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2025年4月16日

肛門が痛い・出血するのは裂肛かも?原因から治し方、再発予防まで解説

トイレで「肛門が痛い!」「肛門から出血が…」と驚いた経験はありませんか?

それは裂肛(れっこう)と呼ばれる状態かもしれません。裂肛は一般には「切れ痔(きれじ)」とも呼ばれ、肛門の出口付近の皮膚(肛門上皮)に裂け目ができて出血や痛みを引き起こす病気です。誰にでも起こりうる身近なトラブルですが、場所が場所だけに恥ずかしくて相談しにくいですよね。この記事では、裂肛の主な原因や症状、市販薬を含む治し方(治療法)と再発予防のポイントについて、患者さんの不安に寄り添いながら丁寧に解説します。

主な原因とメカニズム

裂肛はなぜ起こるのでしょうか。その主な原因は便秘による硬い便です​。便秘が続いて大腸に長く留まった便は水分が吸収されて硬くなり、排便時に肛門を強く押し広げて肛門の皮膚を切ってしまいます​。特に排便を我慢する習慣があると、硬い便になりやすく裂肛のリスクが高まります。また便秘は男性より女性に多く見られるため、裂肛も20~40代の女性に多い傾向があります​。

無理なダイエットなどで食事量が減ったり水分が不足したりすると腸の動きが悪くなり便秘になりがちです​。その一方で、下痢が続く場合も注意が必要です。勢いよく出る水っぽい便でも肛門上皮が裂けて裂肛になることがあり、慢性的な下痢は傷の治りを妨げてしまいます​。

裂肛が起きると、排便時の激しい痛みで「これ以上傷つきたくない」と排便を怖がってしまいがちです。その結果さらに便秘が悪化し、硬い便で再び肛門を傷つけてしまうという悪循環に陥ることがあります​。一時的な裂肛(急性裂肛)であれば傷は浅く、数日で自然に治ることもあります​。しかし繰り返し傷つくと裂肛が慢性化して傷が深い潰瘍(かいよう)になってしまうため注意が必要です​。慢性化した裂肛は治りに時間がかかりますので、早めに対処することが大切です。

症状とセルフチェックのポイント

裂肛になるとどのような症状が現れるのでしょうか。代表的な症状は次の通りです​。

  • 排便時の肛門の強い痛み(排便中に刃物で切られるような痛み)
  • 排便後もしばらく続く痛み(ヒリヒリする痛みや鈍い痛みが数分~数時間続くことも)
  • 肛門からの少量の出血(鮮やかな赤い血がトイレットペーパーに付く程度が多い)
  • 便が細くなる(肛門が炎症が継続し狭くなって硬い便が出にくくなっている)

痛みが強いため、いぼ痔(痔核)など他の痔よりも痛みが激しい傾向があります​。切れた傷が肛門の痛みを感じる神経に近いためで、排便時だけでなく排便後もしばらく痛みが続くことがあります​。一方で出血量は多くないことがほとんどで、鮮紅色(鮮やかな赤色)の血が紙に少し付く程度です​。肛門からの大量出血や黒い便が出る場合は裂肛ではなく別の病気の可能性があります。

セルフチェックのポイント: 上記のように「排便時に肛門が痛い」「鮮血が少し付く」という症状から、裂肛は比較的判断しやすい痔のひとつです。いぼ痔(内痔核)の場合、出血はあっても痛みはそれほど強くないことが多いのに対し、裂肛では痛みが強い割に出血は少量という特徴があります​。排便の際に肛門に裂けるような痛みを感じたら裂肛を疑ってよいでしょう。ただし、肛門の痛み・出血に加えて発熱や腫れなど他に気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診してください​。

裂肛を放置したり何度も繰り返したりすると慢性化する恐れがあります​。慢性裂肛になると傷が深くただれて潰瘍になり、肛門の外側に「見張りイボ」、内側に「肛門ポリープ」と呼ばれる突起ができることがあります​。

それらは裂肛が長引いているサインです。また、肛門の固い瘢痕(はんこん)組織が増えて**肛門狭窄(こうもんきょうさく:肛門が狭くなった状態)**を引き起こし、便が細くなる・排便時以外にも痛みが続くといった悪循環に陥る場合もあります​。そうなる前に適切な治療を受けることが重要です。

治療法:市販薬やクリニックでの治療

裂肛は早期であれば自宅でのセルフケアや市販薬で治せる場合もあります​。ただし、症状が強い場合や数日~1週間ほどケアしても改善しない場合は、専門の医療機関で診察を受けましょう。ここでは自分でできる治し方と、クリニックで行われる治療について説明します。

自宅でできる治療と市販薬による対処

排便をスムーズにして傷を治すことが第一です。生活面では食物繊維を多く含む食事を心がけ、水分も十分に摂って便をやわらかく保ちます​。便意を我慢しないようにし、特に朝食後はトイレに行く時間をとるなど規則正しい排便習慣をつけましょう​。排便時の痛みが強いときは、温かいお湯で肛門を温める座浴(ざよく)が効果的です。排便の前後に肛門周囲をぬるま湯に浸すことで筋肉がゆるみ、痛みが和らいで傷の治りも促進されます​。

また、市販の痔治療薬を使うのも有用です。裂肛に効果のある市販薬として、肛門に塗る軟膏タイプや肛門に入れる坐薬タイプ、チューブで肛門内に注入できる軟膏など様々な製品が販売されています​。症状に合わせてこうした市販薬を使用してみてください​。市販薬には傷の治りを助ける成分や痛み・かゆみを和らげる成分が含まれており、軽い裂肛であれば症状の改善が期待できます​。さらに便秘が原因の裂肛には便秘薬を併用すると効果的です。酸化マグネシウムなどの刺激の少ない下剤や、痔に用いられる漢方薬の乙字湯(おつじとう)などがあります​。ただし刺激性の強い下剤を乱用すると下痢を引き起こし、かえって裂肛を悪化させる恐れがあるため注意しましょう​。市販薬や便秘薬の選択に不安があれば、薬剤師に相談してみてください。

病院・クリニックでの治療: 専門の医師による診察では、本当に裂肛かどうか他の肛門疾患との鑑別も含めてチェックしてもらえます​。裂肛と診断された場合、多くは薬物による治療(保存的治療)が行われます。傷を治す軟膏や坐薬、痛み止め、便を柔らかくする薬などを組み合わせて治療することで、ほとんどの裂肛は改善します​。ですから「切れ痔くらい恥ずかしくて…」と我慢せずに早めに相談してください。肛門の専門外来(肛門科や消化器外科など)では症状に応じた薬の処方に加えて、再発防止の生活指導なども受けられます​。

なかなか治らない慢性裂肛の場合は手術が検討されることもあります。例えば、固くなった筋肉を部分的に切開して肛門を広げる方法や、治りにくい潰瘍部分・見張りイボを切除して新しい傷にする方法などがあります​。手術が必要なケースは裂肛全体から見るとごく一部ですが、症状が長引いている方には有効な治療法です。多くは日帰りまたは短期間の入院で可能な比較的小さな手術ですので、必要な際は医師と相談してみてください。「もしかして手術になるのでは…」という不安も含め、疑問点は遠慮なく質問すると良いでしょう。

肛門科は恥ずかしい?

症状がつらいのに肛門科の受診をためらう方は少なくありません。特に女性は尻込みしがちですが、裂肛は女性にも多い疾患です​。最近は女性医師が診察してくれる肛門科もありますので、安心して受診してください​。肛門科の医師は毎日のように痔の患者さんを診ていますから、恥ずかしがらずに相談しましょう。

再発予防と日常生活の工夫

裂肛は一度治っても、生活習慣によっては再発しやすいものです​。根本的には便秘や下痢になりやすい生活上の問題がないか見直すことが大切です。日常生活で次のような点に気をつけてみましょう。

  • 食生活の改善: 便を柔らかく保つため、食物繊維を豊富に含む野菜や果物、全粒穀物などをしっかり摂りましょう。水分も不足しないよう、1日あたり1~1.5リットル程度の水分補給を心がけてください​。アルコールやカフェインの過剰摂取は脱水につながるので控えめにします。ダイエット中の方も極端に食事量を減らさず、食物繊維や水分は十分に摂取するようにしましょう。
  • 排便習慣を整える: 毎日できれば決まった時間(特に朝)に排便する習慣をつけます。朝食をとると胃腸が反射的に動き出し便意が起こりやすくなるので、忙しくても朝食はなるべく摂りましょう​。強い便意を感じたら我慢せずすぐトイレに行くことも大切です。我慢すると便が硬くなり裂肛が再発しやすくなります。トイレではできるだけリラックスし、いきみ過ぎないようにしてください。ついスマホを見て長時間座ってしまう習慣がある方は、肛門に負担をかけるため注意しましょう。
  • 適度な運動とストレス管理: 軽い運動は腸の動きを促し、便秘解消に役立ちます​。散歩やストレッチなど無理のない範囲で構いませんので日常に取り入れてみてください。逆に過度なストレスや睡眠不足は自律神経の乱れから便秘や下痢を招く場合があります​。趣味やリラックスできる時間を持つ、十分な睡眠をとるなどしてストレースを溜め込みすぎないようにしましょう。
  • 肛門周りのケア: 排便後は肛門周囲を清潔に保ちましょう​。トイレットペーパーで強くこすらず、優しく押さえるように拭き取ります。必要に応じて温水洗浄便座(シャワー機能)や濡らした柔らかい紙で汚れを落としても構いません​。その後はしっかり水分を拭き取り、肛門を常に乾燥・清潔に保つことを意識してください。アルコール成分を含むウェットティッシュは刺激となるため使用を避けましょう​。また、お風呂で身体を温める習慣も肛門周囲の血行を良くし、傷の治癒促進や再発予防につながります​。

以上のような生活改善によって、多くの裂肛は予防することが可能です。一度裂肛を経験した方は「また切れてしまうのでは」と不安になるかもしれませんが、生活習慣に気をつけて便を良い状態に保つことが最大の予防になります。

まとめ

裂肛(切れ痔)は肛門の皮膚が切れてしまうことで起こる身近なトラブルです。排便時の鋭い痛みや肛門からの出血に悩まされますが、原因の多くは便秘や下痢といった生活習慣にあります​。幸い適切なセルフケアや薬物治療によって、多くの場合は改善する病気です​。市販薬で一時的に症状が落ち着くケースもありますが、再発を繰り返して悪化すると最悪の場合は手術が必要になることもあります​。痛みや出血が長引くときは我慢せずに早めに肛門科を受診しましょう。肛門科では裂肛と他の病気との鑑別や適切な治療薬の処方、生活習慣の改善指導などを専門的に行っています​。

「肛門が痛いなんて恥ずかしい」と思うかもしれませんが、裂肛は誰にでも起こり得るものです。特に女性にもよくみられる症状ですので恥ずかしがる必要はありません​。恥ずかしさよりも痛みを取り除くことが大切です。当院でも裂肛に関するご相談を多数お受けしていますので、つらい症状や不安があれば遠慮なくご相談ください。早めに適切な治療を受ければ、裂肛は怖くありません。毎日のトイレを安心して過ごすためにも、早期の対処と受診を心がけましょう。

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