IBS(過敏性腸症候群)便秘型の特徴と食事療法による便秘解消法|横浜市横浜駅前の消化器内科・婦人科・内科|横浜駅前ながしまクリニック

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IBS(過敏性腸症候群)便秘型の特徴と食事療法による便秘解消法

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2025年7月07日


IBS(過敏性腸症候群)便秘型は、ストレスや生活習慣の変化などをきっかけに腹痛やお腹の張りといった症状と便秘が繰り返し起こる慢性的な消化器の不調です。胃カメラや大腸カメラなどの検査では特に異常が見つからない機能性の疾患で、診断は症状に基づいて行われます。例えばRome IV基準という国際診断基準では、腹痛や排便習慣の変化が3ヶ月以上持続する場合にIBSと診断され、便の性状により「下痢型」「便秘型」「混合型」などに分類されます。IBS便秘型(IBS-C)は便秘(週に3回未満の排便やコロコロと硬い便)が主体で、腹痛が排便によって一時的に和らぐのが特徴です。20〜50代に多くみられ、症状はつらいものの大腸がんなどのような深刻な疾患ではないため、「検査では異常なし」と言われて戸惑う方も少なくありません。

IBS便秘型の症状を上手にコントロールするには、毎日の食事が大きな鍵となります。食事内容を工夫することで腸への刺激を和らげ、つらい便秘やお腹の不快感を緩和できる可能性があります。この記事では、IBS便秘型の方向けに便秘を解消するための食事療法を解説します。「低FODMAP食」をはじめとする栄養面でのポイント、水分・食物繊維・発酵食品(プロバイオティクス)の活用法など、科学的エビデンスに基づいたアドバイスをお届けします。日々の食事改善によって腸の調子を整え、過敏性腸症候群の症状改善に役立てましょう。

FODMAPとは何か – 発酵性の糖質に注目

FODMAP(フォドマップ)とは、小腸で吸収されにくく大腸で発酵しやすい短鎖の炭水化物(発酵性の糖質)の総称で、複数の糖質の頭文字から取った言葉ですhc.mt-pharma.co.jp。具体的には「Fermentable(発酵性)、Oligosaccharides(オリゴ糖類)、Disaccharides(二糖類)、Monosaccharides(単糖類) and Polyols(ポリオール:糖アルコール類)」の頭字語で、例えばオリゴ糖類には豆類・玉ねぎ・にんにく等、二糖類には乳製品(牛乳・ヨーグルト等)に含まれる乳糖、単糖類には果糖を多く含む果物・はちみつ、ポリオール類には人工甘味料のソルビトールやキシリトールなどが該当します。これらFODMAPに分類される糖質は消化吸収されずに大腸まで届き、腸内細菌のエサとなって発酵を引き起こします。その際に発生するガスや、未吸収の糖を薄めようとして腸管に集まる水分によって、IBSの方ではお腹の張りや腹痛、下痢などの症状が誘発されやすくなるのです。

高FODMAP食品と低FODMAP食品の違い

高FODMAP食品とは、先述のFODMAPを多く含む食品のことです。IBSの人にとっては高FODMAPの食品を摂ると腸内でガスが発生しやすく、水分バランスも崩れやすいため、腹痛やお腹の張り、便秘・下痢などの症状が悪化しがちです。反対に低FODMAP食品はFODMAP含有量が少なく、腸に優しい食品とされています。例えば、高FODMAPの代表例には玉ねぎ、にんにく、小麦(パンや麺類)などがあります。玉ねぎやにんにくにはフルクタンというオリゴ糖が多く含まれ、小麦製品にはフルクタンに加えて難消化性の糖質が含まれるため、IBSではお腹が張りやすいのです。また牛乳など乳製品に含まれる乳糖(ラクトース)や、リンゴ・スイカなど果物に多い果糖、キャベツやキノコ類、豆類人工甘味料のソルビトール(ガムや飴に含まれる)といったものも高FODMAP食品として知られています。これらを過剰に摂取すると腸内でガスが増え、症状悪化の一因となります。

一方、低FODMAP食品の例としては米(ご飯)や米粉のパンにんじん、きゅうり、トマト、レタスといった野菜類、じゃがいもなどのいも類、バナナやキウイなどの果物、そして肉類・魚・卵、豆腐(特に木綿豆腐)や乳糖オフの牛乳などが挙げられます。これらは腸で発酵されにくくガスを発生しにくいため、IBSの方でもお腹の張りを起こしにくい食品です。例えばキャベツ、レタス、トマト、ブロッコリー、じゃがいもなどは代表的な低FODMAP野菜で安心して摂れますが、玉ねぎやキノコ類はお腹が張りやすいため注意が必要だとされています。つまり、高FODMAP食品を避けて低FODMAP食品を選ぶことで、腸内のガス発生や水分過多を抑え、IBSの困った症状を和らげられるというわけです。

FODMAP食事法の実践:除去と再導入のステップ

FODMAP食事法は、大きく「除去期」と「再導入期」の二段階に分けて実践します。一時的に高FODMAP食品を徹底的に除去し、その後で少しずつ戻していくことで「自分にとって特に問題となる食品」を突き止めることが目的です。具体的な進め方を以下に紹介します。

  1. 除去期(エリミネーション) – まず高FODMAP食品を一旦すべて控える期間です。パンや乳製品、特定の果物・野菜など前述の高FODMAP食品を避け、可能な限り低FODMAP食品のみで生活します。期間はおよそ2〜6週間(目安は約3〜4週間)続けます。この間、お腹の症状がどう変化するか「食事日記」をつけて観察しましょう。もし高FODMAP食品をしっかり除いたにもかかわらず症状が改善しない場合、IBS症状の原因がFODMAPではない可能性もあります。無理に続けず専門医に相談しましょう。
  2. 再導入期(チャレンジ)除去期で症状が落ち着いたら、制限していた食品を少しずつ試しながら戻していく段階です。一度に色々戻すのではなく、FODMAP含有食品を種類ごとに1つずつ追加します。例えばまずはパンを少量食べてみる、次に果物をひとつ試す、といった具合に食品ごと・カテゴリーごとに順番に少量から様子を見ます。食べてもお腹の症状が出なければ「その量までなら食べても大丈夫」と判断でき、逆に少量でも症状がぶり返す食品があれば、それが自分にとって避けるべき高FODMAP食品ということになります。
  3. 維持期(個別化) – 最終ステップでは、再導入期の結果を踏まえ「自分にとってのNG食品」だけを今後も控える食生活へ移行します。IBSの症状を起こす原因食品がわかったら、それを除いて献立を立てましょう。ポイントは、避ける食品は必要最小限に留めることです。むやみに多くの食品を永久に除去してしまうと食事の選択肢が狭まり、栄養面でも偏りが生じてしまいます。低FODMAP食事法は決して「一生高FODMAP食品を食べない」ことが目的ではなく、あくまでお腹と相性の悪い食品を見極めるための一時的な方法です。再導入で問題なかった食品は栄養バランスのため適度に取り入れ、除去する食品は本当に症状の原因となるものだけに絞りましょう。

FODMAPの科学的根拠と海外での活用

IBSの食事療法として低FODMAP食が注目されるのには、科学的な裏付けがあります。オーストラリアのモナッシュ大学(Monash University)の研究チームがこの食事法を提唱して以降、世界各国で臨床研究が行われ、低FODMAP食によってIBSの症状が軽減したとの報告が多数されていますbrand.taisho.co.jp。下痢型・便秘型いずれのIBSでも症状改善が見られたとの研究結果が報告されており、エビデンス(科学的根拠)の高い食事療法と位置付けられています。こうした背景から欧米を中心にIBSの治療に低FODMAP食が取り入れられており、専門の栄養士による指導プログラムや専用レシピ本も数多く出版されています。

特にモナッシュ大学は低FODMAP食のパイオニアであり、最新の情報をまとめたスマートフォン用アプリも提供しています。このアプリでは世界各国の食品についてFODMAP含有量を検索でき、日本で手に入る食品のデータも随時更新されています。海外ではこのように患者さん自身が日々の食事でFODMAPを意識できるツールが活用されており、日本国内でも徐々に知られるようになってきました。「低FODMAP認定」の食品やメニューが登場している国もあり、IBSの新たな食事管理法として定着しつつあります。

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