2025年6月27日
健康診断の血液検査で「AST」「ALT」「γ-GTP」といった肝臓の数値が基準値を超えていると指摘されることは珍しくありません。肝臓の数値異常は放置すると危険ですが、まずは慌てずにその意味や原因を正しく理解し、適切な対処をすることが大切です。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、障害を受けても痛みなどの自覚症状が出にくいため、検査値の異常が体からの重要なサインになりますkyoukaikenpo.or.jp。本記事では、肝臓の数値(AST・ALT・γ-GTP)の意味や基準値、異常の背景にある代表的な原因(脂肪肝、アルコール性肝障害、ウイルス性肝炎など)についてわかりやすく解説します。また、生活習慣の改善方法(脂肪肝 改善法)や追加の検査(腹部エコーや胃カメラ・大腸カメラなど)についても触れ、最後に専門医による診療が受けられる医療機関の情報も紹介します。健康診断で肝臓の数値異常を指摘され不安な方は、ぜひ参考にしてください。

肝臓の数値(AST・ALT・γ-GTP)とは?基準値と異常の意味
AST(GOT)とALT(GPT)はいずれも肝臓の細胞から放出される酵素で、肝機能を調べる代表的な指標です。ASTは心臓や筋肉、肝臓に多く存在し、ALTは主に肝臓に存在していますningen-dock.jp。健康診断などで測定されるAST・ALTの基準値は一般に30 U/L以下程度(検査法や施設により若干異なります)で、それ以上の高値になると肝細胞のダメージを示唆します。AST・ALTが高い場合には、急性肝炎・慢性肝炎・脂肪肝・肝臓がん・アルコール性肝炎など肝臓自体の病気が疑われます。
一方、γ-GTP(ガンマGTP)は肝臓や胆道(胆管)に異常があると上昇する酵素で、特にアルコール摂取の影響を反映しやすい指標です。γ-GTPの基準値は男性でおおむね50 U/L以下、女性で30 U/L以下とされ、これを上回る場合はアルコール性肝障害、慢性肝炎、胆汁うっ滞(胆管のつまり)、薬剤性肝障害などの可能性があります。特に飲酒習慣がある人でγ-GTPが高い場合、肝臓がアルコールによる負担を受けているサインと考えられます。
なお、ASTやALTがわずかに基準値を超える程度の「肝機能異常」は一般の方にもときどき見られます。しかし、その背後には様々な肝臓・胆道系の異常が隠れている可能性があるため、軽視せず原因を探ることが重要です。
肝臓の数値が高い原因は?代表的な肝臓病
肝臓の数値(AST・ALT・γ-GTP)の異常をきたす原因には様々なものがありますが、代表的なものとして以下が挙げられます。
脂肪肝
肝臓に中性脂肪が過剰に蓄積した状態です。過食や高脂肪食、運動不足による肥満など生活習慣の乱れが主な原因で、日本人成人の約20%近くが脂肪肝を有していると推計されています。脂肪肝自体に痛みなどの自覚症状はほとんどありませんが、健康診断の採血でASTやALTの上昇によって発見される場合がほとんどです。
かつて脂肪肝は比較的良性と考えられていましたが、近年では非アルコール性脂肪肝炎(NASH)といって飲酒習慣がない脂肪肝でも慢性肝炎や肝硬変、さらには肝臓がんに進行するケースがあることがわかってきました。脂肪肝と指摘された場合は放置せず生活習慣を見直すことが重要です。
また近年では代謝異常も密接に関わることから、メタボリックシンドロームの基準も取り入れつつMASLD,MASHなどの名前に変更もされています。
https://www.m3.com/clinical/news/1194644
https://www.carenet.com/news/general/carenet/56896
アルコール性肝障害
長年にわたる過度の飲酒は肝臓に大きな負担をかけ、まず「アルコール性脂肪肝」を生じます。飲酒を続けると肝細胞の炎症が進み「アルコール性肝炎」となり、それでもなお飲酒をやめない場合は肝機能の低下が進行して肝硬変に至りますseikatsusyukanbyo.com。アルコール性肝障害は初期には症状がほとんどありませんが、進行すると腹部の痛みや疲れやすさとして現れることもあります。アルコール性肝炎や肝硬変の段階では肝臓が硬く縮んでしまい、肝がん・肝不全のリスクも高まります。飲酒習慣のある方でAST・ALTやγ-GTPが高い場合、アルコールが原因の肝障害を強く疑います。
ウイルス性肝炎
B型肝炎ウイルス(HBV)やC型肝炎ウイルス(HCV)への感染によって肝臓に炎症が起こる病気です。日本では特にC型肝炎が慢性肝炎から肝硬変・肝がんへ進行する代表的な原因として知られています。B型肝炎も慢性化すると肝臓の数値異常が持続し、放置すれば肝硬変・肝がんのリスクがあります。ウイルス性肝炎の場合、原因ウイルスに対する抗ウイルス治療が必要になるため、早期に専門医を受診して適切な治療を受けることが重要です。
その他の原因
まれに薬剤性肝障害(特定の薬やサプリメントによる肝臓への毒性)や、自己免疫による自己免疫性肝炎、胆石などによる胆管閉塞(胆汁うっ滞)などが肝機能異常の原因となることがあります。また、ASTが単独で高い場合は心筋や骨格筋の障害(心筋梗塞や筋疾患など)による可能性も指摘されています。いずれにせよ原因の特定には医療機関での詳しい評価が必要です。
肝臓の数値異常を改善するには:生活習慣の見直し(脂肪肝 改善法)
肝臓の数値を改善する第一歩は生活習慣の改善です。**特に脂肪肝やアルコール性肝障害が疑われる場合、日々の習慣を見直すことで肝臓の負担を減らし、検査値の正常化を図ることができます。【脂肪肝 改善法】として、次のポイントに取り組みましょう。
食事と運動で適正体重の維持・減量
バランスの良い食生活を心がけ、脂質や糖質の過剰摂取を控えましょう。野菜やタンパク質中心の食事に改善し、間食や夜食を減らすことが効果的です。また、積極的に体を動かし、週に150分程度の有酸素運動(例えば1日30分のウォーキングなど)を目標にしましょう。食事改善と運動によってゆるやかに体重を減らすことで、肝臓に蓄積した脂肪は減少し、肝酵素(AST・ALT)値も正常化しやすくなります。急激な無理な減量はかえって肝臓に負担をかける恐れがあるため、焦らず継続することが大切です。
お酒の節制(禁酒・減酒)
アルコールが原因と思われる場合、禁酒または節酒は肝臓改善の最重要ポイントです。アルコール性脂肪肝の段階であれば、飲酒量を控えるだけで肝臓は元の正常な状態に回復します。しかしアルコール性肝炎に進行している場合は、肝臓の炎症を抑える薬物療法や入院治療が必要になることもあります。いずれの場合も、肝臓の数値が高い方は可能な限りお酒の量を減らし、休肝日を設けるようにしてください。肝硬変に至った場合は断酒が不可欠です。
その他の生活習慣改善
規則正しい生活と十分な休養も肝臓の健康には重要です。睡眠不足や過労は肝機能を低下させる一因となるため、日頃から休息をしっかりとりましょう。また、糖尿病や脂質異常症、高血圧などを指摘されている場合はそれらの治療もきちんと行い、全身の健康管理に努めることが結果的に肝臓を守ることにつながります。
※なお、ウイルス性肝炎が原因で肝臓の数値異常が起きている場合は、生活習慣の改善だけでは不十分です。この場合、専門医のもとで抗ウイルス薬などによる治療が必要になります。B型・C型肝炎ウイルスによる肝機能異常を指摘された方は早めに消化器内科・肝臓内科を受診し、適切な治療方針を相談しましょう。
異常が見つかったら追加検査も:腹部エコーや胃カメラ・大腸カメラなど
健康診断で肝臓の数値異常を指摘された場合、原因を特定するために追加の検査を行うことが一般的です。まず医療機関では、血液検査で再度肝機能を確認するとともに、B型肝炎ウイルス抗原(HBsAg)やC型肝炎ウイルス抗体(HCV-Ab)などを調べてウイルス性肝炎の有無を確認します。併せて腹部超音波検査(エコー)を実施し、肝臓に脂肪が蓄積していないか、肝硬変の有無、腫瘍の有無などを詳しく観察します。超音波検査は痛みもなく肝臓の状態を把握するのに有用で、脂肪肝では肝臓が白っぽく描出される(bright liver)所見が得られます。

脂肪肝で認めるblight liver
「脂肪肝の超音波診断基準」 日本超音波学会HPより参照
さらに必要に応じて、CT検査やMRI検査など高度な画像検査を行うこともあります。また、肝臓以外の消化器の状態も含めて総合的にチェックするため、胃カメラ(上部消化管内視鏡)や大腸カメラ(下部消化管内視鏡)の検査が勧められる場合もあります。
例えば、アルコール性肝硬変が疑われる場合には食道や胃の静脈瘤の有無を調べる目的で胃カメラを実施したり、肝機能異常の背景に生活習慣病がある方には消化管のチェックとして大腸カメラによる検診を行ったりします。これら内視鏡検査は直接消化管の中を観察できるため、肝臓だけでなく消化器全体の健康状態を評価するのに役立ちます。医師と相談のうえ、自分に必要な検査を受けるようにしましょう。
肝臓専門医のいる横浜駅前ながしまクリニックへご相談ください
健康診断で肝臓の数値異常を指摘された方は、お一人で悩まず専門医に相談することが肝臓の健康を守る近道です。横浜駅前ながしまクリニックでは、肝臓専門医(日本肝臓学会専門医)による質の高い診療を行っています。当クリニックでは血液検査や腹部エコー検査はもちろん、必要に応じて胃カメラ・大腸カメラなどの精密検査まで含めて総合的に評価し、それぞれの患者さんに最適な治療と生活指導を提供しています。肝臓の数値が高いと言われて不安な方、脂肪肝や肝炎が心配な方は、お気軽に当クリニックにご来院ください。専門医があなたの肝臓の状態を丁寧に評価し、将来にわたって元気な肝臓を維持できるようサポートいたします。