2026年07月24日
「SAS外来って、いびきの相談をするところですよね」――そう思って来院される方が少なくありません。たしかにいびきは睡眠時無呼吸症候群(SAS)を疑うきっかけになる症状のひとつです。ただ、いびきをかいている人がみなSASというわけではありませんし、逆にいびきがあまり目立たないタイプのSASもあります。SAS外来で確認したいのは、いびきの音の大きさそのものより、睡眠中に呼吸が止まっていないか、体に負担がかかっていないかという点です。

いびきと睡眠時無呼吸症候群(SAS)は同じではありません
いびきは、眠っている間に空気の通り道(上気道)が狭くなり、そこで粘膜が振動して生じる音です。一方でSASは、睡眠中に呼吸が何度も止まったり浅くなったりする状態のことで、日本呼吸器学会も睡眠関連呼吸障害のひとつとして位置づけています [1]。いびきは「音」の問題、SASは「呼吸」の問題であり、重なる部分はあっても同じものではありません。
日本呼吸器学会の「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」でも、いびきや日中の眠気、家族からの無呼吸の指摘はSASを疑う手がかりになる一方、診断には簡易検査や精密検査(終夜睡眠ポリグラフ検査など)による客観的な評価が必要とされています [2]。「いびきをかいているから、たぶんSASだろう」と自己判断するより、まずは検査で呼吸の状態を確認しておくほうが、遠回りに見えて実は近道になることがあります。
いびきとSASの違いを比較すると
大まかな違いを表にまとめました。あくまで目安であり、実際にどちらのタイプに近いかは検査をしてみないとわからないこともあります。
| 項目 | いびき(単純ないびき) | SASが疑われる場合 |
|---|---|---|
| 呼吸の様子 | 音は出ていても呼吸そのものは続いている | 呼吸が数秒〜十数秒以上止まる、または浅くなることを繰り返す |
| いびきの音の変化 | 一定の大きさ・リズムで続くことが多い | 大きないびきが急に止まり、しばらくして大きな呼吸とともに再開する |
| 日中の様子 | 強い眠気を感じないことが多い | 日中の強い眠気や倦怠感、集中力の低下が目立つ |
| 起床時の状態 | 比較的すっきり起きられることが多い | 頭が重い、口や喉が渇いている、と感じやすい |
| 確認の方法 | 自覚症状の経過を見ることが多い | 簡易検査・精密検査(PSGなど)による客観的な評価をおすすめ |
SASが厄介なのは「呼吸が止まっているのに、本人は気づきにくい」ことです
SASでは、上気道が繰り返し狭くなったり塞がったりすることで、無呼吸や低呼吸が起こります。呼吸が止まるたびに脳が浅い覚醒を繰り返すため、本人は「ぐっすり眠った」つもりでも、実際には睡眠が細切れになっていることが少なくありません。その結果、日中の強い眠気や倦怠感、集中力の低下、起床時の頭痛といった症状につながりやすくなります [1]。
いびきの音は同居している家族の方が気づきやすい一方、呼吸が止まっている瞬間そのものは本人には自覚しにくいものです。「いびきがうるさい」という指摘の裏に、無呼吸が隠れていることは珍しくありません。
「たかがいびき」で済ませにくい理由
SASの影響は、日中の眠気だけにとどまりません。日本循環器学会などによる合同ガイドラインでは、睡眠呼吸障害が循環器疾患の発症や悪化に関与しうることが指摘されています [3]。日本呼吸器学会の解説でも、SASによって高血圧や脳卒中、心筋梗塞のリスクが上がるとされ、日中の強い眠気は居眠り運転事故や労働災害にもつながりうるとされています [1]。睡眠中だけの問題としてではなく、体全体の健康に関わるテーマとして捉えておいたほうがよさそうです。
当院の関連診療ページ
- 睡眠時無呼吸症候群(SAS)外来——検査・治療の流れはこちら
- 一般内科——いびき・眠気のご相談の入り口に
- 生活習慣病外来——SASと関連の深い高血圧などのケア
セルフチェック――こんなサインがあれば、一度相談を
次のような項目に心当たりがある方は、SAS外来での相談を検討してみてください。当てはまる項目があっても、それだけでSASと診断されるわけではありません。症状の感じ方には個人差があります。
- 大きないびきが急に止まり、しばらくして呼吸が再開することがある、と言われたことがある
- 日中に強い眠気があり、会議中や運転中についウトウトしてしまうことがある
- 朝起きたときに頭が重い、あるいは口や喉が渇いていることが多い
- 夜間に何度も目が覚める、またはトイレに起きることが多い
- 家族や同居している人から「呼吸が止まっているようだった」と言われたことがある
- 体重が増えてきた、または首まわりが太くなったと感じる
当院の睡眠時無呼吸症候群(SAS)外来では、ご自宅でできる簡易検査から精密検査、CPAP治療までを内科で一貫して行っています。「いびきを指摘されただけ」という段階でも構いませんので、気になる方はお気軽にご相談ください。
監修
横浜駅前ながしまクリニック 院長 長島周平(内科)
参考文献
[1] 日本呼吸器学会. 睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS). https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/i/i-05.html
[2] 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン作成委員会(監修:日本呼吸器学会). 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020. 2020年. https://www.jrs.or.jp/publication/file/guidelines_sas2020.pdf
[3] 日本循環器学会・日本呼吸器学会 他合同研究班(班長:葛西隆敏). 循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン(2023年改訂版). 2023年3月11日. https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2023/03/JCS2023_kasai.pdf
