2025年8月15日
健康診断(健診)や人間ドックで胆のうポリープを指摘され、「このまま放置して大丈夫か?」と不安になる方は多いでしょう。最近は胃カメラ(上部消化管内視鏡)や大腸カメラ(大腸内視鏡検査)と併せて腹部超音波検査を受ける機会も増え、そこで偶然胆のうポリープが見つかることがあります。本記事では、胆のうポリープの概要や良性・悪性の見分け方、経過観察と手術の判断基準について解説します。30~60代の方にもわかりやすく、胆のうポリープと上手に付き合うポイントをお伝えします。

胆のうポリープとは?良性が多いって本当?
胆のうポリープとは、胆のう内部の粘膜にできる小さな隆起(できもの)の総称です。大部分は良性の病変で、がん(胆のう癌)に変化することはありません。実際、胆のうポリープの約90%はコレステロールポリープと呼ばれる良性のポリープで占められます。コレステロールポリープは胆汁中のコレステロールが胆のう粘膜に沈着したもので、サイズは数ミリ程度と小さいことがほとんどです。複数個できる傾向があり、10mm(1cm)を超える大きさになることはまれです。こうした良性ポリープは自覚症状を伴わず、健康診断の腹部エコー検査などで偶然に発見されるケースが多いのが特徴です。
一方で、胆のうポリープの中には種類によっては注意が必要なものも含まれます。例えば腺腫(腺腫性ポリープ)は胆のう粘膜の良性腫瘍ですが、将来的にがん化する可能性が指摘されています。ごく一部には早期の胆のうがんがポリープ状に見えている場合もあります。しかし、胆のうポリープが見つかったからといって、すぐに「がんだ」と心配しすぎる必要はありません。画像検査だけで良性・悪性を完全に見分けるのは難しいこともありますが、多くの場合はサイズや形態から総合的に判断できるからです。
健康診断で見つかる胆のうポリープ ~検診結果の頻度は?~
胆のうポリープは症状がほとんどないため、健康診断(健診)や人間ドックの腹部超音波検査で偶然に見つかるケースが大半です。実際、一般成人の約5%前後の人に胆のうポリープが発見されるとの報告もあります。つまり健診で「胆のうポリープあり」と指摘されること自体は決して珍しくありません。
腹部超音波(エコー)検査は放射線を使わず苦痛も少ない安全な検査であり、胆のうポリープのスクリーニングに広く用いられています。エコー検査はCTやMRIよりも小さなポリープを写し出すのに優れており、数ミリの微小な胆のうポリープも捉えることができます。ただし体型や腸のガスの影響で胆のう全体が見えにくい場合もあり、その際は必要に応じて超音波内視鏡(EUS)など詳しい検査を追加することもあります。いずれにせよ、健診で胆のうポリープを指摘されたら、まずは落ち着いて主治医と今後の方針を相談しましょう。
小さい胆のうポリープは放置しても大丈夫?(経過観察の目安)
結論から言えば、サイズが小さく明らかに良性と考えられる胆のうポリープであれば、すぐに手術せず経過観察で様子を見るのが一般的です。冒頭で述べたように約90%は良性ですから、小さなポリープをむやみに切除する必要はありません。典型的なコレステロールポリープと診断された場合は、基本的に治療(手術)は不要で、定期的な超音波検査によるフォローで十分とされています。
では「小さいポリープ」とはどの程度を指すのでしょうか。明確な基準はありますが、一般的には5mm以下の小さな胆のうポリープはリスクが極めて低いと考えられます。まず初回に胆のうポリープが見つかった場合、念のため2~3か月後にもう一度エコー検査を行いポリープの大きさや形に変化がないか確認します。そこで変化がなければ、その後は年1回程度の定期検診で経過観察を続けるのが一般的な流れです。例えば健康診断の際に毎年腹部エコーを受け、ポリープが大きくなっていないかチェックします。経過観察の頻度や期間は個人の状況によりますので、担当医の指示に従ってください。

経過観察で問題ない胆のうポリープのポイントは以下の通りです:
・大きさが小さい – 一般に5~6mm以下のポリープは悪性化の可能性が低い。10mm未満であれば基本的に経過観察とするケースが多いです。
・形態が良性らしい – 茎があって先端に丸い腫瘤が付く有茎性ポリープは良性が多い傾向があります。コレステロールポリープは細い茎を持つ桑の実のような形をしているのが典型です。
・数が多発する – ポリープが複数ある場合もコレステロール沈着が疑われ、良性と考えられます。
・症状がない – 胆のうポリープ自体は痛みなど症状を起こしせんません。無症状で偶然見つかったものはひとまず様子を見ることが多いです。
以上の条件に当てはまる場合、胆のうポリープは慌てて治療しなくても大丈夫と考えられます。しかし、定期的な検査で変化がないことを確認することが大切です。医師の指示のもと計画的に経過観察を行い、「放置」といっても決してほったらかしにしないよう注意しましょう。
手術が必要なのはどんな場合?放置NGの胆のうポリープ
一方で、「このまま放置してはいけない」、すなわち早めに手術で胆のうを取ることを検討すべき胆のうポリープも存在します。主に以下のようなケースです。
・ポリープのサイズが大きい場合 – 目安として直径10mm(1cm)以上の胆のうポリープは、悪性(胆のうがん)の可能性を否定できないため手術が推奨されます。実際、欧米のガイドラインでも「10mm以上の胆のうポリープは原則として胆のう摘出術を行うこと」を強く推奨しています。
・ポリープの形態が広基性(無茎性)の場合 – 茎がなく胆のう壁にベタっとくっつく広基性のポリープは、小さくても悪性の可能性があります。土台が広いタイプ(無茎性ポリープ)は良性であっても見た目で判断が難しく、念のため手術で切除して詳しく調べることが推奨されます。
・ポリープが短期間で大きくなっている場合 – 経過観察中にポリープのサイズが大きく増大してきた場合も注意信号です。たとえば半年~1年で2mm以上の拡大が認められた場合、将来的ながん化リスクを考えて摘出が検討されます。
・胆石を合併している場合 – 胆のうポリープに加えて胆石症があるケースでは、症状の有無に関わらず胆のうごと摘出する方針となることが多いです。胆石による炎症で胆のうがんの診断がしにくくなることもあり、リスクをまとめて解消する目的で手術が選択されます。
・患者さんの年齢が高い場合 – 60歳以上の高齢の方では、ポリープが小さくても胆のうがん発生リスクがやや高まるとされます。若年者に比べ念のため早めに胆のう摘出を検討するケースもあります。
上記のような所見がある場合、担当医と十分に相談した上で腹腔鏡下胆のう摘出術(お腹に数か所小さな穴を開けて胆のうを取り出す手術)を検討します。胆のうを摘出してしまえば、そのポリープが良性か悪性かを病理検査で確実に診断できますし、万一がんであっても早期であればそれで治癒が期待できます。胆のう摘出後に生活への大きな支障が出ることは通常なく、手術は体への負担が比較的少ない腹腔鏡手術で行われるのが一般的です。以上の理由から、医師から「手術した方がよい」と説明された場合は、将来のリスクを減らすためにも前向きに検討すると良いでしょう。
まとめ:胆のうポリープは放置してよいのか?
胆のうポリープは多くが良性であり、小さいものは定期的な経過観察を前提に基本的に放置(様子を見る対応)で問題ありません。健康診断で見つかった数ミリのポリープであれば、過度に心配せずまずは半年~1年後の再検査を受けましょう。その際に大きさや形状に変化がなければ、その後も1年ごとの健診でチェックを続ければ十分です。
しかし、「放置してよい」ためには定期検査で安全を確認することが前提です。検査で異常サイン(ポリープの大型化など)が見つかれば、早めに精密検査や手術による対応が必要になります。特に1cm前後以上のポリープがある方は、医師と相談のうえ積極的な対応を検討してください。
胆のうポリープ自体は珍しいものではなく、適切に経過を追えば怖がりすぎる必要はありません。大事なのは放置しっぱなしにせず、専門医の指示のもと定期的に観察することです。健診結果で胆のうポリープを指摘された方は、本記事の内容を参考にしつつ主治医とよく相談し、ご自身に合った対応策をとりましょう。必要な検査を受けることで、万一の胆のうがんも早期に発見・治療できる可能性が高まります。「放置していいか不安…」というお気持ちもあるかと思いますが、まずは冷静に事実を知り、適切なフォローアップを続けることが肝要です。自分の健康診断データを上手に活用し、安心につなげてください。