2025年8月04日
胃痛の主な原因となる5つの疾患
1. 機能性ディスペプシア(FD)
内視鏡(胃カメラ、大腸カメラ(大腸内視鏡検査))などで明らかな異常がないのに、上腹部の痛み・もたれ・早期膨満感が続く状態です。診断には Rome IV 基準が用いられ、国内外の成人で約10〜15%と頻度が高いと報告されています。ストレスや自律神経の乱れ、胃酸分泌異常が関与すると考えられています。
2. 胃・十二指腸潰瘍
空腹時や夜間に強いみぞおち痛が起きやすい典型的な疾患です。原因の8割以上がピロリ菌感染と NSAIDs(痛み止め)の長期使用。穿孔や出血を来すと生命に関わるため、吐血・黒色便があれば至急受診が必要です。
3. 急性・慢性胃炎
香辛料やアルコールの過剰摂取、ストレス、薬剤(アスピリンなど)で胃粘膜に炎症が起こり、灼熱感を伴う痛みや嘔気が出現します。慢性化すると萎縮や腸上皮化生を経て胃がんリスクが上昇するため、繰り返す場合は内視鏡検査で粘膜の状態を確認しましょう。
4. 胆石・膵炎など隣接臓器の病気
右上腹部~心窩部の痛みが背中に放散する場合は、胆石症・急性膵炎も疑います。脂っこい食事後に痛みが強まる、吐き気を伴うときは消化器内科で血液検査・腹部超音波を。
5. 胃がん・GIST など腫瘍性疾患
早期胃がんの多くは無症状ですが、進行すると持続する鈍痛・食欲不振・体重減少が目立ちます。国立がん研究センター希少がんセンターによれば、GIST でも腹痛や貧血が初発症状となることがあります。症状が長引くときは「念のため」の内視鏡が早期発見につながります。
胃痛と併せて注意すべき「アラームサイン」
- 体重減少(半年で5 kg以上)
- 貧血・黒色便・吐血
- 嚥下障害や嘔吐の持続
- 発症年齢50歳以上、家族に胃がん患者
これらは上部消化管悪性疾患を示唆する“警告症状”として国際的にも位置づけられており、メタ解析でも高リスクと報告されています。
「受診の目安」
①軽い痛みが数日内に改善
→市販の制酸薬・消化剤で経過観察。脂質・アルコールを控え、十分な睡眠を。
②1週間以上続く痛み・再発を繰り返す
→消化器内科で血液検査と上部内視鏡を検討。ピロリ菌検査も早期に実施。
③アラームサインを伴う/激痛・吐血・黒色便
→救急受診または早急に専門医へ。
自宅でできるセルフケア5か条
- 暴飲暴食を避け、腹八分目
- コーヒー・アルコールは控えめに
- NSAIDs の長期連用を自己判断で行わない
- 就寝2時間前には食事を終える
- ストレスマネジメント(深呼吸・軽い運動)
症状が軽快しても、何度も再燃する場合は検査で原因を確かめることが再発予防の近道です。
まとめ
胃痛は頻度の高い症状ですが、背景には機能性ディスペプシアや潰瘍、腫瘍まで多彩な疾患が隠れています。アラームサインを見逃さず、早めの医療機関受診が安心への第一歩。日々の生活習慣を見直しつつ、「おかしい」と感じたら遠慮なく専門医に相談しましょう。
参考文献
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32119450/
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30611829/