 
      PMS(月経前症候群)
 
      PMS(月経前症候群)

PMS(Premenstrual Syndrome、月経前症候群)とは、生理(月経)の3~10日前から心や体に様々な不調が現れ、月経が始まると症状が軽減・消失する状態を指します。月経のある女性の約7~8割は生理前に何らかの不快な症状を感じると言われていますが、PMSはその症状が特に強く、日常生活に支障をきたすレベルのものを指します。症状の現れ方には個人差が大きく、軽いものから重いものまで様々です。また、一人ひとり症状が異なるだけでなく、同じ人でも月によって症状や程度が変化するため、「自分の性格や体質の問題」と見過ごされやすい特徴があります。
PMSの症状は非常に多岐にわたり、その種類は200種類以上とも言われます。症状は大きく分けて身体的なもの(体の症状)と精神的なもの(心の症状)に分類できます。それぞれ代表的な症状の例を挙げます。
こうした症状が毎月、生理前に繰り返し現れるため、「生理前になると別人のように調子が悪い」と感じる方もいます。特に精神面の症状が重い場合はPMDD(月経前不快気分障害)と診断されるケースもあります(※PMDDについては後述)。いずれにせよ、月経前の不調が原因で「仕事にならない」「家族や同僚に当たって自己嫌悪に陥る」など日常生活に支障を感じる場合は、ぜひ一度ご相談ください。
PMSの明確な原因はまだ完全には解明されていません。一般的には女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)の分泌量変動が大きく関与していると考えられています。月経周期の中で排卵後~月経前(黄体期)にかけてこれらホルモンが急激に低下することで、体と心に様々な不調を引き起こすと考えられます。この急激なホルモン低下に伴い、脳内の神経伝達物質(セロトニンやGABAなど)の働きにも乱れが生じることが報告されており、精神面の不安定さに影響している可能性があります。ただし女性ホルモンの変動だけが原因ではなく、ストレスや生活環境の変化、体質など様々な要因が組み合わさってPMS症状を引き起こすと考えられています。
PMSの明確な原因はまだ完全には解明されていません。一般的には女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)の分泌量変動が大きく関与していると考えられています。月経周期の中で排卵後~月経前(黄体期)にかけてこれらホルモンが急激に低下することで、体と心に様々な不調を引き起こすと考えられます。この急激なホルモン低下に伴い、脳内の神経伝達物質(セロトニンやGABAなど)の働きにも乱れが生じることが報告されており、精神面の不安定さに影響している可能性があります。ただし女性ホルモンの変動だけが原因ではなく、ストレスや生活環境の変化、体質など様々な要因が組み合わさってPMS症状を引き起こすと考えられています。
PMSを確定する特別な検査法はありません。まずは産婦人科で詳しく症状の経過をお聞きし(月経周期や症状が出る時期、症状の種類、妊娠・出産歴、生活環境などを問診します)、月経前に症状が現れて月経開始後に消失するパターンかどうかを確認します。
また症状に似た他の疾患が隠れていないか(例えば子宮内膜症や子宮筋腫、甲状腺機能の異常など)を調べるため、必要に応じて血液検査や超音波検査でホルモンバランスや子宮・卵巣の状態をチェックします。数か月分の基礎体温表や症状日記をつけていただき、症状と月経周期の関連性を記録してもらうことも診断に有用です。こうした総合的な確認により、月経前の症状が毎回繰り返し起こっている場合はPMSと診断します。(※米国産婦人科学会の診断基準では「直近3周期連続で月経前5日に症状が出現し、月経開始後4日以内に消失する」場合にPMSと定義する、といった規定があります。)
PMSの治療法には、生活改善によるセルフケアから薬物療法まで段階的なアプローチがあります。症状の程度や患者様のご希望に応じて適切な方法を組み合わせていきます。「毎月数日我慢すればいいだけ…」と無理を重ねてしまう方も少なくありませんが、PMSのつらい症状は適切な治療や工夫で改善が可能です。一人で抱え込まず、つらい症状は遠慮なくご相談ください。
まずは生活習慣の見直しによって症状が和らぐケースが多くあります。以下のようなセルフケアを心がけましょう。
これらのセルフケアを続けることで、「生理前になると調子が悪い」というご自身の傾向をコントロールしやすくなります。実際、「基礎体温や症状カレンダーをつけて自分の体調パターンを把握するだけでも対処しやすくなる」とされています。まずはできる範囲で生活習慣を見直し、セルフケアを取り入れてみましょう。
セルフケアで改善が難しい場合や症状が強い場合は、お薬による治療を検討します。当院では患者様の症状やご希望に合わせ、以下のような薬物療法を組み合わせて行っています。
これらの薬物療法は症状の程度やライフスタイルに合わせて組み合わせることも可能です。患者様一人ひとりに最適な治療プランをご提案いたします。PMSは適切な治療によって症状が大きく改善する可能性がありますので、つらい症状を我慢せずにご相談ください。
「生理前は誰でもイライラするもの」「毎月のことだから仕方ない」と思い込んで、PMSを放置していませんか。確かに月経前の不調自体は珍しいことではありませんが、症状が強い場合は治療で軽減できる可能性があります。毎月10日間つらい日が続くとしたら、1年間で約120日(約3分の1)も不調に悩まされる計算です。月経は閉経まで長く付き合う身体のリズムだからこそ、我慢し続けるのではなく早めに対策して快適に過ごせる時間を増やしましょう。
当院ではPMSに関するご相談や治療を承っております。産婦人科専門医である女性医師が担当しますので、「男性医師には話しにくい…」という方も安心してお越しください。問診を丁寧に行い、いきなり内診台に上がっていただくようなことは基本ありませんのでご不安な点は何でもお話しください。つらい症状を抱えたまま一人で悩み続ける必要はありません。少しでも「おかしいな」「しんどいな」と感じたら、お気軽に当院へご相談ください。スタッフ一同、あなたの毎月のつらさを軽減し、笑顔で過ごせるお手伝いをいたします。
PMDD(月経前不快気分障害)はPMS症状の中でも、とりわけ精神的な症状が著しく強く、日常生活に支障を来す場合の病態を指します。具体的には、生理前1~2週間の時期に激しい抑うつ気分や絶望感、極度のイライラや怒りっぽさ、不安感などが顕著で、自分では感情をコントロールできない状態です。PMDDでは対人関係に支障が出たり、仕事が手につかなくなるほど精神症状が深刻で、うつ病の一種として扱われることもあります。治療もPMSより踏み込んだアプローチが必要で、抗うつ薬(SSRI)による治療が第一選択となることが多いです。一方、PMSは主に身体症状と軽度~中等度の精神症状の組み合わせで、生理開始とともに症状がスッと消えるのが通常です。生理後まで落ち込んだ状態が続くわけではない点が、月経周期に関係なく常に抑うつ症状が出るうつ病との違いでもあります。生理前の気分変動が「明らかに異常で耐えがたい」というレベルならPMDDの可能性がありますので、その場合は産婦人科だけでなく心療内科的への受診も必要です。
PMSの治療・相談は産婦人科で受けられます。当院の婦人科外来でも「生理前の不調かも?」という初めてのご相談を多数お受けしていますので、お気軽に受診してください。診察ではまず医師が症状や月経周期について丁寧にお話を伺います。いきなり内診(内科検診)を行うことはほとんどありませんのでご安心ください。必要に応じて血液検査でホルモンバランスを調べたり、超音波検査で子宮や卵巣に異常がないか確認したりすることもあります。これはPMS以外の婦人科疾患(子宮筋腫や子宮内膜症、甲状腺機能の異常など)が隠れていないかチェックするためです。問診や検査結果を踏まえ、月経前に症状が繰り返し現れているかどうかを総合的に判断してPMSの診断を行い、治療方針をご説明します。不安なことや気になっている症状は遠慮なく医師にお話しください。
PMSの治療法は大きく分けて(1)生活改善によるセルフケアと(2)薬物療法があります。まずは食事・睡眠・運動など生活習慣の改善やストレス対策を行い、それでも症状がつらい場合に薬物療法を追加するのが一般的です。薬物療法としては、低用量ピル(経口避妊薬)によるホルモン療法が有効です。低用量ピルで排卵を抑制しホルモンの変動を安定させることで、PMS症状をかなり抑えることができます。その他、症状に応じて鎮痛剤(頭痛や腹痛に)、抗不安薬(イライラや不安感に)を使ってつらい症状を和らげます。精神的な症状が特に強い場合は抗うつ薬(SSRIなど)を一時的に服用することもあります(状態に応じて他科への受診をお願いすることもございます。)。さらに、漢方薬で体質から整える治療も選択可能です。当院では患者様の症状やライフスタイルに合わせて最適な治療プランをご提案しますので、「薬には抵抗がある…」といったご希望も含めてご相談ください。
はい、セルフケアによってPMS症状を軽減させることは可能です。まず、自分の体のリズムを知るために基礎体温の記録や症状日記をつけてみましょう。どのタイミングでどんな不調が出やすいか把握できると、つらい時期に備えて予定を調整したり心の準備ができるようになります。症状が出る前の時期にはできるだけ無理をせず、休息やリラックスの時間を増やすことも大切です。生活面では、バランスの良い食事(特にカルシウム・マグネシウム・ビタミン類を意識する)、適度な運動、十分な睡眠を心がけましょう。反対にカフェインやアルコール、喫煙は症状悪化につながるため控えるようにします。仕事や家事でストレスを溜めすぎないよう、趣味やストレッチ、お風呂などで意識的にリラックスする時間を持つことも有効です。これらのセルフケアを続けることで、「生理前はこうすれば楽に過ごせる」というコツがつかめてくるはずです。症状が軽減すれば気持ちにも余裕が生まれますので、ぜひできることから試してみてください。もしセルフケアだけではつらい場合は、早めに医師にご相談いただくことをおすすめします。自分に合った対処法を見つけて、毎月の憂うつな期間を少しでも快適に乗り切りましょう。
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