淋菌という細菌が原因の感染症で、性行為だけでなく、オーラルセックスやキスによってもうつることがあります。男性では排尿時の痛みなど比較的強い症状が出やすい一方で、女性は自覚症状が乏しいことが多く、知らないうちに感染が進行してしまうこともあるため注意が必要です。
主な症状
潜伏期間はおおむね2日から1週間ほどです。男性では、尿道口のただれや膿の排出、強い排尿痛などの症状が出やすく、感染に気付きやすい傾向があります。女性では、黄色っぽいおりもの、外陰部の腫れやかゆみなどがみられることもありますが、自覚症状がほとんどない場合も少なくありません。パートナーに症状がある場合は、ご自身に症状がなくても感染している可能性が高いため、必ず医療機関を受診してください。
感染を放置すると、淋菌性腟炎や子宮内膜炎、卵管炎などを引き起こし、その段階で初めて強い下腹部痛を感じて感染に気付くケースもあります。さらに進行すると、不妊症や子宮外妊娠の原因となることもあるため、早めの診断と治療が大切です。なお、のどに感染した場合には、淋菌性咽頭炎を発症することがあります。
検査と治療
おりものの採取を行い診断を行います。治療は抗生剤による治療になります。耐性菌が増加しているため、3週間後の再検査が必要です。
梅毒
トレポネーマという細菌の感染によって発症する性感染症です。抗生物質の発達により一時は日本でほとんど見られなくなりましたが、近年では再び感染者が増加しています。感染経路は主に性行為やキスなどによる皮膚・粘膜の小さな傷からですが、まれに輸血によって感染したり、妊婦から胎児へ母子感染を起こすこともあります。
主な症状
潜伏期間は10日から最長で90日ほどと長く、一般的には感染後およそ3週間で発症するとされています。梅毒は進行の段階によって第1期から第4期に分けられ、それぞれに特徴的な症状が現れます。現在では、第2期までの段階で発見され、適切な抗生物質治療により完治するケースがほとんどで、第3期以降まで進行することはまれです。
第1期
感染から約3週間後、感染部位に「初期硬結」と呼ばれる硬いしこりが現れます。その後、周囲がやや盛り上がり、痛みのない潰瘍(硬性下疳)になります。数週間で自然に消えることが多いですが、跡が数か月ほど残ることもあります。
第2期
感染からおよそ3か月後になると、発疹(梅毒疹)が全身に広がりはじめます。ピンク色や淡紅色の「梅毒性ばら疹」や丘疹が体中に出るのが特徴です。また、髪の毛がまばらに抜ける「梅毒脱毛」がみられることもあります。これらの症状は数週間から数か月続いたのち、自然に軽快することがあります。
第3期
感染から2~3年ほど経過すると、「ゴム腫」と呼ばれるしこりが筋肉や骨、内臓などに生じ、次第に大きくなっていきます。
第4期
感染から10年以上が経過すると、心臓や血管、中枢神経などが障害され、命に関わる重篤な症状を引き起こす可能性があります。
検査と治療
血液検査によって感染の有無を確認することができますが、感染直後では正確な結果が出にくく、一般的に感染から6〜8週間ほど経過しないと確定診断が難しい場合があります。そのため、第1期の症状がみられる場合には、一定期間をおいて再検査が必要になることもあります。
治療は抗生剤(内服または注射)によって行われ、適切な治療で完治が可能です。再感染を防ぐためにも、パートナーにも検査と治療を受けてもらうことが大切です。
性器ヘルペス
ヘルペスは目や口のほか、性器にも感染することがあるウイルス感染症です。性器に「単純ヘルペスウイルス(HSV)」が感染して起こるものを性器ヘルペスと呼びます。主な感染経路は性行為であり、性感染症の一つに分類されています。
ヘルペスウイルスは一度感染すると体内に潜伏し、症状が治まっても完全に排除されることはありません。そのため、疲労やストレス、体調不良などで免疫力が低下すると再発することがあります。
また、妊娠中や出産時に性器ヘルペスの症状がある場合、産道を通る際に新生児へ感染するおそれがあります。近年では、20代を中心に性器ヘルペスの感染が増加しており、注意が必要です。
主な症状
初感染後は3〜7日の潜伏期間を経て発症します。まず発熱や倦怠感などの全身症状が現れ、その後、米粒ほどの小さな水ぶくれができます。女性では外陰部や腟内に、男性では亀頭や包皮に出ることが多いです。水ぶくれが破れると痛みを伴う潰瘍となり、排尿時に強い痛みを感じることもあります。
初感染時が最も症状が重く、発熱や頭痛に加え、まれにヘルペス脳炎を発症して入院が必要になる場合もあります。一方で、再発時の症状は比較的軽く、痛みや発疹も短期間でおさまるのが一般的です。
検査と治療
水疱や潰瘍の状態を観察することで多くの場合は診断が可能ですが、他の病気との鑑別やより正確な判断が必要な場合には、血液検査を行うこともあります。
治療には抗ウイルス薬を使用し、症状の軽減や再発の抑制を目指します。薬は軟膏、内服薬、注射などがあり、症状の程度や再発の頻度に応じて使い分けます。
ただし、ウイルスを体内から完全に取り除くことは難しく、潜伏したウイルスが再び活性化して再発を繰り返すことがあります。再発を頻繁に起こす方には、継続的な抑制療法や、再発時にすぐ服用できる薬を常備する治療法など、生活スタイルに合わせた治療をご提案しています。
尖形コンジローマ
ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によって起こる性感染症です。HPVには多くの型があり、その中でも子宮頸がんの原因となる「高リスク型」とは異なり、この疾患は「低リスク型」によって発症します。低リスク型のHPVはがん化することはほとんどありませんが、性器や肛門周囲などにいぼ状の病変をつくることがあり、適切な治療が必要です。
主な症状
潜伏期間には個人差がありますが、一般的には感染から2〜3か月ほどで症状が現れることが多いとされています。外陰部や肛門のまわりに、やわらかく弾力のある小さないぼが出現し、放置すると数が増えて次第に融合し、大きな塊となってカリフラワー状や鶏のトサカ状になることもあります。いぼの部位によっては、かゆみやヒリつき、熱感、性交時の痛みなどを伴う場合もあります。
検査と治療
特徴的ないぼ状の病変を視診で確認することで診断が可能です。いぼの数が少なく、小さい場合には、塗り薬(軟膏)やドライアイスを使った凍結療法で改善が期待できます。しかし、いぼが大きい場合や数が多い場合には、レーザー治療、電気メスによる焼灼、あるいは手術での切除が必要となることもあります。完治までには時間がかかることもありますが、根気強く治療を続けることが大切です。
(当院では軟膏による治療のみ行っており、レーザー治療や手術などには対応しておりません。)