月経困難症
月経困難症
月経困難症とは、生理に伴う強い痛みや不快な症状で日常生活に支障をきたす状態のことです。実は適切な治療を行えば、月経困難症の症状は大きく改善できる病気です。多くの女性が「生理痛は仕方ない」と我慢しがちですが、もう一人で抱え込まないでください。 つらい生理痛に苦しむ10代~40代の方々をサポートし、痛みのない日常を取り戻すお手伝いをいたします。

月経困難症(げっけいこんなんしょう)とは、生理(月経)の時期に起こる強い下腹部痛や腰痛などの症状により、学校や仕事、家事など日常生活に支障をきたす状態を指します。単なる「生理痛(月経痛)」と比べて痛みの程度が重く、鎮痛薬が手放せなかったり、寝込んでしまったりするほどです。女性の 4人に3人 は生理痛を経験し、そのうち 4人に1人 は「ひどい生理痛」に該当しますが、実際に婦人科を受診している人は5人に1人程度といわれています。多くの方が痛みを我慢しているのが現状ですが、月経困難症は我慢せず治療できる症状です。
月経困難症の主な症状は 生理中の強い下腹部痛(いわゆる生理痛) です。ひどい場合には冷や汗が出るほど激しい痛みを感じたり、毎回生理のたびに数日間動けなくなることもあります。痛み以外にも、以下のような身体的・精神的な不調が現れることがあります。
これらの症状により、学校を休まざるを得ない、仕事に集中できない、家事がこなせない といった支障が出る場合は、月経困難症と考えられます。月経のたびに毎回このようなつらい症状がある場合は、我慢せずにご相談ください。
生理痛がひどくなる原因には、大きく分けて 2種類 あります。ひとつは「機能性月経困難症」といい、子宮や卵巣に特別な病気がないのに痛みが強いタイプです。もうひとつは「器質性月経困難症」で、子宮内膜症や子宮筋腫など何らかの病気(器質的疾患)が原因となっているタイプです。
機能性月経困難症は、明らかな疾患がないにもかかわらず生理痛が強い状態を指します。初潮から数年以内の10代の若い女性に多く、毎月の生理期間中に限って痛みやだるさ、集中力低下などの症状が現れるのが特徴です。主な原因としては、生理時に分泌される 「プロスタグランジン」 という物質の過剰分泌が挙げられます。プロスタグランジンは子宮を収縮させて経血を体外に押し出す働きをしますが、分泌量が多すぎると必要以上に子宮が強く収縮し、激しい腹痛や腰痛の原因になります。また子宮頸管(しきゅうけいかん)が狭い未経産婦の若い方では、経血の通り道が狭く固いため痛みが強く出る傾向があります。さらに体の冷えや過労・睡眠不足など 身体的・精神的ストレス も痛みを悪化させる要因です。こうした要因が重なり、機能性月経困難症では毎回の月経時に強い痛みが引き起こされます。
器質性月経困難症は、子宮や卵巣などに原因となる病気がある場合の生理痛です。代表的な原因疾患は 子宮内膜症(生理のたびに子宮内膜様の組織が子宮の外でも増殖・出血する病気)で、これが最も多く報告されています。そのほか 子宮筋腫(子宮の筋肉にできる良性の腫瘍)や 子宮腺筋症(子宮の筋層内に子宮内膜に似た組織ができる病気)も、器質性月経困難症の原因として多い疾患です。これらの病気があると、生理のたびに月経痛が年々ひどくなったり、経血の量が多くレバー状の血塊が出る、生理ではない時期にも下腹部痛がある、性交時痛や排便痛 を伴うといった症状が現れることがあります。もし生理痛に加えてこうした症状がある場合は、器質性(月経困難症の原因疾患)が隠れている可能性があるため注意が必要です。
月経困難症が疑われる場合、まずは詳しい問診で症状の内容やタイミング、月経周期との関連、既往症などをお伺いします。問診では「いつから痛みが強くなったか」「市販薬でどの程度おさまるか」「月経以外の日に痛みがないか」などを確認します。その上で、婦人科診察を行い、骨盤内の検査(内診や経腟超音波検査)で子宮や卵巣に異常がないか調べます。必要に応じて血液検査で貧血や腫瘍マーカーのチェック、クラミジアなど性感染症の検査、MRI等の画像診断を追加し、生理痛の原因となる病気の有無を総合的に判断します。検査結果にもとづき、機能性か器質性かを見極めて治療方針を決定します。
月経困難症の治療法は、大きく分けて原因に応じた根本治療と、痛みなど症状を和らげる対症療法があります。 器質性月経困難症(病気が原因の場合)では、子宮内膜症や子宮筋腫など 原因疾患そのものの治療 を行います。例えば子宮筋腫が大きく症状が重い場合は手術的に筋腫を取り除く治療が検討されますし、子宮内膜症であれば病状に応じてホルモン療法や手術療法を組み合わせます。
一方、機能性月経困難症(病気がない場合)や器質性でも症状緩和が必要な場合には、以下のような 対症療法(痛みを抑える治療) を行います。
生理痛に対する第一選択は鎮痛薬の服用です。イブプロフェンやロキソプロフェンなどのNSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛薬)は、痛みの原因物質であるプロスタグランジンの産生を抑えて痛みを和らげます。ポイントは「痛くなる前~痛み始めに早めに飲む」ことで、痛みが本格化する前に服用すると高い効果が得られます。
低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(いわゆる低用量ピル)は、月経困難症や子宮内膜症の治療に広く用いられるホルモン剤です。女性ホルモン(エストロゲン・黄体ホルモン)を一定量ずつ含む錠剤を毎日服用することで、排卵を抑制し子宮内膜を薄く保つ作用があり、月経痛の元になるプロスタグランジンの分泌も減少します。結果として生理痛の緩和はもちろん、経血量も減って貧血予防にもつながります。低用量ピルには避妊を目的としたもの(自費診療)と、月経困難症の治療を目的に処方されるもの(保険適用のLEP剤)があり、治療目的であれば健康保険が適用されます。痛み止めでは十分な効果がない場合や、繰り返す生理痛を根本から軽くしたい場合、生理を規則正しくしたい場合などに医師が検討します。正しく服用すれば避妊効果も得られますが、治療目的のピルはあくまで月経痛や内膜症の改善が主な目的です。
黄体ホルモン(プロゲスチン)系の薬も月経困難症の治療に有効です。なかでもジエノゲスト(商品名:ディナゲスト)は子宮内膜症の治療薬ですが、継続内服により子宮内膜を萎縮させ、生理痛を大幅に軽減します。低用量ピルが使えない場合や、内膜症が疑われるケースで用いられます。服用中は月経が止まることがありますが、薬を中止すればまた生理は来るのでご安心ください。
ミレーナ®は子宮内に留置する小さな器具で、黄体ホルモン(レボノルゲストレル)を子宮内で持続的に放出するしくみです。避妊目的だけでなく月経困難症や過多月経の治療にも用いられ、装着すると5年間にわたり効果が持続します。子宮内で直接ホルモンを作用させるため全身への副作用が少なく、生理痛の改善や経血量の大幅な減少が期待できます。将来的に妊娠希望がある方でも、外せば妊娠可能です。出産経験のない若い方でも装着できますので、ピルの飲み忘れが心配な場合や長期的に生理痛を抑えたい場合に選択肢となります。
症状や希望に応じて、漢方薬や子宮収縮を和らげる鎮痙剤を処方することもあります。例えば、当帰芍薬散や芍薬甘草湯といった漢方は体質改善や冷え症の緩和に役立つ場合があります。また貧血がある方には鉄剤を併用することもあります。器質性月経困難症では、原因疾患の治療(手術含む)と上記の内科的治療を組み合わせて症状改善を図ります。
「生理痛くらいで受診していいのかな…」と受診をためらってしまう方も多いですが、日常生活に支障が出るようなら受診の目安と考えてください。生理痛や月経にまつわる症状は個人差が大きいので、他人と比べずに自分がつらいと感じるかどうかが基準です。次のような場合は、我慢せず婦人科を受診しましょう。
上記のような症状がある場合は、我慢せず専門医に相談しましょう。つらい症状の陰に病気が隠れている可能性もあります。早めに受診して適切な治療を受ければ、痛みはかなり改善できる場合が多いです。
横浜駅前ながしまクリニックの婦人科では、日本産科婦人科学会専門医の女性医師が、生理痛や月経に関するあらゆるお悩みに親身に対応いたします。u「毎月のことだから…」「みんな我慢しているから…」とつらい生理痛を「いつものこと」と無理に耐えている方は少なくありません。しかし、生理痛は正しい治療できちんと改善できます。当クリニックでは、症状やライフスタイルに合わせてお一人おひとりに合った治療プランをご提案します。痛み止めの処方や低用量ピルによる治療はもちろん、必要に応じてミレーナの装着にも対応可能です。
「生理痛くらいで相談していいのかな?」と心配する必要は全くありません。どんな小さなお悩みでも遠慮なくご相談ください。 生理痛に悩むすべての方が、毎月の憂うつから解放され笑顔で過ごせるよう、スタッフ一同全力でサポートいたします。
月経困難症とは、生理に伴う痛みや不調が強く、日常生活に支障をきたす状態のことです。一般的な生理痛(軽度~中程度の下腹部痛や腰痛)は多くの女性に見られますが、月経困難症では痛みの程度が非常に強かったり、鎮痛剤が効かないほどである点が異なります
。例えば痛みで学校や仕事を休まなければならない、寝込んでしまう、といった場合は月経困難症に該当します。月経困難症は病気ではなく症状の名称ですが、その背景に子宮内膜症などの病気が隠れていることもあります
生理痛が強すぎる場合、子宮内膜症や子宮筋腫などの病気が隠れている可能性があります。特に、年々痛みが増してきている、生理以外の日にも下腹部痛がある、経血量が多い、レバーのような塊が出る、性交時に痛みがある――こうした症状が当てはまる場合は器質性月経困難症(病気による月経痛)の可能性があります。最も多い原因疾患は子宮内膜症で、他には子宮筋腫や子宮腺筋症などがあります。一方、初潮から間もない10代で見られる強い生理痛は、明らかな病気がない 機能性月経困難症 のことも多いです
。いずれにせよ、痛みが強い場合は一度婦人科で検査を受け、病気の有無を確認することをおすすめします。
月経困難症の治療には、痛みを和らげる対症療法と、内膜症や筋腫など原因があればその治療の両面があります。痛みが主な場合はまず市販も含め鎮痛剤(NSAIDs)で様子を見ます。鎮痛剤で十分効かないときや、根本的に月経痛を軽減したい場合には低用量ピル(LEP)の服用を検討します。ピルは排卵を抑えて生理そのものを軽くするので、痛みの予防にとても効果的です。ピル以外にも黄体ホルモン剤(ジエノゲストなど)や、必要に応じて漢方薬を使うこともあります。さらに、症状や希望に応じては子宮内に装着するミレーナという方法も選択できます。ピルを飲むことに抵抗がある方もいらっしゃいますが、月経困難症の治療目的で使うピルは健康保険が適用されますし、正しく服用すれば安全に月経痛を予防できます。患者様の体質や希望に合わせて治療法を提案しますので、「ピルしかないの?」と不安な場合もまずはご相談ください。
初めて婦人科を受診する方は不安が大きいですよね。当院ではできるだけ患者様の負担が少ない方法で検査・診察を行います。問診では生理痛の様子やこれまで試した対処法などを詳しくお聞きし、その情報だけで原因が推測できることも多いです。必要に応じて行う内診や経腟エコー検査では、子宮や卵巣の状態を確認して痛みの原因になり得る病変の有無を調べます。痛みの強いときは無理に内診をせず、まず腹部超音波検査で見ることも可能です。生理中に受診いただいても構いませんし、ご不安な場合は遠慮なくスタッフにお申し出ください。リラックスして受診いただけるよう配慮いたします。
月経困難症の症状は、年齢やライフイベントによって変化することがあります。一般的に、初潮から数年経ってホルモン分泌が安定してくると、生理痛が和らぐ人もいます。また、出産を経験すると骨盤周りの血流改善や子宮頸管が広がる影響で、生理痛が軽減するケースもあります。ただし個人差が大きく、中には出産後も生理痛が続く方や、20代後半以降に子宮内膜症が発症して痛みが強くなる方もいます。「そのうち治るだろう」と放置せず、今つらい痛みがあるなら早めに対処しましょう。適切な治療を受ければ、たとえ完治しなくても痛みの程度を大幅に軽減することが可能です。将来の妊娠希望がある方にとっても、早めに対処しておくことで子宮内膜症などの進行を防ぎ、将来の妊娠の可能性を守ることにもつながります。
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