は使用できないとされています[3]。お腹の張りや便の出方がいつもと違うと感じるときは、下剤を飲み始める前に医療機関へご連絡ください。
当院へのアクセス(横浜駅から徒歩3分)
横浜駅前ながしまクリニックは、横浜駅から300m・徒歩3分(横浜モアーズから徒歩2分)の場所にあります。診療は月曜〜土曜で、日曜・祝日は休診です。横浜駅からの道順はアクセスページで写真つきでご案内しています。大腸カメラ検査のご予約・ご相談は大腸カメラ検査のページからどうぞ。
参考文献
- 田中賢治(済生会長崎病院 外科主任部長). イレウス(腸閉塞). 済生会. 2025年8月28日更新. https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/ileus/(確認日:2026年9月27日)
- 国立がん研究センター. がん情報サービス「大腸がん(結腸がん・直腸がん)について」. https://ganjoho.jp/public/cancer/colon/about.html(確認日:2026年9月27日)
- 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA). 患者向医薬品ガイド モビプレップ配合内用剤. https://www.info.pmda.go.jp/downfiles/guide/ph/111890_7990102A1024_1_00G.pdf(確認日:2026年9月27日)
- 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA). 緊急安全性情報「経口腸管洗浄剤による腸管穿孔及び腸閉塞について」No.03-01. 2003年9月. https://www.pmda.go.jp/files/000148623.pdf(確認日:2026年9月27日)
- 総務省消防庁. 救急車利用マニュアル. https://www.fdma.go.jp/publication/portal/items/portal002_japanese2511.pdf(確認日:2026年9月27日)
監修
横浜駅前ながしまクリニック 院長 長島周平(内科・消化器内科/日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医、日本消化器病学会認定 消化器病専門医、日本肝臓学会認定 肝臓専門医、日本内科学会 認定医)
