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お酒で顔が赤くなる人が、飲み会シーズンの前に知っておきたい食道の話

2026年09月15日

お酒で顔が赤くなる人が、飲み会シーズンの前に知っておきたい食道の話

「昔は一口で真っ赤になったんですけど、今は普通に飲めるようになりました」。外来でこう言われると、私は少し身構えます。飲んでいるうちに強くなること自体は珍しくありません。ただ、食道にとっては、それがいちばん都合の悪い経過だからです。秋から年末にかけては会食が増えます。飲み会が本格化する前に、自分の体質と食道の関係を整理しておく価値があります。

顔が赤くなるのは、アセトアルデヒドを処理しきれていないサイン

お酒のアルコールは、肝臓でまずアセトアルデヒドに分解され、さらに酢酸へと分解されます。この2段目を担う酵素の働きが弱いと、アセトアルデヒドが体内に残ります。顔が赤くなる、動悸がする、吐き気や頭痛が出る――これがフラッシング反応です。厚生労働省の「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」では、東アジアにはこの反応を起こす人が一定数おり、日本では41%程度いるとされています [1]。

見過ごせないのは、このアセトアルデヒドが発がん性を持つ物質だという点です。国立がん研究センターも、食道がんの主な発生要因は喫煙と飲酒であり、その分解に関わる酵素の活性が生まれつき弱い人では危険性が高まると報告されている、と明記しています [2]。

30秒セルフチェック|あなたはフラッシング体質?
コップ1杯のビールで顔が赤くなる
飲み始めた頃(20歳前後)は、少量で顔が赤くなっていた
飲むと動悸・吐き気・頭痛が出やすい
家族・親族に「お酒が飲めない人」がいる
2番目にチェックがついた方は、今は飲めていてもフラッシング体質である可能性があります。「今飲めるかどうか」より「昔どうだったか」が手がかりになります。

「鍛えたら飲めるようになった」がいちばん心配な経過

酵素の弱さには段階があります。e-ヘルスネット(執筆は久里浜医療センターの横山顕医師)によれば、遺伝子が2本とも欠損型の人(ホモ欠損型)は酵素活性がゼロで、そもそも飲めない下戸の体質です。一方、1本だけ欠損型の人(ヘテロ欠損型)には、反応が弱い人や、飲んで鍛えるうちに耐性ができて飲めるようになる人がいます [3]。

そして同じ資料は、ヘテロ欠損型の多量飲酒者で発生する高濃度のアセトアルデヒドが食道やのどへの発がん性を持つと指摘しています [3]。厚生労働省のガイドラインも、そうした体質の人が長年飲んで不快にならずに飲めるようになった場合でも、口の中のがんや食道がん等のリスクが非常に高くなるというデータがある、と注意を促しています [1]。

どのくらい違うのかという点では、横山医師も著者に名を連ねる医学誌PLOS Medicineの総説が、日本と台湾の症例対照研究ではヘテロ欠損型の人の食道扁平上皮がんのオッズ比が飲酒量を調整したうえで3.7〜18.1と報告されており、大量に飲むヘテロ欠損型では10倍を超える報告が多い、とまとめています [4]。

つまり「昔は赤くなったが今は平気」は、体質が変わったのではなく、警報が鳴らなくなっただけ、と考えたほうが実態に近い。若い頃に赤くなった記憶があるかどうかは、今飲めるかどうかより大事な情報です。

アセトアルデヒド分解酵素(ALDH2)の3タイプ
活性型(酵素が働く)
顔は赤くなりにくい。ただし飲酒量が多ければ、食道がん以外のリスクは当然かかってきます。

ヘテロ欠損型(1本が欠損)
本記事で最も注意したいタイプ。反応が弱い人や、鍛えて飲めるようになる人がいます。多量に飲むと高濃度のアセトアルデヒドが発生し、食道・のどへの発がん性が指摘されています。

ホモ欠損型(2本とも欠損)
酵素活性がゼロ。ごく少量でも強い反応が出るため、飲まない(飲めない)方が大半です。

出典:e-ヘルスネット「アルコールの吸収と分解」/厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」をもとに作成

食道がんには、国が定めた検診がない

ここが胃がんや大腸がんと決定的に違うところです。国立がん研究センターは、食道がんについては現在、指針として定められたがん検診はないと明記しています [2]。市の検診案内を待っていても、食道を見てもらう機会は回ってきません。しかも胃がん検診のバリウム検査は食道ではなく胃を重点に検査するため、つかえ感などがあれば食道も確認してもらうよう検査前に伝えてほしい、とも同ページは書いています [2]。

裏を返せば、食道の粘膜そのものを直接見る手段は上部消化管内視鏡=胃カメラです。当院では白色光観察に加えBLI・LCIという特殊光観察を用い、粘膜表面の血管パターンや微細な構造を強調して観察できます。食道の早期の変化は平坦でわずかな色調の違いとして現れることが多く、こうした観察が手がかりになります。バリウムで指摘を受けた方はバリウム検査で「要精密検査」と言われたらもどうぞ。

量をどう考えるか

厚生労働省のガイドラインは、お酒の量(mL)ではなく純アルコール量(g)で考えることを勧めています。計算は「摂取量(mL)×度数/100×0.8」で、5%のビール500mLならちょうど20gです。生活習慣病のリスクを高める量は1日あたり男性40g以上・女性20g以上、1回で60g以上の一時多量飲酒は避けるべきものとされています [1]。ただし男性の食道がんは、たとえ少量でも飲酒自体が発症リスクを上げるという研究結果も同ガイドラインに示されており [1]、「この量までなら安心」という線引きができる話ではありません。

重なるものにも注意が要ります。喫煙と飲酒の両方の習慣がある人はより危険性が高まること、熱いものの飲食が危険性を高めるという報告が多いことも、国立がん研究センターが挙げています [2]。飲みながら食べる、合間に水をはさむ、週に飲まない日をつくる。ガイドラインの挙げる配慮は地味ですが、忘年会が続く時期に打てる手はそう多くありません [1]。

検査を考えたい目安

早めに受診・検査を考えたいとき
▢ 食べ物がのどや胸につかえる感じがある
▢ 熱いものや酒を飲むと胸がしみる
▢ 声のかすれが続いている
▢ ダイエットしていないのに体重が減ってきた
▢ フラッシング体質+飲酒歴が長い+喫煙している

上の1つでも当てはまる方は、時期を待たずにご相談ください。いちばん下の項目は「症状がなくても一度は食道を確認しておきたい」条件です。

症状がなくても、若い頃に顔が赤くなっていた方で飲酒歴が長く喫煙も重なるなら、一度は食道を含めて確認しておく意味があります。当院は鎮静剤を使った検査にも対応しており、眠っている間に終わったとおっしゃる方が大半です。

なお、飲酒の影響は食道だけにとどまりません。飲んだ翌日の下痢や腹痛を繰り返す、便に血が混じるといった場合は大腸側の評価も必要です(大腸カメラ検査)。おなかのどのあたりが痛むかで考えたい方は腹痛の原因を部位別に解説|考えられる病気と受診の目安もご覧ください。

よくある質問

お酒を飲むと顔が赤くなるのは、どういう体質ですか。
お酒のアルコールは肝臓でアセトアルデヒドに分解され、さらに酢酸へと分解されます。この2段目を担う酵素の働きが弱いと、アセトアルデヒドが体内に残り、顔が赤くなる、動悸がする、吐き気や頭痛が出るといったフラッシング反応が起こります。厚生労働省のガイドラインでは、日本では41%程度の人がこの反応を起こすとされています。

若い頃は少量で顔が赤くなりましたが、今は普通に飲めます。もう心配はいりませんか。
体質が変わったのではなく、反応が出にくくなっただけと考えたほうが実態に近いです。厚生労働省のガイドラインは、こうした体質の人が長年飲んで不快にならずに飲めるようになった場合でも、口の中のがんや食道がん等のリスクが非常に高くなるというデータがある、と注意を促しています。今飲めるかどうかより、若い頃に赤くなっていたかどうかが大事な手がかりです。

食道の状態は、健診のバリウム検査で確認できますか。
国立がん研究センターによると、食道がんには指針として定められたがん検診がなく、胃がん検診のバリウム検査は食道ではなく胃を重点に検査します。食道の粘膜そのものを直接見る手段は胃カメラ(上部消化管内視鏡)です。食べ物がつかえる感じなどの症状がある方や、フラッシング体質で飲酒歴が長く喫煙も重なる方は、一度ご相談ください。


監修

横浜駅前ながしまクリニック 院長 長島周平(内科認定医、日本消化器病学会専門医、日本内視鏡学会専門医、日本肝臓学会専門医)

参考文献

  1. 厚生労働省. 健康に配慮した飲酒に関するガイドライン(令和6年2月). https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_38541.html(本文PDF: https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001223643.pdf
  2. 国立がん研究センター がん情報サービス. 食道がん 予防・検診(更新・確認日:2025年3月25日). https://ganjoho.jp/public/cancer/esophagus/prevention_screening.html
  3. 横山顕. アルコールの吸収と分解. e-ヘルスネット(厚生労働省 健康日本21アクション支援システム)(最終更新日:2022年1月20日). https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/alcohol/a-02-002.html
  4. Brooks PJ, Enoch MA, Goldman D, Li TK, Yokoyama A. The alcohol flushing response: an unrecognized risk factor for esophageal cancer from alcohol consumption. PLoS Med. 2009;6(3):e50. PMID: 19320537 / PMCID: PMC2659709. https://journals.plos.org/plosmedicine/article?id=10.1371/journal.pmed.1000050(PMC: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2659709/
  5. 国立がん研究センター がん情報サービス. 食道がん. https://ganjoho.jp/public/cancer/esophagus/index.html

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