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多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とは?症状・診断基準・放置のリスクを産婦人科専門医が解説

2025年07月08日

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とは?症状・診断基準・放置のリスクを産婦人科専門医が解説

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、卵巣の中で卵胞がうまく育たず排卵が乱れる状態です。月経不順やにきび、体毛の変化などの症状が現れることがあり、日本産科婦人科学会は2023年に診断基準を16年ぶりに改定しました(同年12月公表)。

月経周期を記録するイメージイラスト

「生理が全然来ない」「にきびや毛の濃さが気になる」「体重が落ちにくくなった気がする」――婦人科の外来では、20代の方からこうした相談をよく受けます。背景にあることが多いのが、この多嚢胞性卵巣症候群(PCOS:Polycystic Ovary Syndrome)です。思春期から30代の女性に比較的多くみられ、この記事では症状や新しい診断基準、放置した場合のリスク、治療の考え方までを、横浜駅前ながしまクリニックの婦人科診療をもとにまとめました。

PCOSとはどのような病気ですか?

PCOSは、卵巣の中で卵胞の発育が途中で止まり、排卵まで進まない状態が続く病気です。「多嚢胞」という名前は、この超音波所見に由来しています。

通常の月経周期では、1回の周期で1個の卵胞が発育し、成熟すると排卵が起こります。PCOSでは、この卵胞の発育が途中で止まってしまい、小さな卵胞が卵巣内にたくさん残ったまま排卵まで進まない状態が続きます。卵胞がうまく育たない背景には、脳から卵巣への指令を担うホルモンバランスの乱れや、男性ホルモンがやや高くなることが関わっていると考えられています。日本内分泌学会によれば、妊娠が可能な年代の女性の約5〜8%に発症するとされ、決してめずらしい病気ではありません [1]。

PCOSにはどのような症状がありますか?

代表的な症状は月経不順です。にきびや多毛、体重の変化を伴うこともありますが、症状の出方には個人差があります。

生理周期が長くなる、来る時期が予測しづらい、数か月来ないといった変化がみられます。加えて、男性ホルモンがやや高くなることで、にきびが増えたり、体毛が濃くなったりする方もいます。私たちが診察でよく尋ねるのは、体重の増減のペースです。急な体重増加はPCOSの症状を悪化させることがあるとされ、逆にPCOSがあることで痩せにくさを感じる方もいらっしゃいます。月経不順以外は目立った自覚症状がない方も少なくありません。主な症状の現れ方を以下にまとめました。

症状 現れ方の目安
月経不順 周期が長くなる、来る時期が予測しづらい、数か月来ないことがある
にきび・肌荒れ 男性ホルモンがやや高くなることで増える方がいる
多毛 体毛が濃くなったと感じる方がいる
体重の変化 急な体重増加で症状が悪化することがあり、痩せにくさを感じる方もいる

症状の組み合わせ方には幅があり、月経不順しか自覚がない方から、にきびや多毛が目立つ方まで、状態は人によって異なります。気になる症状がある場合は、自己判断せず婦人科でご相談ください。

PCOSの診断基準はどのように変わりましたか?

日本産科婦人科学会は2023年、PCOSの診断基準を2007年以来16年ぶりに改定しました(同年12月公表)。多毛の所見とAMH高値が新たに評価項目に加わった点が主な変更です。

PCOSの診断基準は、日本産科婦人科学会の生殖・内分泌委員会が2007年に定めたものが長く使われてきましたが、国際的な基準との整合性を踏まえて2023年9月に理事会で承認され、同年12月4日に公表されました [2]。従来の基準では「血中男性ホルモン高値」のみを評価していましたが、新基準では多毛の所見(modified Ferriman-Gallweyスコア)も加わり、AMH(抗ミュラー管ホルモン)高値も卵巣所見の代わりに使えるようになった点が主な変更点です [3]。

診断項目 内容の目安
1. 月経周期異常 無月経、希発月経(周期が長い)、無排卵周期症のいずれか
2. 多嚢胞卵巣 または AMH高値 超音波検査で卵巣に小さな卵胞が多数みられる、またはAMHの値が高い
3. アンドロゲン過剰症 または LH高値 血中男性ホルモンや多毛の所見がある、または黄体化ホルモン(LH)が高い

類似した症状を示す他の疾患を除外したうえで、この1〜3のすべてを満たす場合にPCOSと診断されます [3]。実際の判定にはホルモンの数値や超音波所見の細かい基準があるため、自己判断はせず、婦人科での問診・超音波検査・採血をあわせて確認することが必要です。

PCOSを放置するとどうなりますか?

無月経や排卵の乱れを長期間放置すると、子宮内膜に異常な変化が生じることがあります。将来の妊娠に影響する場合もあるため、長引く月経不順は確認しておくと安心です。

月経不順そのものは、様子を見ても差し支えないことも多いのですが、無月経や排卵の乱れが長期間続く場合は注意が必要です。日本内分泌学会の解説では、月経不順や無月経を治療せずに長期間放置すると、子宮内膜に異常な変化が生じ、子宮内膜増殖症や子宮体がん(高分化型)が発生することがあるとされています [1]。また、排卵が起こりにくい状態が続くことは、妊娠を希望する際に影響する場合がある要因のひとつでもあります。ただし、PCOSがあるからといって妊娠できないと決まるわけではなく、自然に妊娠される方も少なくありません。「そのうち整うだろう」と数か月様子を見続けている状態が長引いているようなら、一度婦人科で確認しておくと安心です。

PCOSの治療はどのように選びますか?

PCOSの治療方針は、その時々で妊娠を希望するかどうかによって大きく変わります。共通するのは体重管理で、BMIが25を超えている場合は、食生活の見直しと無理のないペースでの減量(目安は1か月に1kg程度)が土台になります [1]。妊娠を希望する時期かどうかで、治療の考え方は次のように変わります。

時期 治療の考え方
共通(土台) BMI25超なら食生活の見直しと無理のないペースでの減量(目安1か月に1kg程度)
妊娠を希望しない時期 低用量ピルやホルモン療法で周期的に月経を起こし、子宮内膜が長期間はがれ落ちないままの状態を防ぐ
妊娠を希望する時期 排卵誘発剤で排卵を促す。専門的な不妊治療が必要な場合は連携医療機関へ紹介

妊娠を希望しない時期は、低用量ピルやホルモン療法を使って周期的に月経を起こし、子宮内膜が長期間はがれ落ちないままの状態を防ぐことが基本になります。低用量ピルの仕組みや副作用については、当院コラム「低用量ピルのご相談」で詳しく説明していますので、あわせてご覧ください。一方、妊娠を希望する時期には、排卵誘発剤を使って排卵を促す治療が選択肢になります。当院は分娩には対応していないため、専門的な不妊治療が必要と判断した場合は、連携している医療機関にご紹介しています。

月経不順の診療案内との違いは何ですか?

月経不順の診療案内は原因全般と受診の目安を扱うページで、この記事はその中の代表的な原因のひとつであるPCOSにしぼって詳しく解説しています。

当院には月経不順全般の原因や受診の目安をまとめた月経不順の診療案内もあります。そちらは月経が乱れる原因全般と受診の流れを扱う内容で、この記事はその中でも代表的な原因のひとつであるPCOSにしぼって、診断基準や治療の考え方まで詳しく解説しています。「自分の場合はどれに近いのか知りたい」という方は、あわせて読んでいただくと状況を整理しやすくなると思います。

横浜駅前ながしまクリニックの婦人科でできることは何ですか?

経腟超音波検査による卵巣の状態確認、女性ホルモンや男性ホルモンの採血検査、低用量ピルの処方に対応しています。専門的な不妊治療が必要な場合は連携医療機関へご紹介します。

当院の婦人科は横浜駅きた西口から徒歩約3分、女性医師の副院長・長島麻子(日本産科婦人科学会専門医)が診察を担当しています。経腟超音波検査による卵巣の状態確認、女性ホルモン(LH・FSH・AMH等)や男性ホルモンの採血検査、低用量ピルの処方に対応しており、月経周期や体重の変化、気になる症状の経過をお伺いしながら診断を進めます。排卵誘発剤を使った不妊治療など、より専門的な対応が必要と判断した場合は、連携医療機関へご紹介いたします。完全予約制のため、事前にお電話またはWeb予約システムからご予約ください。

当院の婦人科診療は月・火・木のみです。最新の空き状況は予約画面でご確認ください。

よくある質問

PCOSと診断されたら、妊娠は難しくなりますか?

PCOSでは排卵が起こりにくいことがありますが、妊娠できないと決まるわけではありません。自然に妊娠される方も少なくなく、妊娠を希望する時期に応じて排卵誘発剤などの選択肢を相談しながら進めます。

生理不順以外に、目立った症状がなくてもPCOSの可能性はありますか?

あります。にきびや多毛が目立たず、月経不順だけが症状というケースも珍しくありません。健診などで卵巣の所見を指摘された場合や、月経周期が24日以内・39日以上の状態が続く場合は、一度検査を受けておくと安心です。

PCOSの診断基準が新しくなったというのは本当ですか?

本当です。日本産科婦人科学会が2007年の基準を見直し、2023年9月に新しい診断基準を承認し、同年12月に公表しました。多毛の所見が新たに評価項目に加わり、AMH高値も卵巣の所見の代わりに使えるようになった点が主な変更点です。

にきびや多毛は自然に治まることもありますか?

体重管理やホルモン療法によって症状が落ち着く方もいますが、原因になっているホルモンバランスの乱れが残っていると再び目立ってくることもあります。皮膚科的なケアと並行して、婦人科でホルモンの状態を確認しておくことをおすすめします。

PCOSを放置するとどうなるのが心配なのでしょうか?

無月経や排卵の乱れを治療せずに長期間放置すると、子宮内膜に異常な変化が生じ、子宮内膜増殖症や子宮体がんにつながることがあると報告されています。月経が数か月来ない状態が続いている方は、様子を見続けるのではなく一度ご相談ください。

低用量ピルはPCOSにどう役立ちますか?

低用量ピルには、子宮内膜が長期間はがれ落ちないまま蓄積するのを防ぎ、周期的に月経を起こす働きがあります。妊娠を希望しない時期のPCOSでは、有力な選択肢のひとつです。薬の詳しい仕組みや副作用は、当院コラムのピルのページもご参照ください。

PCOSはどのくらいの人にみられますか?

日本内分泌学会によれば、妊娠が可能な年代の女性の約5〜8%にみられるとされ、めずらしい病気ではありません。月経不順やにきび、多毛など気になる症状がある場合は、一度婦人科でご相談ください。

PCOSが疑われる場合、どのような検査を受けますか?

経腟超音波検査で卵巣の状態を確認するほか、女性ホルモン(LH・FSH・AMH等)や男性ホルモンの採血検査を行います。月経周期や体重の変化など症状の経過もあわせてお伺いしながら診断を進めます。

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監修:横浜駅前ながしまクリニック 副院長 長島麻子(産婦人科・日本産科婦人科学会専門医)

参考文献
[1] 日本内分泌学会. 多嚢胞性卵巣症候群(一般の皆様へ).
[2] 公益社団法人 日本産科婦人科学会. 多囊胞性卵巣症候群に関する全国症例調査の結果と本邦における新しい診断基準(2024)について.
[3] 公益社団法人 日本産科婦人科学会 生殖・内分泌委員会. 多囊胞性卵巣症候群の診断基準(2024)説明資料.

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