夏に急増する細菌性胃腸炎──暑さと湿気が招く“食中毒シーズン”の乗り切り方【2025年版】|横浜市横浜駅前の消化器内科・婦人科・内科|横浜駅前ながしまクリニック

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夏に急増する細菌性胃腸炎──暑さと湿気が招く“食中毒シーズン”の乗り切り方【2025年版】

夏に急増する細菌性胃腸炎──暑さと湿気が招く“食中毒シーズン”の乗り切り方【2025年版】|横浜市横浜駅前の消化器内科・婦人科・内科|横浜駅前ながしまクリニック

2025年7月11日

1. なぜ「夏=胃腸炎」なのか

最近は、梅雨明けから9月〜10月にかけて最高気温が30 ℃を超え、湿度も70%前後を超える陽気が多いですよね。高温多湿は細菌の増殖速度を10倍以上に押し上げるとされており、食中毒由来の細菌性胃腸炎が冬場のウイルス性をしのいで主役になります。厚生労働省の統計でも、食中毒患者のおよそ6割が6〜9月に集中しています。

2. 夏胃腸炎の“犯人”


夏全体でみるとサルモネラ症の発生率は他季節の約2倍に跳ね上がるとCDC報告は指摘しています。

また、国立感染症研究所はカンピロバクター事件数が6月ピーク、鶏肉不十分な加熱が主要因と分析しています。

腸炎ビブリオも海水温の上昇と相関し、1990年代後半以降高止まりのままです。

3. 症状と経過

典型的には突然の腹痛・水様性下痢・38 ℃前後の発熱が主な症状になります。サルモネラでは嘔吐よりも高熱と筋肉痛が目立ち、腸炎ビブリオでは激烈な腹痛が特徴です。平均2〜4日で軽快しますが、脱水が最大の敵です。尿量が半減、皮膚が乾く、眩暈がしたら補水を急ぎましょう。

4. 自宅での応急処置

まずは自宅でできる対策を行います。

  1. 嘔吐が治まったら、可能な範囲で、経口補水液(ORS)を体重1 kgあたり50 mL/日を目安に少量ずつ摂取を開始します。
  2. 食事が食べられるようであれば、最初はお粥・バナナ・すりおろしリンゴなど低脂肪・低残渣食品を意識して摂取してみてください。
  3. 整腸剤は症状のサポート程度ですが効果はあります。市販の下痢止めは細菌排出を遅らせるため、医師指示がない限り必ず控えてください。

5. こんな時は医療機関へ

下記のような症状が出現する場合にはすぐに医療機関への受診をお勧めします。

・39℃の発熱、血便

・8時間以上尿が出ない、起立時のふらつき

・3日以上下痢が続く

妊娠中・高齢者・糖尿病・肝臓疾患など基礎疾患を持っている

受診時は便培養や血液検査のほか、症状遷延例では胃カメラ・大腸カメラで潰瘍や炎症性腸疾患を除外することもあります。

6. 肝臓も要チェック

激しい脱水で血液が濃縮すると、一過性にAST・ALTといった項目(肝機能障害を示す値です)が上昇することがあります。またサルモネラ菌血症が肝臓に波及すると肝障害が悪化するケースも報告されているため、慢性肝炎や脂肪肝を抱える人は早めの血液検査が安心です。

7. 夏の胃腸炎を防ぐ5つの鉄則

夏場は特に下記を気をつけてください!

  1. つけない:調理前後に石けん手洗い30秒。生肉・魚用と生野菜用で包丁とまな板を分ける。
  2. 増やさない:買い物は保冷バッグ、冷蔵庫は10 ℃以下・冷凍庫は–15 ℃以下を維持。
  3. やっつける:鶏肉は中心温度75 ℃で1分、貝類は90 ℃で90秒。バーベキューの“半生”はNG。
  4. 持ち出さない:お弁当は保冷剤2個以上。直射日光下のクーラーボックスは30分ごとに日陰へ。
  5. 水場に注意:川遊び後の手指はアルコールより流水と石けん。

8. まとめ

夏は「細菌の季節」。高温多湿と屋外イベントが重なり、細菌性胃腸炎が一気に増えます。脱水対策と食の安全管理を徹底すれば多くは防げますが、症状が長引く場合は胃カメラ・大腸カメラを含めた精査で重篤な腸疾患を見逃さないことが肝要。肝臓を守る意味でも早めの受診を心掛け、この夏を元気に乗り切りましょう。

※本記事は公的機関・大規模病院・査読論文の公開資料をもとに執筆しています。個別の診断・治療は必ず医師にご相談ください。

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