夏の気になる腋の臭い!実は保険診療で解決するって知ってました!?|横浜市横浜駅前の消化器内科・婦人科・内科|横浜駅前ながしまクリニック

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夏の気になる腋の臭い!実は保険診療で解決するって知ってました!?

夏の気になる腋の臭い!実は保険診療で解決するって知ってました!?|横浜市横浜駅前の消化器内科・婦人科・内科|横浜駅前ながしまクリニック

2025年6月08日

夏になると「ワキの臭い」や汗ジミが気になりますよね。院長も大量に汗をかくので年中困っています…。

しかも暑い時期に大量の汗をかくと、細菌が繁殖していわゆるワキガ(腋臭症)の原因にもなります。しかし、実は汗を異常にかく体質そのものが治療できるケースもあるって知ってました?それが原発性腋下多汗症(げんぱつせい えきか たかんしょう)です。これは特定の病気によらずワキ(腋の下)に必要以上の大量の汗をかく症状で、10代から発症することも多く、日常生活に支障をきたすことがあります。

本記事では、原発性腋下多汗症についてわかりやすく解説し、気になる外用薬(塗り薬)やボトックスによる治療法を中心に、生活上の工夫も含めてわかりやすく紹介します。

汗と臭いの悩みを解決するヒントになれば幸いです。

maruho HPより参照 https://www.maruho.co.jp/medical/articles/hyperhidrosis/support/1st_step01/index.html

原発性腋下多汗症とは何か

原発性腋下多汗症は、腋の下(ワキ)に左右対称に過剰な発汗が起こる疾患の名称です。暑さや運動といった通常の原因を超えて、必要以上に汗が出ることで、衣服に汗ジミがついたり、滴るほど汗ばむこともあります。ポイントは「原発性」であることです。これは甲状腺疾患や更年期障害など他の病気(続発性多汗症)によるものでなく、原因となる病気がないのに多汗になってしまうという意味です。発症年齢は若年(思春期~25歳以下)であることが多く、男女ともに見られます。また、この症状を持つ人は決して珍しくなく、人口の約5〜6%、およそ18人に1人程度いるとされています。単なる「汗っかき」とは異なり、日常生活に支障をきたすレベルの異常な発汗であり、れっきとした治療可能な疾患の一つです。

症状と診断方法

原発性腋下多汗症の主な症状は、腋の下の過度な発汗です。例えば、少し動いただけでシャツの脇部分がびっしょり濡れてしまったり、緊張したときに汗が滴り落ちるほど出る、などが当てはまります。また汗による臭いも気になる場合があります。汗そのものは無臭ですが、皮膚の常在細菌によって分解されると臭い(いわゆるワキガ臭)の原因になります。大量に汗をかく人は臭いも強くなりがちなため、周囲の目を気にして「汗ジミが恥ずかしくて電車でつり革をつかめない」「人に会うと汗が出てしまい不安」など精神的なストレスにつながることもあります。

診断方法としては、まず他の病気が原因ではないことを確認します(必要に応じて甲状腺機能などの検査が必要になります。その上で、症状の経過や特徴を問診し、臨床的に診断します。原発性局所多汗症には国際的な診断基準(Hornbergerらの基準)があります。具体的には「原因のない局所的な過剰発汗が少なくとも6か月以上続いており、以下の項目のうち2つ以上に当てはまる場合」に多汗症と診断します。

  • 25歳以下で症状が始まった
  • 左右ほぼ対称に汗が出る
  • 睡眠中は発汗しない(起きているときのみ発汗する)
  • 週に1回以上、多量の発汗エピソードがある
  • 家族にも同様の症状の人がいる(家族歴)
  • 発汗によって日常生活に支障が出ている

上記に当てはまり、他の原因がなければ原発性腋下多汗症と診断されます。診察では、症状の程度を評価するためにHDSS(多汗症重症度スケール)という質問票を用いることもあります。場合によっては汗の検査(発汗テスト)として、ヨウ素で皮膚を染めて汗の出る範囲を可視化する試験(Minorテスト)などを行うこともあるとされていますが、患者さんの訴えと症状で診断は概ね可能と考えられます。

日本皮膚科学会 原発性局所多汗症診療ガイドラインより参照

https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/takansho2023.pdf

外用薬の種類と作用機序

ガイドラインではまず外用薬(塗り薬)による治療を第一選択としています。外用療法で効果が得られない場合、または副作用等で続けられない場合にボツリヌス毒素注射が第二選択となります。https://gskpro.com/ja-jp/products-info/botox/hh/diagnosis/

それでも改善しない重症例では、内服薬(抗コリン薬の飲み薬)や汗腺吸引術、精神的アプローチ、交感神経遮断手術(※重篤な副作用のリスクがあるため慎重に検討)などが検討となります。このように、侵襲が少なく費用負担の少ない治療から段階的に試みる方針が取られています。

では第一選択の外用薬にはどのような種類があるのでしょうか?大きく分けて2種類あります。

制汗剤(抗汗作用のある外用薬)

市販の制汗剤には塩化アルミニウムなどが含まれているものがあり、汗腺の開口部(汗の出口)で汗を物理的にブロックして汗を減らす作用があります。アルミニウム塩は汗と反応して汗管内に沈着物を形成することで、一時的に汗の排出を止めることができます。その結果、皮膚表面に出てくる汗の量を抑えます。海外では塩化アルミニウム製剤が古くから多汗症の基本治療として用いられてきました。日本でも市販の制汗スプレーやロールオン製品などがこれに当たりますが、皮膚刺激が出ることもあるため注意が必要です。

mayo clinic HPより

https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/hyperhidrosis/diagnosis-treatment/drc-20367173#:~:text=The%20following%20suggestions%20may%20help,control%20sweating%20and%20body%20odor

抗コリン作用を持つ外用薬(処方薬)

近年になって日本で新たに登場したのが抗コリン薬の外用剤です。代表的なものはエクロック®ゲル5%(一般名ソフピロニウム臭化物)とラピフォート®ワイプ(一般名グリコピロニウムトシル酸塩)で、それぞれ2020年と2022年に原発性腋窩多汗症の治療薬として承認されました。抗コリン薬とは、汗を出す神経伝達物質であるアセチルコリンの作用をブロックする薬剤です。エクリン汗腺(通常の汗を出す腺)にはアセチルコリンの受容体(ムスカリン受容体)があり、これが刺激されると汗が分泌されます。抗コリン外用薬はこの受容体を遮断し、神経から汗腺への「汗を出せ」という信号を遮ることで発汗を抑制します。つまり、原因に働きかけて汗そのものを減らす効果が期待できる薬です。

科研製薬株式会社 Hpより https://ecclock-info.jp/

maruho Hpより https://www.maruho.co.jp/medical/products/rapifort/index.html

これら抗コリン外用薬の登場により、原発性腋下多汗症の治療の幅は大きく広がりました。日本皮膚科学会のガイドラインでも、「患者への侵襲と費用負担が少ない治療から選択すべき」との記載に基づき、抗コリン外用薬が第一選択薬の一つになっているとされています。抗コリン外用薬の長期投与により高い有効性が持続し、生活の質が改善したとの報告も多々あります。(実際に院長も使用してみましたが、ピタッと汗が止まりました!!効果絶大です。)

抗コリン外用薬の使い方は簡便で、エクロックゲルは1日1回両脇に塗布、ラピフォートワイプも1日1回両脇を拭き取るように塗布します。いずれも継続使用で効果が維持でき、治療を中止すれば数日〜数週間で元の発汗量に戻る対症療法です。副作用として、塗布部位の皮膚のかぶれや発赤など軽度の刺激症状が起こる場合があります。また薬の成分上、微量ながら経皮吸収されることで口の渇きなど全身的な抗コリン作用(自律神経への作用)が出ることもあるとされています。ただし通常はごく軽度で、安全に使用できる薬剤と考えられます。アルミニウム製剤で刺激が強く使えなかった方や、ボトックス注射に抵抗がある方でも、まずは手軽な外用薬から試してみる価値は十分にあるでしょう。

ボトックス治療の効果と安全性

ボトックス治療とは、A型ボツリヌス毒素製剤(商品名ボトックス等)を腋に局所注射する治療法です。ボツリヌス毒素は神経から汗腺への信号伝達物質(アセチルコリン)の放出をブロックすることで、汗腺の働きを抑制します。その結果、注射した部位の発汗が大幅に減少します。実際、ボトックス注射は原発性腋窩多汗症の汗の産生を有意に減らし、症状の重症度や生活の質(QOL)を改善することが証明されています。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33619611/#:~:text=week%20follow

注射後数日で効果が現れはじめ、効果は約4〜6か月持続するとされています。そのため発汗を抑えるには半年ごとに定期的な再注射が必要です。

治療時は、細い針で片方の脇に10~20か所程度少しずつ薬液を注入します。注射の痛みは軽度で、多くの場合は麻酔のクリームアイスパックで冷やして和らげながら行います。施術時間も片脇数分程度と短時間です。安全面でも、ボトックス治療は比較的安全で副作用が少ないことが確認されています。注射部位に一時的な痛みや内出血が起こることがありますが、大きな副作用はまれです。ごく一部の人に一時的な筋力の低下(注射部位周辺の筋力が少し弱くなる)が見られることもありますが、これは汗腺に分布する交感神経がブロックされる際にごく近くの運動神経にも作用するためで、短期間で自然に改善します。

なお、国内外の治療ガイドラインでは、ボツリヌス毒素療法は「外用療法で十分な効果が得られない場合」の第二選択肢と位置付けられています。日本でも重度の原発性腋窩多汗症に対して健康保険が適用されており、症状の強い方には有効な治療オプションです。ボトックス治療は高い効果が期待できますので、「市販の制汗剤では全く効果がない」「手術は避けたいが何とかしたい」「外用薬で改善に乏しかった」という方に適した方法と言えるでしょう。

医師に相談するタイミング

「汗っかきだから仕方ない」と思い込んで、つらい思いを抱えながら誰にも相談できない方は少なくありません。実際、原発性腋下多汗症の有病率は約6%と高い一方で、医療機関を受診している人は約6%に過ぎず、継続治療となると1%以下という報告もあります。多くの患者さんが「病気とは思わなかった」「治療できるなんて知らなかった」「恥ずかしくて受診をためらう」といった理由で我慢し続けているのです。

しかし、原発性腋下多汗症はれっきとした疾患であり、効果の高い治療法がいくつも存在します。我慢せず専門家に相談することをおすすめします。

まとめ

夏場の気になる腋の汗と臭いに悩む方に向けて、原発性腋下多汗症という疾患とその対策について解説しました。これは決して稀な症状ではなく、多くの方が抱える悩みの一つですが、幸い現在は有効な治療法が存在します。まずは外用薬など手軽な保険治療から始め、それでも改善しない場合はボトックス注射など専門的な治療で大きな効果が期待できます。大切なのは「自分だけがこんな思いをしている」と抱え込まないこと

汗や臭いの悩みは専門医にとって日常的な相談事ですので、恥ずかしがらずに扉をたたいてみてください。適切なアドバイスと治療で、夏でも快適で安心して過ごせる日常を取り戻しましょう。

当院でもご相談、治療を承っておりますので、ご希望の方は内科外来でご予約ください!!

この夏、悩まされていた脇汗の悩みを改善し、楽しい夏を過ごしませんか?

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