2025年7月13日
急な胃の痛みや吐き気に悩まされたことはありませんか?
それは「急性胃炎」の症状かもしれません。急性胃炎とは、文字通り短期間で起こる胃の炎症のことです。胃の内側を覆う粘膜に急激に炎症が生じ、さまざまな不快な症状を引き起こします。この記事では、急性胃炎の定義や主な症状、原因、診断と治療法、日常生活での注意点(胃に優しい食事のポイント)、予防策、そして放置した場合のリスクについて、総合的に解説します。

急性胃炎の定義と主な症状
急性胃炎とは、胃粘膜に急に炎症が起きた状態を指します。原因を問わず胃粘膜に炎症が生じた状態を「胃炎」といいますが、その中でも急に発症して比較的短期間で経過するものが急性胃炎です。典型的な症状はみぞおち周辺の胃の痛み(心窩部痛)や胃の不快感で、しばしば吐き気や嘔吐も伴います。これらは総じて「胃のむかつき」や「消化不良」と表現されることもあります。症状は突然現れることが多く、軽い場合は数日程度で治まることもあります。
- 主な症状: 胃痛(みぞおちの痛み)、胃もたれや腹部膨満感、吐き気、嘔吐、げっぷ、食欲不振など。程度によっては発熱を伴うこともあります。
- 症状の程度: 炎症の強さや原因によって異なり、軽症なら2~3日で改善することもあります。一方、重症の場合は症状が長引き、激しい胃痛や繰り返す嘔吐で水分も摂れなくなることがあります。こうした場合は早めに医療機関を受診しましょう。
急性胃炎の主な原因
急性胃炎を引き起こす原因にはさまざまなものがあります。日常生活の中でよく見られる主な原因を挙げます。
- 心理的・身体的ストレス: 緊張や不安など強いストレスは自律神経のバランスを乱し、胃酸の分泌を増やす一方で胃粘膜の防御機能を低下させます。その結果、胃粘膜が傷つき炎症が起こりやすくなります。
- 暴飲暴食・刺激物の摂取: 一度に大量の食事を摂ったり、脂っこいものや香辛料のきいた料理、過度のアルコール摂取なども胃粘膜を荒らす原因です。特に深酒や飲み過ぎ食べ過ぎ(暴飲暴食)は急性胃炎の大きな誘因になります。
- 薬(NSAIDsなど)の副作用: 痛み止めの薬(非ステロイド性抗炎症薬:NSAIDs)や解熱鎮痛剤の一部は、胃粘膜を保護する物質の産生を抑えてしまい、副作用で胃炎を起こすことがあります。日頃からこれらの薬を頻繁に服用している方は注意が必要です。
- 感染症: ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)の感染は慢性胃炎の主因として有名ですが、初めて感染したときには急性胃炎を起こすことがあります。また、ウイルスや細菌感染(いわゆる食中毒や胃腸炎)によって嘔吐・下痢が起こる場合、胃にも急性の炎症が生じることがあります。例えばノロウイルスなどによる急性胃腸炎も広い意味では急性胃炎に含まれます。
この他にも、まれに強い化学物質の摂取(誤飲による腐食性胃炎)や外傷、重篤な病気に伴う急性の胃粘膜障害(急性ストレス性胃炎)など特殊な原因も報告されています。しかし一般の方の場合、上記のストレスや生活習慣、薬剤や感染が原因の大半を占めます。
急性胃炎の診断方法
急性胃炎が疑われる場合, 基本的には症状や原因となりうる生活歴を詳しく医師が問診します。みぞおちの痛みや吐き気があり、最近ストレスが強かったりNSAIDsを服用していた、といった情報が診断の手がかりになります。症状が軽い場合は問診と診察から暫定的に診断し、まず治療を行うこともあります。
しかし症状が強かったり、他の疾患の可能性を除外する必要がある場合には、以下の検査が行われます。
- 上部消化管内視鏡検査(胃カメラ): 口または鼻から内視鏡(カメラ)を挿入し、胃の中を直接観察する検査です。胃粘膜に赤くただれた炎症やびらん(ただれ)がないか確認できます。必要に応じて、粘膜の一部を採取して顕微鏡で調べる生検も行われます(胃潰瘍や胃がんとの鑑別のため)。急性胃炎では多くの場合、びらん性の変化や発赤を認めます。
- 画像検査(X線造影検査): バリウムという造影剤を飲んで胃の形態をX線で撮影する検査です。現在は内視鏡検査の方が詳細に観察できるため主流ですが、状況によっては行われることもあります。
- 血液検査: 胃炎そのものを直接診断する血液検査はありませんが、嘔吐や出血の有無による脱水や貧血の程度を調べたり、炎症の程度を見るために採血します。重症の場合は炎症反応(CRP)の上昇や電解質異常がみられることがあります。
- ピロリ菌検査: 胃炎が長引く場合や慢性胃炎への移行が疑われる場合には、ピロリ菌感染の有無を調べる検査を行います。尿素呼気試験や便中抗原検査、血中抗体検査、また内視鏡下での迅速ウレアーゼ試験など、状況に応じた方法でピロリ菌を検出します。ピロリ菌が陽性であれば除菌治療につなげます。
急性胃炎の治療方法
急性胃炎の治療は、原因の除去と症状の緩和が基本です。具体的には以下のような方法があります。
- 安静と胃の安静化: まずは胃を休めることが重要です。症状が強いときには食事を無理にとらず、胃に負担をかけないようにします。必要に応じて水分も含めて数時間〜半日程度の絶食とし、経口補水液などで水分・電解質を補給します。嘔吐が続いて飲めない場合や脱水がある場合には、病院で点滴による補液を行います。
- 薬物療法: 胃酸による粘膜への刺激を和らげるため、胃酸分泌を抑える薬や制酸薬を用います。代表的なものはプロトンポンプ阻害薬(PPI)やH2ブロッカーで、胃酸の産生を強力に抑えてくれます。症状が軽ければ市販の制酸薬(胃酸を中和する薬)で改善することもあります。また、胃粘膜を保護する薬(スクラルファートなど)や消化管の動きを整える薬が処方されることもあります。吐き気が強い場合には制吐剤を使うこともあります。
- 原因への対処: 原因がはっきりしている場合にはそれを取り除きます。例えばNSAIDsが原因と考えられる場合は服用を中止し、代替の痛み止めに変えるなどします。ピロリ菌感染が関与している場合には、ピロリ菌の除菌治療(抗生物質と胃酸抑制薬の併用療法)を行います。飲酒や食事が原因であれば、それらを控えるよう指導がなされます。
- 重症例への対応: 症状が強く吐血(血を吐く)や下血(黒色便)が見られるような重症例では、入院の上で集中的な治療を行います。強力な胃酸抑制療法に加え、内視鏡で出血箇所を止血する処置を行うこともあります。まれに出血が止まらない場合は緊急手術が検討されますが、そうしたケースはまれです。
いずれの場合も、治療中は胃に負担をかけない生活を心がける必要があります。次の項目で、胃に優しい食事や生活習慣上の注意点を紹介します。
胃に優しい食事と生活習慣での注意点
急性胃炎の治療中および予防のためには、胃に優しい食事を心がけ、生活習慣にも注意することが大切です。胃の粘膜を刺激するような習慣を避け、胃酸の分泌をコントロールしやすくする工夫をしましょう。以下にポイントをまとめます。
- 消化に良い食品・調理法を選ぶ: 胃腸の調子が悪い時は、できるだけ低脂肪・低繊維でやわらかく調理した食品が適しています。例えば、お粥・うどん・そうめん・柔らかく煮た野菜スープなどが良いでしょう。肉や魚も脂身の少ない部位(鶏ささみや白身魚など)を茹でる・煮るといった調理法で取り入れます。刺激の強い香辛料は避け、味付けも薄味にします。
- 避けるべき飲食物: 胃酸の分泌を過剰に促したり、胃粘膜を直接刺激したりするものは控えましょう。具体的には、香辛料のきいた辛い料理、塩辛い漬物や塩辛、甘すぎる菓子類、酸味の強い酢の物や柑橘類などです。また、アルコール飲料や炭酸飲料、カフェインを多く含むコーヒー・紅茶・緑茶も胃を荒らしやすいため、症状がある間は避けるのが無難ですtmhp.jp。これらは胃酸過多の原因にもなり、胃炎を悪化させる可能性があります。
- ゆっくり、よく噛んで食べる: 食事は胃に負担をかけないようゆっくりと噛んで食べることが大切です。早食いや大食いは胃酸の分泌を高め、消化不良の原因になります。また、食事の量は一度にたくさんではなく少量を回数分けて摂る方が胃に優しいです。満腹になるまで詰め込まず、腹八分目を心がけましょう。
- 食後は休息を取る: 食後すぐの激しい運動や入浴は避け、しばらく静かに休むようにします。消化がスムーズに行われるよう、食後30分程度はリラックスして過ごしましょう。特に夜遅くの食事は就寝までに十分な消化時間が取れないため、胃もたれの原因になります。寝る前の2時間は飲食を控えるのが望ましいです。
- 喫煙を避ける: タバコを吸う習慣のある方は、この機会に禁煙を検討してください。喫煙は胃粘膜の血流を低下させ防御機能を弱めるため、胃炎の治りを遅らせる要因になりますcloud-dr.jp。実際、胃・十二指腸潰瘍など消化器疾患のリスク要因としても喫煙は知られています。胃を守るためにも禁煙・減煙に努めましょう。
- その他の生活習慣: 十分な睡眠と休養を取ってストレスを溜めないことも大切です。過労や睡眠不足は自律神経の乱れにつながり、胃腸の働きを悪くします。リラックスする時間を作り、適度な運動でストレス発散を図ることも胃に優しい生活につながります。
これらの「胃に優しい」心がけは、急性胃炎の回復を早めるだけでなく再発予防にも役立ちます。症状が落ち着いたあとも、無理な暴飲暴食は避け規則正しい食生活を心がけましょう。