胃痛・みぞおちの痛み(心窩部痛)の原因はなに?パーフェクトガイド|横浜市横浜駅前の消化器内科・婦人科・内科|横浜駅前ながしまクリニック

〒221-0835神奈川県横浜市神奈川区鶴屋町2-11-8 4階

045-534-8147

Instagram 予約について

胃痛・みぞおちの痛み(心窩部痛)の原因はなに?パーフェクトガイド

胃痛・みぞおちの痛み(心窩部痛)の原因はなに?パーフェクトガイド|横浜市横浜駅前の消化器内科・婦人科・内科|横浜駅前ながしまクリニック

2025年12月04日

胃の痛みやみぞおち(心窩部)の痛みは、多くの人が経験する身近な不調です。30〜50代でも、突然のみぞおちの強い痛みに不安を感じて病院を受診する方は少なくありません。しかし、内視鏡検査などを受けても、胃がんや潰瘍など明らかな病気が見つからないケースも多く報告されています。

では、このような胃痛・心窩部痛は何が原因で起こるのでしょうか?本記事では、考えられる原因を器質的疾患(臓器に異常が見つかる病気)機能性疾患(検査では異常がない機能の不調)に分けて解説します。さらに、病院に行くべきタイミング(受診の目安)についてもご紹介します。

胃痛・みぞおちの痛み(心窩部痛)とは?

みぞおちの痛み(心窩部痛)とは、胸の下からへその上あたりにかけて感じる上腹部中央の痛みを指します。一般的に「胃が痛い」というと、この心窩部付近の痛みや不快感を指すことが多いです。痛みの程度や性質は人それぞれで、鈍い痛み、キリキリと刺すような痛み、シクシクとした不快感など様々です。また、胃もたれ(上腹部の重苦しさ)や胸やけ(焼けるような感じ)などの症状を伴う場合もあります。これらは総称して消化不良(ディスペプシア)症状とも呼ばれ、食後の膨満感や吐き気を伴うこともあります。消化器内科の外来では日常的によく見られる症状ですが、その背景には実に幅広い原因が存在します。

「腹痛の原因は!?部位別チェックガイド|図でわかる原因疾患と受診の目安」より

胃痛・心窩部痛の主な原因【器質的疾患】

まず、器質的疾患とは、内視鏡や画像検査で炎症・潰瘍・腫瘍など明らかな異常所見が確認できる病気です。胃痛や心窩部痛を引き起こす代表的な器質的疾患には次のようなものがあります。

胃や十二指腸の粘膜がただれて穴が開いた状態です。ピロリ菌感染や鎮痛薬(NSAIDs)の長期使用が主な原因で、みぞおち付近にキリキリとした痛みを生じることが多いです。食後や夜間に痛みが強まる傾向があり、放置すると出血や穿孔といった重篤な合併症を起こすことがあります。

胃の粘膜に炎症が起こる状態です。暴飲暴食や刺激物の摂取、ストレス、ピロリ菌感染など原因は様々です。急性胃炎では突然のみぞおちの痛みや吐き気を生じ、慢性胃炎では胃もたれや食欲不振など慢性的な症状が続くことがあります。

胃酸が食道へ逆流して食道粘膜がただれる病気です。みぞおちから胸にかけて灼けるような痛みや不快感(胸やけ)を感じるのが典型的ですが、胸やけ以外に心窩部の痛みとして自覚されることもあります。症状は横になったときや食後に悪化しやすいです。

胆のうに結石ができたり炎症が起きたりすると、上腹部や右季肋部に激しい痛みが出ます。特に脂っこい食事の後にみぞおちから右上腹部が痛む場合は胆石症を疑います。痛みが背中や右肩に放散することも特徴です。

急性膵炎では、みぞおちから左上腹部にかけて激しい痛みが突然起こり、背中まで響くような痛みになることがあります。アルコール多飲や胆石が原因で生じ、悪心嘔吐や発熱を伴うこともあります。慢性膵炎では持続的な鈍い痛みや食欲低下がみられます。

胸の病気ですが、心臓の下部の梗塞ではみぞおち付近の痛みや違和感として現れることがあります。特に冷や汗を伴う強い痛みや圧迫感が突然起きた場合、胃ではなく心臓のトラブルの可能性も考えられます。迅速な対応が必要です。

早期の胃がんは症状がほとんど出ないことが多いですが、がんが進行して潰瘍を形成すると、みぞおちのあたりに痛みを感じる場合があります。また、胃がんが大きくなると胃の出口が狭くなり、食後の膨満感や吐き気・嘔吐が出現することもあります。ただし胃がん特有の症状は乏しく、胃痛や胃もたれなど他の胃の病気と区別がつきにくいのが現状です。国立がん研究センター中央病院 HPより

以上のように、臓器の明らかな病変によって起こる胃痛の場合、その原因となる病気を治療することが必要です。例えばピロリ菌感染があれば除菌治療、潰瘍があれば粘膜を保護する薬や酸を抑える薬を使います。重大な病気を見逃さないためにも、症状が強い場合や長引く場合は医療機関で検査を受けることが大切です。

胃痛・心窩部痛の主な原因【機能性疾患】

一方で、検査をしても「異常がない」と言われる場合の胃痛もよくあります。臓器自体に目に見える異常がなくとも、胃腸の働きの乱れや過敏によって症状が出る状態を機能性疾患と呼びます。胃痛・心窩部痛に関係する主な機能性疾患には以下のようなものがあります。

機能性ディスペプシアとは、胃カメラなどで胃潰瘍やがんといった明らかな病変がないのに、慢性的にみぞおちの痛みや胃もたれなどの症状が続く病気です。簡単に言えば「検査では異常なしと言われたのに胃が痛い・もたれる」状態で、ストレスや食生活の乱れ、自律神経のバランス不良などが関与すると考えられています。実際、胃の運動機能低下や胃酸分泌の過剰、胃の知覚過敏などが原因として報告されています。日本人の健康診断受診者の約1割強、病院に来る上腹部症状の患者さんでは約半数がこのFDと診断されるとのデータもあります。命に関わる病気ではありませんが、胃の不快症状が長く続くため生活の質が下がってしまいます。

機能性ディスペプシアガイド2023より

American Family Physicianより

IBSは大腸の機能性胃腸障害で、腹痛や腹部不快感に下痢や便秘などの便通異常を伴うのが特徴です。腸の運動や知覚が過敏になっていることが原因とされ、ストレスで症状が悪化しやすい傾向があります。IBSではお腹にガスが溜まりやすく、張った感じ(膨満感)やゴロゴロと鳴る症状もよく見られます。特にガス型のIBSと呼ばれるタイプでは、腸内にごく少量のガスが発生しただけでも強い腹痛や不快感を感じることがあります。これは腸の神経が過敏になり、通常なら気にならない刺激を過剰に痛みとして感じてしまうためです。IBSによる腹痛は下腹部に出ることが多いですが、人によってはおへそ周りからみぞおち付近まで広範囲なお腹の痛みとして訴える場合もあります。

Annual Reviewsより

MAYO CLINIC HPより

食生活や腸内環境の乱れによって腸にガスが過剰に発生すると、お腹が張って痛みを感じることがあります。腸にガスが溜まる原因としては、食物繊維や難消化性の糖質を多く含む食品の摂取、早食いによる空気の飲み込み、腸内フローラのバランス不良などが挙げられます。ガスそのものは一時的な現象で、体に吸収されたり排出されたりしますが、ガスによる膨満感や痛みはときに狭心症や胆石発作の痛みと紛らわしいほど強く感じられることもあります。特に左側の大腸にガスが溜まると心臓の痛みと間違えやすく、右側に溜まると胆のうや虫垂の痛みと似た場所が痛むことがあります。このようなガスによる腹痛も、検査では異常が見つからない機能性の不調と言えるでしょう。なお、過敏性腸症候群の患者さんでは腸のガス産生や排出に関する機能も過敏になっているため、90%以上のIBS患者で客観的にガスの貯留や腹部膨満が確認できたとの報告もあります。

JOHNS HOPKINS MEDICINEより

過敏性腸症候群(IBS)におけるガスと膨満感に関する研究より

機能性の胃痛や腹痛の場合、「異常なし」と言われると不安になるかもしれません。しかし機能性ディスペプシアIBSは医学的にきちんと定義された病気であり、けっして「気のせい」や「思い込み」ではありません。症状がつらい場合は遠慮せず医師に相談し、適切な治療(胃腸の運動を良くする薬やストレスに対するアプローチなど)を受けることが大切です。

危険な症状と受診の目安

胃痛の多くは深刻な病気によらないものとはいえ、中には見逃してはいけないサインもあります。次のような症状がある場合は、早めに消化器内科など医療機関を受診することをおすすめします。

  • 冷や汗が出るほどの激しい痛み:突然耐えられない激痛がみぞおちに起こった場合は緊急性があります。胃潰瘍の穿孔や急性膵炎、心筋梗塞など重大な状態の可能性があります。迷わず救急受診してください。
  • 吐血がある、または便が黒い(タール便):吐いた物に血が混じる、便が黒色になる場合、消化管からの出血が疑われます。潰瘍からの出血や胃がんによる出血など放置できない状態です。こうした消化管出血の疑いがある時も、夜間でもすぐに受診が必要です。
  • 発熱や繰り返す嘔吐を伴う場合:痛みに加えて38℃以上の熱が出ている、嘔吐が止まらないといった場合は、急性の炎症(胆嚢炎・膵炎など)や腸閉塞などの可能性があります。特に嘔吐が続くと脱水にも陥りやすいので注意しましょう。
  • 体重減少や貧血症状がある場合:最近明らかにやせてきた、検査で貧血と言われた、ふらつきや動悸など貧血の症状が出ているといった場合は注意が必要です。慢性的な出血を伴う病気(潰瘍・がんなど)や吸収不良の可能性があります。特に明確なダイエットをしていないのに体重が減少しているときは必ず医療機関で調べてもらいましょう。
  • 食べ物が飲み込みにくい(嚥下困難)場合:食事中につかえる感じがあったり、固い物が飲み込みづらい症状は食道や胃の出口の狭窄を示唆します。胃がんが進行して胃の出口が塞がりかけている場合や、食道がん・食道潰瘍、重度の逆流性食道炎でも起こりえます。嚥下困難は重大な病気の初期症状のこともあるので見逃さないでください。
  • 痛みが長く続く・繰り返す場合:軽い痛みであっても1〜2週間以上持続する場合や、何度も再発を繰り返す場合は、一度検査を受けることを検討しましょう。機能性ディスペプシアのように命に関わらないケースも多いですが、症状が長引く裏にピロリ菌感染や慢性胃炎など治療すべき原因が隠れている可能性もあります。また症状が長期間続くことで生活に支障が出ている場合も、治療により改善できることがあります。

以上のようなポイントを目安に、「これはおかしい」と感じる症状があれば早めに専門医を受診することが大切です。一方で、検査の結果異常がなく機能性の胃痛と分かった場合は、必要以上に不安になることはありません。生活習慣の見直しやストレス対策、医師から処方されるお薬の服用などで、多くの場合症状は和らげることができます。胃腸の不調とうまく付き合いながら、無理せず健康管理をしていきましょう。

Q&A

A. 軽い胃痛であれば、まずは市販の胃薬(制酸薬や消化薬など)で様子を見るのも一つの方法です。ただし、痛みが激しい場合や繰り返す場合、上記のような危険サインがある場合は自己判断せず受診してください。市販薬で一時的に良くなっても、症状がぶり返す場合は原因となる病気が隠れている可能性があります。特に黒い便が出た、体重が減ったなどの症状があるときは迷わず病院へ行きましょう。

A. いいえ、気のせいではありません。 検査で異常が見つからない胃痛は機能性ディスペプシアなどと診断されることがあります。ストレスや胃の運動機能の乱れなどで痛みやもたれ感が生じる、れっきとした病気です。検査で問題がなくても症状に苦しんでいる場合は、遠慮なく医師に相談しましょう。胃酸を抑える薬や胃の働きを助ける薬、漢方薬、生活習慣の指導などで症状が改善するケースも多いです。「異常なし」と言われて落ち込む必要はありません。

A. はい、あります。強い緊張や不安を感じると自律神経のバランスが乱れ、胃腸の動きが悪くなったり胃酸が過剰に分泌されたりして、胃痛や胃もたれが生じることがあります。いわゆる「神経性胃炎」と呼ばれる状態です。また、ストレスは機能性ディスペプシアやIBSの症状悪化とも深く関係しています。ストレスを完全になくすことは難しいですが、リラックス法を試したり十分な睡眠を取るなど、胃腸に優しい生活を心がけましょう。

A. 一般的には胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)が最も有用な検査です。食道・胃・十二指腸の粘膜を直接観察し、炎症や潰瘍、腫瘍がないか調べます。また、ピロリ菌感染の有無を調べる検査(尿素呼気試験や迅速ウレアーゼ試験など)も胃痛の原因検索に行われます。必要に応じて超音波検査やCT検査で胆石や膵臓の炎症を調べたり、血液検査で炎症反応や貧血の有無を確認したりします。これらの検査結果を総合して、器質的疾患がないと判断されれば機能性の胃痛(FDなど)と診断されます。

A. はい、いくつかあります。まず暴飲暴食や刺激物を避けることです。脂っこいものや香辛料、アルコールやカフェインの過剰摂取は胃痛の原因になりやすいです。よく噛んでゆっくり食べ、規則正しい食生活を心がけましょう。また、ストレスを溜めないことも大切です。適度な運動や趣味の時間を持つなど、リラックスする時間を作ってください。睡眠不足も胃腸の働きを乱す原因になります。さらに、喫煙は胃酸分泌を増やし胃粘膜を傷つけるので、この機会に禁煙も検討しましょう。これらの生活習慣の改善が、胃痛の予防や症状軽減につながります。

予約はこちらから

関連ブログ

TOP