虚血性腸炎とは?原因・症状・治療法と予防策を解説|横浜市横浜駅前の消化器内科・婦人科・内科|横浜駅前ながしまクリニック

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虚血性腸炎とは?原因・症状・治療法と予防策を解説

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2025年7月26日

虚血性腸炎(きょけつせいちょうえん)は、大腸への血流が一時的に悪くなることで腸に炎症が起こり、腹痛や血便(血液の混じった便)を生じる病気です。主に高齢の方、とくに便秘がちな女性に多くみられますが、近年では比較的若い世代にも増えてきています。症状が激しいため初めて血便を見た患者さんは「大きな病気ではないか」と心配されることも少なくありませんが、ほとんどの場合は一過性(短期間でおさまる)であり、適切な治療によって症状は改善し予後は良好とされています。ただし稀に重症化して手術が必要になるケースも報告されています。

この記事では、虚血性腸炎の原因や症状、検査による診断方法、治療法、再発を防ぐための予防策と生活上の工夫、さらに受診の目安について詳しく解説します。

原因

虚血性腸炎の発症には、血管側の要因腸管側の要因が複雑に関与していると考えられています。血管側の要因とは、大腸に血液を送る動脈の血流が何らかの理由で低下することで、しばしば動脈硬化血栓の影響があります。実際、高血圧や糖尿病、脂質異常症など動脈硬化を招く生活習慣病や、膠原病・血管炎といった血管に炎症を起こす持病がある高齢の方に虚血性腸炎が起こりやすいとされています。

一方、腸管側の要因で最も多いのは便秘です。便秘の状態で強くいきむと腹圧が上昇し、大腸粘膜への血流が一時的に低下してしまいます。その結果、腸の粘膜が酸素不足(虚血)に陥り、炎症や潰瘍を引き起こすと考えられます。とくに大腸の左側(S状結腸~下行結腸)は血管構造上の理由で血流障害を起こしやすく、この部位に虚血性腸炎が発症しやすい傾向があります。

症状

虚血性腸炎では突然の強い腹痛(左下腹部に多い)と水様性の下痢、そして鮮やかな赤い血液が混じる血便が代表的な症状です。加えて、吐き気嘔吐発熱を伴うこともあります。典型的には、ある日突然お腹の左下が激しく痛み出し、トイレに駆け込んで下痢をした後、便器の水が真っ赤に染まるほどの血便が出現する──といった経過をたどります。血便の量に驚いて救急車で来院される方もいますが、輸血が必要となるような大量出血はまれであり、ほとんどの場合命に関わるほどの出血には至りません。

受診の目安

虚血性腸炎の症状だけでは大腸がんや感染性腸炎、クローン病など他の病気との区別が難しいため、腹痛・下痢・血便といった症状がみられた場合は自己判断せずに早めに医療機関(消化器内科など)を受診することをおすすめします。特に、鮮紅色の血液が混じる血便が続く場合や腹痛が強く長引く場合には、我慢せず速やかに医師の診察を受けてください。

検査と診断

医療機関では、症状から虚血性腸炎が疑われた場合、腹部CT検査大腸内視鏡検査(大腸カメラ)によって診断を行います。腹部CTでは、虚血による炎症で腫れた腸の壁(腸管肥厚)が確認でき、突然の腹痛と血便という症状と合わせて診断の決め手となります。確定診断のためには大腸カメラ検査が有効で、直接大腸粘膜の状態を詳しく観察することができます。虚血性腸炎では内視鏡所見として粘膜の発赤・腫れ(浮腫)やびらん・潰瘍が生じ、病変部と正常な部分の境界がはっきりしていることが特徴です。大腸カメラを行うことで、同じ腹痛血便を呈する他の疾患(例えば大腸がん、感染性腸炎、潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患)かどうかも確認し、鑑別診断することができます。

治療

虚血性腸炎の治療は、まず内科的な保存療法が基本となります。症状が強い場合は入院して絶食(飲食を控える)と点滴による水分・栄養補給を数日間行い、腸を安静にします。炎症が強いときには抗生剤を投与し、腹痛に対しては鎮痙薬(腸のけいれんを抑える薬)などで症状を和らげつつ経過を観察します。症状が落ち着いてきたら、重湯お粥など消化に良い食事から少量ずつ再開し、段階的に通常の食事に戻していきます。多くの場合、1〜2週間程度の治療で症状が改善し、入院された方は退院、外来治療の方も日常生活へ復帰できます。

ただし、血流障害が長引いて腸の組織が壊死してしまった場合には、緊急手術でその部分の腸を切除する必要があります。また、激しい炎症の結果、腸管が瘢痕化して狭窄(腸が細く狭くなること)が残り、腸の通り道が塞がってしまった場合には、狭くなった部分を切除するなどの外科的治療が検討されます。とはいえ、狭窄による腸閉塞まで起こるケースは稀であり、ほとんどは保存的治療(手術を行わず内科的な治療)で改善しています。

予防と生活の工夫

虚血性腸炎は約4人に1人の割合で再発しやすいことが知られています。再発を完全に防ぐ確立された方法はまだありませんが、原因となりうる便秘や動脈硬化の危険因子に対処することで再発予防につながると考えられます。日常生活では次のような点に気をつけましょう。

  • 便秘を防ぐ: 食物繊維を多く含む野菜・果物・穀類をしっかり摂り、水分も十分に補給して、普段からお通じのリズムを整えるようにしましょう。便意を感じたら我慢せず早めにトイレに行くことも大切です。
  • 生活習慣病の管理: 高血圧・糖尿病・脂質異常症などの持病がある場合は、医師の指導のもとで適切に治療・コントロールしましょう。血圧や血糖値、コレステロールを良好に保つことが、大腸の血流低下によるダメージ予防につながります。
  • 規則正しい生活と適度な運動: 生活リズムを整え、ウォーキングなど無理のない運動を習慣にしましょう。腸の動きが活発になり便秘の予防に役立つほか、血行も良くなり動脈硬化の進行抑制にもつながります。
  • 十分な水分補給: 日頃からこまめに水分を取り、脱水を防ぎましょう。特に汗をかきやすい夏場などは意識的に水分を摂取することが重要です。
  • 禁煙: タバコは血管を収縮させて動脈硬化を進行させる要因です。これを機に禁煙を検討し、血管への負担軽減を図りましょう。

まとめ

虚血性腸炎は突然の腹痛と血便で驚かれる病気ですが、適切な治療によって多くの場合短期間で症状が改善し、良好に回復します。しかし再発のおそれもあるため、便秘の解消や基礎疾患の治療など生活面での対策が重要です。腹痛や血便といった症状が現れた際には自己判断を避け、できるだけ早めに消化器科を受診して適切な検査と治療を受けるようにしましょう。早期に対処することで重症化を防ぎ、安心へとつながります。

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