2025年6月01日
潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC)は、大腸の粘膜に慢性的な炎症とびらん・潰瘍が起こる病気です。原因ははっきり解明されておらず完治させる治療法もありませんが、適切な治療によって症状のない状態(寛解期)を維持することが可能です。
https://www.eapharma.co.jp/news/2023/0123
症状が悪化する活動期(再燃期)には腹痛・下痢・血便などが現れ、症状が落ち着く寛解期と再燃を繰り返すことが特徴です。国内の患者数は2019年時点で約22万人とされ(現在も増加傾向)、20~30代の若年成人に多い病気ですが近年は50代以降の発症も増えています。潰瘍性大腸炎は厚生労働省から指定難病にも指定されており、医療費助成の対象となる疾患でもあります。
潰瘍性大腸炎の患者さんにとって、「食事」は日常生活で特に気になるポイントではないでしょうか。寛解期の食事・活動期の食事で気を付けることは何か、再燃を防ぐ食事はあるのか、といった疑問をお持ちの方も多いと思います。実際の外来でも、よくご質問をいただくことが多いです。
この記事では潰瘍性大腸炎の寛解期と活動期それぞれに適した食事について、根拠に基づいた情報をわかりやすく解説します。さらに、横浜で潰瘍性大腸炎のご相談先をお探しの方に向けて、当院(横浜駅前ながしまクリニック)でのサポート内容もご紹介します。
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潰瘍性大腸炎とは?症状・原因・治療法をわかりやすく解説(当院ブログ解説)👇

潰瘍性大腸炎の活動期(再燃期)の食事ポイント
潰瘍性大腸炎の活動期(症状がある時期)には、大腸の炎症が強まり下痢や腹痛、出血などがあるため、腸への負担を減らす食事が基本です。
日本消化器病学会Hpより
https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/disease/pdf/ibd_2023.pdf
具体的には以下のようなポイントを心がけましょう。
- 消化の良い食事: 胃腸に優しい調理法で、柔らかく煮込んだ野菜やお粥・うどんなど消化しやすい主食を選びます。食物繊維が多い食品(キノコ類・ゴボウ・海藻類など不溶性繊維を多く含むもの)は腸を刺激しやすいため、症状が強い間は控えめにします。
- 高エネルギー・高たんぱく: 活動期は体力消耗が激しいため、エネルギーと良質なたんぱく質を十分に摂取することが大切です。脂身の少ない肉や魚、豆腐や卵など消化に比較的良いタンパク源を意識して取りましょう。ただし脂肪分の多い食事は下痢を悪化させる場合があるため低脂肪を心がけます。
- 低残渣(低食物繊維): 腸に未消化のまま残りやすい繊維質を減らすことで、大腸への刺激やガス発生を抑えます。野菜は繊維が柔らかくなるまで十分に加熱し、果物は果汁や裏ごししたピューレなどでビタミン補給すると良いでしょう。ナッツ類や豆の皮なども症状が強い時期は避けます。
- 刺激物を控える: 唐辛子など香辛料の強い料理、アルコール類、コーヒーや紅茶などカフェインを多く含む飲み物、炭酸飲料などは腸粘膜を刺激しやすいため控えめにします。また、極端に熱すぎるもの冷たすぎるものも腸への刺激となり得るので注意しましょう。
- 少量頻回に: 一度に大量の食事を摂ると腸に負担がかかるため、1回の食事量を減らし回数を増やす工夫も有効です。よく噛んでゆっくり食べることも消化吸収を助けます。
- 水分・電解質補給: 下痢が続く場合は脱水や電解質の不足に注意が必要です。水だけでなく塩分やカリウムを含む経口補水液、スープ、味噌汁などでこまめに水分補給しましょう。特に暑い季節や発熱時は意識して十分な水分を摂取してください。
参考になる食事一覧は下記サイトにわかりやすく一覧がまとまっています👇
https://www.mochida.co.jp/believeucan/enjoyfood/01.html
以上のように、活動期には「消化に良く刺激の少ない、低脂肪・低残渣の食事」が基本となります。卵や白身魚、脂肪の少ない鶏肉などは良質なたんぱく源で比較的消化も良いため摂取しやすい食材です。一方、揚げ物など脂っこい料理や香辛料の効いた刺激物、生野菜や消化がしにくい、繊維質の多い食品は症状が落ち着くまでは控えた方が無難です。また症状が重い場合は、医師の判断で経腸栄養(エレンタールなどの成分栄養剤)による栄養療法が用いられることもあります。成分栄養剤は必要な栄養素を吸収しやすい形で摂取できるため炎症が強い腸を一時的に休める助けとなりますが、それだけで病変を治すことは難しく、あくまで補助療法の位置付けになります。重症時には無理に食事を摂らず、主治医と相談しながら適切な栄養補給方法を選択してください。
潰瘍性大腸炎の寛解期の食事ポイント
症状が落ち着いている寛解期には、基本的に過度な食事制限は必要ないとされています。寛解期の潰瘍性大腸炎患者さんでは、特定の食品が直接症状に影響を与える可能性は低く、食事そのものは病気にほとんど影響しないと報告されています。そのため、寛解期にはストレスにならないように栄養バランスの取れた普通の食事を楽しむことが大切です。
具体的なポイントとしては次のとおりです。
- バランスの良い食事: 炭水化物・たんぱく質・脂質に加え、ビタミンやミネラル、食物繊維もバランスよく摂りましょう。特に日本人は食物繊維が不足しがちであり、腸内環境を整えるためにも野菜や果物、きのこ類、海藻類なども適度に取り入れてください(ただし個人差があり、過去に食物繊維で調子を崩した方は主治医と相談しましょう)。
- 暴飲暴食を避ける: 寛解期だからといって胃腸に負担をかける暴飲暴食は避けるべきです。規則正しい食習慣と腹八分目を心がけ、アルコールも過度に摂り過ぎないよう注意します。
- 自分に合わない食品は無理に摂らない: 寛解期でも、人によっては特定の食べ物でお腹が緩くなることがあります。乳糖不耐症がある方は牛乳で下痢しやすいですし、脂っこい料理で胃もたれする方もいます。過去の経験から「これは調子が悪くなる」という食品があれば無理に摂らず、代わりの食品で栄養を補いましょう。
- 栄養状態の維持: 長期にわたる炎症で貧血や低栄養になりやすい病気ですので、寛解期のうちにしっかり栄養を蓄えておくことも大切です。特に鉄分やタンパク質、カルシウムなど不足しやすい栄養素を意識して摂取し、必要に応じてサプリメントの利用も主治医に相談してください。
- 腸内環境を整える: 最近の研究では、腸内細菌のバランスが潰瘍性大腸炎に影響を与えることが注目されています。ヨーグルトや発酵食品などプロバイオティクスを含む食品は腸内の善玉菌を増やし腸内環境を整える効果が期待できます。実際、ビフィズス菌を含む発酵乳が潰瘍性大腸炎の症状改善に有効だったとの報告もあります。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37836478/
現在までのところ、潰瘍性大腸炎の再燃を確実に防ぐ「特別な食事法」は確立されていません。さまざまな食事療法(特定の成分除去食など)が研究されていますが、その有効性についてはエビデンスが十分ではなく、食事の効果には不確かな部分が残っています。したがって、寛解期には必要以上に食べ物を制限するよりも、ストレスの少ない範囲で好きなものをバランス良く食べることが良いでしょう。ただし再燃を防ぐ基本はあくまで薬による治療継続と定期的な医師のフォローです。食事だけで病気をコントロールしようとせず、処方されたお薬は勝手に中断せずに服用を続けることが最も大事です。
横浜駅前ながしまクリニックでのご相談・受診について
潰瘍性大腸炎の食事管理は、上記のように寛解期と活動期でポイントが異なります。症状や体調には個人差があるため、「この食べ物は大丈夫かな?」と不安な場合は、自己判断で過度に制限せず専門の医師や管理栄養士に相談することをおすすめします。当院でも食事に関するご相談に対応しておりますので、お気軽にご相談ください。
横浜駅前ながしまクリニックは、横浜駅から徒歩圏内にある消化器内科クリニックです。当院では潰瘍性大腸炎をはじめとする炎症性腸疾患の診療に加え、胃腸の専門検査である胃カメラ・大腸カメラ(内視鏡検査)も日常的に行っています。健康診断や人間ドックでの内視鏡検査にも対応しており、胃カメラ・大腸カメラの検査実績は合わせて1万件以上と豊富な経験があります。潰瘍性大腸炎が疑われる症状(血便や下痢、腹痛など)がある方の精密検査から、すでに潰瘍性大腸炎と診断され経過をフォロー中の方のご相談まで、幅広く対応いたします。
お腹の不調や潰瘍性大腸炎の食事管理でお困りの際は、ぜひ横浜駅前ながしまクリニックにご相談ください。経験豊富な消化器内科専門医が、丁寧にお話を伺いながら検査・治療や日常生活のアドバイスまでサポートさせていただきます。つらい症状を抱え込まず、専門家と一緒に適切な治療と生活管理で潰瘍性大腸炎と上手に付き合っていきましょう。皆さまの健康をサポートするため、スタッフ一同親身になって対応いたします。どうぞ安心してご来院ください。
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