2025年6月28日
暑い夏はつい「夏バテかな?」と感じる不調も、実は貧血が関係しているかもしれません。特に鉄欠乏性貧血は貧血全体の約9割を占めるほど多く、汗をかきやすい夏場は要注意です。本記事では、夏に貧血(鉄欠乏性貧血)が起こりやすい原因や症状、そして効果的な対処法についてわかりやすく解説します。

鉄欠乏性貧血とは?夏バテとの見分け方
鉄欠乏性貧血とは、体内の鉄分が不足してヘモグロビン(赤血球中の酸素を運ぶタンパク)の量が減少し、全身が酸欠状態になる病気です。症状としては、めまい、立ちくらみ、頭痛、動悸、息切れ、全身のだるさなどが挙げられ、顔色が青白くなることもありますmed.oita-u.ac.jp。ひどくなると爪が反り返る「匙状爪」や、氷を異常に食べたくなる(氷食症)といった特徴的な症状が現れることもあります。夏バテによる疲労感や食欲不振と症状が似ていますが、長引く倦怠感や立ちくらみが続く場合は貧血を疑いましょう。
日本人女性は慢性的に鉄分が不足しがちであり、実は20~40代女性の約65%が貧血もしくは隠れ貧血ともいわれています。平均的な鉄の摂取量も必要量の6割程度にとどまっており、ダイエットなどの影響も大きいと報告されています。とくに女性は月経があるため男性よりも鉄が失われやすく、妊娠中は血液量が増えることでさらに貧血リスクが高まります。こうした背景から、夏場は「暑さ」と「鉄不足」のダブルパンチで貧血症状が出やすくなるのです。
夏に貧血が起こりやすい理由
発汗による鉄分喪失と水分バランスの変化
夏は汗をかく量が増えるため、体内から水分とともにミネラルも失われます。汗には鉄分も含まれており、大量に汗をかく暑い季節は鉄分不足による貧血になりやすいとされています。実際、1リットルの汗に約0.3~0.4mgの鉄が含まれるとの報告もあり、猛暑でたくさん汗をかく日はそれだけ鉄の流出量も増えてしまいます。さらに貧血が進むと倦怠感や食欲不振が生じ、いっそう夏バテ状態に近づいてしまうという悪循環にも陥りがちですsaiseikai.or.jp。暑い時期ほど意識的に水分と適度な塩分を補給しつつ、鉄分などのミネラル補給にも目を向ける必要があります。
食欲低下・栄養不足(夏バテやダイエット)
猛暑による食欲減退や、「夏までに痩せたい」という無理なダイエットも貧血を招く要因です。夏バテで食事量が減ると鉄の摂取量も不足しがちになり、鉄欠乏性貧血を起こしやすくなりますnicho.co.jp。例えばそうめんやサラダだけで簡単に済ませてしまう食事が続くと、赤血球を作る材料である鉄やタンパク質、ビタミン類が足りなくなってしまいます。特に偏食や朝食抜き、極端な低カロリー食などの乱れた食生活は鉄不足につながります。女性の場合、もともと月経で1日あたり1.5~2mg前後(男性の約2倍)の鉄が失われるため、夏に向けた過度な減量は「貧血の危険信号」と言えるでしょう。暑さで食が細くなりがちな時期こそ、栄養バランスの良い食事を心がけてください。
女性は要注意:月経や婦人科疾患による貧血
月経のある女性はどうしても鉄分不足になりがちです。月経時には1サイクルで約50~120mLの血液を失うとされており、それ以上に出血量が多い過多月経では当然ながら貧血を引き起こしますnarita.jrc.or.jp。生理のたびにこれだけの鉄が失われるため、慢性的な鉄欠乏に陥りやすいのです。出血量が多いかどうか自分では判断しにくいですが、ナプキンを1~2時間おきに替える必要があったり、大きなレバー状の血の塊が出る場合は過多月経の可能性があります。生理中にめまいや極度の疲労感がある場合も見逃さず、放置しないことが大切です。
また、婦人科系の疾患(過多月経をきたす病気)も貧血の大きな原因となります。代表的なのが子宮筋腫で、子宮の中にできる良性の腫瘍です。実は子宮筋腫は女性の約30%が持っているともいわれるほど頻度の高い疾患ですが、筋腫がある場所や大きさによって月経量に影響を及ぼします。特に子宮内腔にできる粘膜下筋腫では小さなもの(1cm程度)でも過多月経の原因となり、ひどい貧血を招くことがあります。その結果、動悸や息切れ、極度の疲労感など貧血の症状が現れることも珍しくありませんj-endo.jp。その他、子宮内膜症や子宮腺筋症といった疾患でも月経過多や不正出血が起これば貧血につながります。月経の量が多い、期間が長引く、出血がダラダラ続くといった症状がある方は、一度婦人科で相談してみましょう。
貧血かなと思ったら…検査と治療のポイント
めまいや立ちくらみ、慢性的な疲労感などで「貧血かも?」と感じたら、早めに医療機関で検査を受けることをおすすめします。貧血は放置せず原因を突き止めて治療すべき重要なサインです。病院では血液検査でヘモグロビン値やフェリチン値(貯蔵鉄)を調べ、鉄欠乏性貧血かどうか診断します。それと同時に、なぜ貧血になったのか原因を精査することが大切です。
鉄欠乏性貧血の場合、考えられる主な原因は「出血による鉄喪失」です。出血の場所としては、大きく消化管か婦人科系かに分けられます。そのため、必要に応じて胃カメラや大腸カメラなどの内視鏡検査で消化管からの出血がないか確認します。また女性の場合は婦人科系の検査(内診や経腟エコー等)も合わせて行うことが大切です。例えば閉経前の女性であっても、月経だけが原因と思い込まずに胃や大腸の検査を行うケースもありますmed.oita-u.ac.jp。胃潰瘍・大腸ポリープ・胃がん・大腸がんなどが隠れていれば貧血の原因となり得るため、必要に応じて精密検査で原因を特定することが重要です。
貧血の治療は、まず原因となっている出血や疾患への対処が基本です。婦人科疾患が原因ならば、低用量ピルや貧血改善薬の投与、場合によっては手術などで過多月経を改善します。消化管からの出血であれば、内視鏡治療や薬物治療で止血を図ります。同時に不足した鉄分を補充するため、鉄剤(内服薬や点滴)による治療を行います。鉄剤の内服治療は一般的に数ヶ月程度続けて体内の貯蔵鉄を十分に回復させます。自己判断で市販のサプリメントを大量に摂るのではなく、医師の指導のもと適切な治療を受けましょう。
夏の貧血を防ぐためのセルフケア
日頃から以下のポイントに気を付けることで、夏場の貧血を予防・改善することができます。
鉄分を多く含む食品を積極的に摂る
レバーや赤身の肉、カツオなどの魚、アサリやシジミなどの貝類、ほうれん草や小松菜などの緑黄色野菜は鉄分が豊富です。特に肉や魚に含まれるヘム鉄は吸収率が高いので効率よく鉄補給ができますkatsushika.jrc.or.jp。また、ビタミンCは鉄の吸収を高めるので、野菜や果物も一緒に摂りましょうnicho.co.jp。朝食を抜いたり偏った食事になったりしないよう、規則正しい食生活を心がけてください。
タンパク質やビタミン類もしっかり摂取: 鉄だけでなく、赤血球を作る材料となるタンパク質や、造血に必要なビタミンB12・葉酸も大切です。暑いとつい麺類やあっさりしたものだけになりがちですが、肉や魚、卵、豆類など良質なタンパク質源を適度に取り入れましょう。葉酸は緑の葉物野菜や納豆に多く、ビタミンB12はレバーや魚介、乳製品に含まれます。

無理なダイエットを避ける
極端な食事制限や単品ダイエットは鉄分不足のもとです。特に生理のある女性が急激に体重を落とすと貧血になりやすいので注意しましょう。「痩せて疲れやすくなった」では本末転倒です。適度な運動とバランスの良い食事で健康的に体調管理することが大切です。
体調管理と休養
暑い日は室内外の温度差や寝苦しさで体に負担がかかります。十分な睡眠と休養を取って自律神経の乱れを防ぎましょう。また、めまいや立ちくらみを感じたら無理をせず座って休む、湯船は控えてシャワーで済ますなど貧血症状が悪化しない工夫も必要です。
内科+婦人科で貧血をしっかりチェックしましょう
夏場に限らず、「疲れやすい」「フラつく」と感じたら早めに医療機関で相談しましょう。貧血は内科と婦人科の両面からアプローチすることが重要です。実際、婦人科疾患による貧血の多くは良性ですが、なかには子宮がんなど悪性腫瘍が隠れている可能性もあります。鉄剤だけで様子を見るのではなく、必要な検査を受けて原因を確認することが健康維持につながります。
当院「横浜駅前ながしまクリニック」でも、一般内科の診療に加えて婦人科外来(女性医師が担当)を設けており、貧血の原因精査や治療、月経にまつわるお悩み相談まで一貫して対応可能です。夏の疲れを「貧血かも?」と思ったら、お気軽にご相談ください。内科・婦人科の連携で、皆さまの体調管理と貧血予防をサポートいたします。