2025年12月26日
健康診断で「脂肪肝」と言われると、多くの方が「今すぐ何か大変な病気なの?」「どんな検査が必要?」と不安になります。
脂肪肝の検査は、ざっくり言うと次の3点を確かめるために行います。
- 肝臓に脂肪がたまっているか(脂肪化)
- 肝臓が傷んでいないか(炎症)
- 肝臓が硬くなっていないか(線維化)
特に大切なのは3つ目の線維化(肝臓の硬さ)です。線維化が進むと、将来的に肝硬変や肝がんなどのリスクが高くなる可能性があるため、近年は“体に負担の少ない検査(非侵襲的検査)”を組み合わせてリスクを見分ける方針が国際的なガイダンスでも示されています。
また、メタボ関連のNASH/NAFLDが肝硬変に進むことがあり、NAFLDに起因する肝がんが増えている点が説明されています。


まず行われやすい検査1:腹部エコー(超音波)で「脂肪があるか」を見る
脂肪肝の確認で一般的なのが腹部エコー(超音波検査)です。
超音波は放射線を使わないため被ばくがなく、比較的短時間で受けられる検査として多くの医療機関で行われています。
腹部エコーでは、肝臓が脂肪で“白っぽく見える”などの所見を手がかりにします。
ただし、エコーは脂肪の有無の確認に強い一方、線維化(硬さ)を正確に決める目的には限界があるため、必要に応じて次のステップの評価につなげます。

まず行われやすい検査2:採血で「炎症」と「背景(生活習慣病)」をチェック
脂肪肝でよく見る採血項目は、次のようなものです。
- AST(GOT)・ALT(GPT):肝細胞の傷み(炎症)の目安
- γ-GTP:飲酒の影響や胆道系などの要素が関係することがある
- 血小板:線維化が進んだ場合の手がかりになることがある(後述のFIB-4に含まれます)
ここで大事な点を1つ。肝機能(AST/ALT)が正常でも、線維化が進んでいる人が“ゼロ”とは言い切れません。
だからこそ、採血だけで完結させず、線維化評価(FIB-4など)を組み合わせるのが基本的な考え方です。
いちばん重要:線維化(肝臓の硬さ)を見分ける検査
ステップ1:FIB-4(フィブ・フォー)で「まずふるい分け」
FIB-4は、年齢・AST・ALT・血小板から計算する指標で、線維化リスクを簡便に評価できます。
国際ガイダンスでも、FIB-4は“最初の評価(一次スクリーニング)”として位置づけられています。
- 低リスク:生活改善+定期フォロー
- 中間〜高リスク:追加検査(血液マーカーや肝硬度測定など)を検討
という流れが、現場では分かりやすい運用です。
ステップ2:M2BPGiで「採血から線維化の手がかりを追加する」
M2BPGi(Mac-2 binding protein glycosylation isomer)は、肝臓の線維化と関連して変化する“線維化マーカー”の一つで、慢性肝疾患で線維化評価に使われます。
- 数値が高いほど、線維化が進んでいる可能性が上がる
- ただし、これだけでNASHや肝硬変が確定するわけではない
- 炎症が強いと解釈が難しくなることがある(線維化だけでなく炎症の影響も受けうる)
NAFLD(脂肪肝)で、M2BPGiが線維化の重症度と関連し、進んだ線維化の評価に役立つ可能性を示した報告もあります。
一方で、M2BPGiは万能ではなく、他の検査(FIB-4、画像による硬さの測定など)と組み合わせて判断するのが現実的です。
ステップ3:肝硬度測定(エラストグラフィ)で「硬さ」をより直接見る
FIB-4やM2BPGiなどでリスクが疑われる場合、次に検討されるのが肝硬度測定(例:VCTE/いわゆるフィブロスキャン等)です。
非侵襲的検査としてもその立ち位置を確立している検査です。

脂肪肝の検査の全体像(結論)
脂肪肝の検査は、次の順番で検査することが多いです。
- 腹部エコー:脂肪があるか確認
- 採血(AST/ALTなど):炎症と背景を確認
- FIB-4:線維化リスクをまずふるい分け
- 必要に応じて M2BPGi や 肝硬度測定:線維化を追加評価
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の診断・治療の代替ではありません。検査値の意味や次の方針は、年齢、飲酒量、服薬、合併症などで変わるため、最終的には主治医とご相談ください。
