2025年4月08日
―身近だけど、知られていない「痔」のこと―
「痔(じ)」という言葉を聞くと、なんとなく恥ずかしくて話題にしづらいと感じる方も多いかもしれません。でも実は、痔は日本人の3人に1人が経験するといわれるほど、非常に身近な病気です。今回は、痔のなかでも最も多いタイプの「内痔核(ないじかく)」について、症状や原因、治療法まで詳しくご紹介します。
■痔核とは?
痔核とは「いぼ痔」とも呼ばれ、肛門の内側にある血管のかたまり(静脈叢)が腫れ、こぶのようになる状態を指します。通常、肛門の中には排便をコントロールするために「クッション」の役割を果たす柔らかい組織があります。このクッションがうっ血して膨らみ、痔核になるのです。厳密には痔核は歯状線(肛門と直腸のつなぎ目)うを境に内痔核と外痔核に別れますが、病変はまたがることが多く、これらも一般的に内痔核と呼ばれることが多いです。
■ 主な症状
内痔核の初期では、痛みを感じることはほぼありません。なぜなら、内痔核ができる場所には痛みを感じる神経がないからです。そのため、初期には自覚症状が少なく、気づかないことも多々あります。しかし、進行してくると次のような症状が見られるようになります。
・排便時の出血(鮮やかな赤い血)
・肛門から何かが出てくる感じ(脱出)
・違和感や残便感
痔核が大きくなって外に出てしまう脱肛がある場合は、指で押し戻す必要が出てくることもあります。さらに進行すると、自然には戻らなくなり、日常生活に支障が出ます。
■ 内痔核の原因
内痔核の原因は生活習慣と深く関係しています。以下のようなでリスクが高まるとされています。
・便秘や下痢を繰り返す
・長時間のいきみ(トイレに長く座る)
・妊娠・出産(特に後期は腹圧が上がりやすい)
・立ち仕事や長時間の座位
・運動不足・肥満
・加齢による肛門周囲の筋力低下
便秘やいきみが続くと、肛門周囲の血管に強い圧力がかかり、血流が滞るため内痔核ができやすくなります。
■ 内痔核の進行度(ステージ)
内痔核は、脱出の程度によって**4段階(グレード1~4)**に分類されます。

■ 検査・診断方法
内痔核は視診・指診・肛門鏡検査によって診断されます。出血がある場合、大腸がんや炎症性腸疾患との鑑別が重要です。特に40歳以上の方や、血便が長引く場合は内視鏡検査(大腸カメラ)を行うことを推奨します。
■ 治療法
治療は内痔核の進行度や症状の程度によって異なります。
- 保存的治療(軽症の場合)
・食物繊維を多く摂る
・排便習慣の改善(トイレに長く座らない)
・肛門を温める(坐浴)
・軟膏や座薬で炎症を抑える
- 手術以外の治療(中等症の場合)
・ジオン注射(ALTA療法):痔核内に硬化剤を注射し、痔を縮小させる治療です。
・輪ゴム結紮療法(RBL):痔核の根元を輪ゴムで縛り、血流を遮断して脱落させます。
- 外科的手術(重症の場合)
・結紮切除術:痔核を切除し、出血や脱出を根本的に解消する手術方法です。
■ 予防のポイント
日常生活のちょっとした工夫をすることで、内痔核の予防・再発防止を行うことができます。
・便秘を予防する(食物繊維・水分摂取を心がける)
・長時間のいきみを避ける
・肛門をウォシュレットなどで清潔に保つ
・肉体的・精神的なストレスを減らす
・冷えを防ぐ
■ 最後に
痔核は誰にでも起こりうる、ごくありふれた病気です。早期の対処で多くの場合は改善が期待できますし、症状が重くても適切な治療法がそろっています。
もし「血が出た」「違和感がある」といった症状があれば、恥ずかしがらずに、どうぞお気軽に当院へご相談ください。